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ボーンライフ  作者: ユキ
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ファーストキス

「みぃ〜つけた」


 ドンッ!


 そんな聞き慣れた声が上から聞こえた瞬間、背中に衝撃があったかと思うと、いきなり視界が変わった。


 そこは先程まで立っていた場所からかなり離れた所で、すぐに誰かが俺を担いだ状態で走っているのを理解した。


「奴らに見つかった! 逃げるぞ!」


 俺を担いでいるのはジンだ。


 どうやらスキルを使用しあの場から一瞬でここまで駆け抜けたようだ。


 油断した瞬間とは言えここまでの移動をまともに視認出来なかったぞ。


 強化されたとは言ってたが、スピードも以前敵対した時より格段に早くなってないか?



「どうして逃げるのぉ〜、待ってよクリスぅ」


 その声に釣られて後ろを見る。


 そこにはルカが物凄い速さで俺たちを追いかけて空を飛んできていた。


「クッ……流石に速いな。このままだと追いつかれる。またスキルを使うぞ! 舌噛むなよ!」

 骸骨だから舌はない。


 そんなツッコミを入れる暇もなく、急加速によるとんでもなく強い衝撃と共に再び視界が変わった。


 更に連続で数度衝撃を感じると、そこは先程の場所から遠く離れた里の入り口付近だった。



「凄いな……、こんな連続で使用出来るなんて」


「ハァハァ……いや、流石に燃費が良くなったとはいえ、これだけの連続使用は堪えるよ。しかもいくら速くなろうが俺自身の攻撃力が低いから奴らには効かないだろうしな……だが、そのお陰で上手くまく事は出来た」


 なるほど……だとしてもこれだけ連続で、しかも自由にコントロールも出来るならかなり強力なスキルだと思う。


 それにスピードが速いと言うことは……。


「なぁ……一ついいか?」



  *****



「はぁはぁ……クリスぅ、どこに行ったのぉ?」


 せっかく見つけたのに、ジンが担いでどこかに連れてっちゃうんだもん。


 私に無断でクリスを連れてくなんて……ふふふ、あとでジンにはお仕置きをしないとね。



 はぁ……私のクリス……どこに居るの?


 早く見つけてクリスを……。



 あれ? 私はクリスを見つけてどうするつもりなんだろう……?


 わからない……突然身体が熱くなってからクリスの事しか考えられなくなって……それで私は……。


 ……うん、ボーッとして頭が回らないし、まぁ、いっか。


 あぁ、そんな事より身体が燃えるように熱い……溶けちゃいそうだよぉ……。


 いっそ、ニューエルフたちみたいに私もこの邪魔な服を……。


 ……うんん、それはダメ。


 それをするのは……クリスの前だけ。


 あぁ……クリス……どこにいるのぉ?


 私のクリスぅ。



  *****



「ジン……準備は良いか?」


「あぁ……いや、ごめん……やっぱり止めない?」


「スゥーー……ルカぁぁぁああ!!! 俺はここだぁぁぁああ」


 直前で臆病風に吹かれたジンを無視して、俺は大声でルカを呼び寄せる。


 俺たちがいるのは決闘が行われたステージの真ん中だ。


「クリスぅ!!」


 すると数秒と経たずにこちら目掛けて上空からルカが飛んで来た。


 それと共に周辺からバーサーカー化したニューエルフたちが俺の声に反応して数名森から顔を出す。


「あバ! あうぁぁああ!!!」


 ニューエルフたちはジンを見つけるとニタァっと効果音でもしそうな笑顔になったかと思うと、大声を上げた。


 その声に反応するようにあっという間に残りのニューエルフたちが集まり、ステージの周りには里のバーサーカー化したニューエルフたちで溢れ出し囲まれる。


 だが、そいつらの相手はジンに任せる。


 俺の相手は……。



「クリスぅ、会いたかったよぉ」


「……あぁ、俺もだよ。ルカ」


 ルカは目がトロンとし、頬は高揚して呼吸も荒く少し汗ばみ、あきらかに正常ではないと一目でわかる姿をしていた。


 ただ、それがとても艶っぽくてエロスを醸し出し、俺には刺激が強過ぎる為、とてもじゃないが平常心を保てる気がしない。


 こんな状態で果たした俺は出来るのか……いや! ルカの為にもこれ以上こんなルカを世に晒す訳にはいかない!


 きっと素に戻ったら発狂する程恥ずかしいもん!


「クリスぅ〜、私もうダメぇ、身体が熱くて、熱くて……これ以上は我慢出来ないよぉ」


 そう言って首のマフラーに手をかけ外し出すルカ。


 マフラーを外し終わると今度は腰の帯に手をかけ、何と帯を緩め出したではないか。


 帯が地面に落ちる寸前、俺は全力の身体倍加でルカに飛びつき和服が脱げないように服ごとルカを抱きしめる。



「あぁ……クリスぅ……やっと来てくれたぁ」


 服を抑えるために抱きしめたのを自分を抱きしめる為と勘違いしたルカは、とても嬉しそうに抱きしめ返してくる。


「ずっと……ずっと待ってたの」


 ルビーのような綺麗な赤い瞳が潤み、そこに月の光が反射してとても幻想的な目で見つめてくるルカ。


 それはまるでチャームでもかけられているように、瞳から目を離せなくなる。


 そっと閉じられる瞳。


 俺は勘違いしていた。


 目を離せなくなったのはその美しい瞳のせいではなく、ルカそのものが魅力的だったからだ。


 げんに今、瞳が閉じられ俺の顔に近づくルカから目を離す事も、身動きする事さえ出来なかった。



 そして触れるシットリと柔らかな唇……。


 ルカとの初めてのキス……。


 こんな形ではなく、正気のルカともっとロマンチックな状態でしたかった。


 まさか、ルカからしてくれるとは思わなかったが、作戦通りだ。



 その瞬間


 ルカは力を失い、俺の腕の中で眠りについた。



  *****



「ジン……準備は良いか?」


「あぁ……いや、ごめん……やっぱり止めない?」


「スゥーー……ルカぁぁぁああ!!! 俺はここだぁぁぁああ」


 同意の言葉を返すつもりが、途中で怖気付き止まないかと提案するが、そんな意見など関係ないとばかりに、クリスは無情にも大声でルカレット様を呼ぶ事で、問答無用で作戦は実行される。


「クリスぅ!!」


 その声に反応してすぐにやってきたルカレット様はクリス目掛けて飛んで行く。


 それと共に周辺の森から、あの化け物たちが顔を出した。


「あバ! あうぁぁああ!!!」


 奴らは俺の顔を見ると、その顔をニヤリと歪ませ大声を上げる。


 その声に反応するようにあっという間に残りの化け物共も集まり、ステージの周りには俺を見つめるネットリとした熱い視線で満ち溢れる。


 震える足を両手で叩き必死に抑えるが、ドクドクと異常に早く脈打つ心拍や、呼吸、緊張によって渇く口の渇きはなかなか抑える事が出来ない。


 そんな俺の姿すら奴らは楽しむように観察し、一人、また一人とゆっくりとステージに上がってきた。


 そして、全ての化け物共がステージに上がり、俺たちを中心に取り囲む。


 クリスは……うん、完全にルカレット様と二人の世界に入ってて当てにならないな。


 はぁ……本当に大丈夫なんだよなクリス。ここまで来て効きませんでしたじゃ、末代まで恨むからな!


 俺は半端ヤケクソ気味に覚悟を決める。


 覚悟を決め、スキルを発動する為意識を集中すると、俺の変化を嗅ぎ分けたのか、変な唸り声と共に化け物達が俺に向かい飛びかかってきた。



「ウガァァあァぁ」


 スキル発動『縮地・極』


 その瞬間世界は停止したかのようにゆっくりとなり、俺だけがその中を自由に動けるようになる。


 これは縮地が強化され、縮地・極になった事で体感できるようになった新しい能力だ。


 それまでは予め決めていた方向にスキルを発動した瞬間には移動し終わっていたので、最初は攻撃を合わせるどころか移動距離でさえコントロールするのに苦労したものだ。



 それがスキルが強化された事で、スキル発動中は周りがゆっくり動く中、俺だけ自由に動けるようになり、その間移動する事で、スキル後相手からしたら瞬間移動に近い速度で移動したようにも見え、攻撃を加える事も容易だ。


 まぁ、スキルが強化された後も化け物共のバカみたいに高い防御力を知っていたので、攻撃する事なくひたすら逃げる事にのみ使っていたんだが……もしクリスの言う事が本当なら……。


 俺はクリスを信じ、飛び上がったオカマエルフの下を通り抜け、後ろのエルフたちの間を通り包囲網を抜けると一番近くにいるオカマエルフの目の前に移動し、拳を振りかぶり渾身のパンチを溝内に喰らわした。


 クリスの仮説が正しければ、これでいける筈だ。


 だが、スキルの影響で相手はほぼ時間が停止したようにゆっくり動いているので、パンチをした後も見た目には何の変化もない。


 ……本当に……大丈夫なんだよな?


 俺は念の為その場から移動してオカマエルフたちから距離をとり、恐る恐るスキルを解除する。


 ボフッ!!!


 その鈍い音は、俺が殴ったオカマエルフから聞こえた。


 そのまま倒れるオカマエルフ。


 周りのオカマエルフたちが突然消えたと思ったら別の場所に現れた俺と、大きな音がしたかと思ったら突然倒れた仲間のエルフを見て警戒し俺から距離をとる。


 その隙に倒れたオカマエルフの様子をつぶさに観察するが、起き上がるどころか身動きする気配もなかった。


 それはクリスの予想通りの結果だ。


 昨日は武器も使いあれだけ攻撃しても全く効いたそぶりを見せなかったオカマエルフが、さっきは思いっきり殴ったとは言え、ただの拳の一撃でこうもアッサリ倒れるなんて……これならいける!


 そう確信した俺はその場から消える。


 そして再び俺が現れたと同時に十数人ものオカマエルフが倒れた。


「アボがガッ!?」


 オカマエルフに走る同様。


 その間にも消えては現れを繰り返し、その度に立っているオカマエルフたちが減っていく。


 それに焦ったオカマエルフたちが俺に攻撃を加えるべく一斉に突撃してくるが、そんなノロい突撃をしたところで無駄だ。


 それから数分もかからずにその場に立つオカマエルフたちは誰一人いなくなった。

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