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ボーンライフ  作者: ユキ
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天国と地獄

 これは……天国なのか……それとも地獄なのか……。


 あの後初めて一緒のベットで寝ることになった俺たちだが、俺と寝る事で安心したのか、ベットに入って早々に眠りについたルカによって、俺は今、体全体で絡みつくように抱き付かれ、身動きがとれなくなっている。


 しかも、そうする事によって柔らかな体と押し付けられる事でより強調される更に柔らかな胸や太もも……。


 それと共に伝わる暖かな温もりと、先程までお風呂に入っていた為、濡れた髪からほのかに香る石鹸の良い匂いが鼻腔を刺激する……。


 極め付けは、天使のような寝顔で安らかに眠るルカの口から時々漏れる吐息が、俺の頬の骨を撫でるように当たるのだ。


 それら全てが俺の五感を刺激し、先程の決意を崩壊させようと襲って来くる。


 そんな攻撃から必死で理性を保とうと努めるこの時間はまさに、天国と地獄を同時に味わうようなものだった。



 暴走しそうな理性を抑える為、必死に他の事を考えようと努める俺。


 羊が一匹、羊が二匹……。


 どうして寝れない体なのに羊の数を数えているのかと聞かれたら、テンパっているとしか答えられないです。


 スゥースゥー、フゥー。


 ビクっ!?


 必死で羊の数を数えて気を紛らわせようとしていると、ルカの口から時々漏れる吐息が頬の骨に当たり、思わず体が反応してしまう。


「ん、ん〜ん」ギュッ。


 俺の微かな動きに反応したルカは、更に強く抱きつく事で密着度が上がり、その柔らかで大きく自己主張する胸が形を変え、首元が大きく開いたネグリジェから、胸の谷間を覗かせる。



 ひ、羊が……って、出来るか!!


 クソッ! このままでは理性が崩壊する! 他にもっと何か別の事を考えなくては……!?


 何かないか……何か……!


 そう言えば……さっきテンションがおかしくなっていた時、普段動かない場所の骨を動かしてなかったか?


 そう思い出した俺は、目線が胸の谷間へと向かいそうになるのを必死に我慢して、先程の事を思い出そうと心見る。


 しかし、視界の端で呼吸と共に上下する絹のように滑らかでたわわな胸が気になって集中出来ない。


 クソッ、骸骨だから目を瞑る事も出来ないし、どうすれば……そうだ!!


 そこである方法を思い立つ。

 それは、目線を枕側に向けると言うシンプルな事だ。


 俺の目は魔力で再現した物で実際に存在しない。


 だから、くーちゃんのぬいぐるみに入っていた時は無意識に行っていたが、意識すれば頭の後ろに視線を送る事だって出来る。


 よし! これなら行ける!


 その考えは正しく、俺の視線の先は現在枕しか見えておらず、何も見えない状態だ。


 何とか視界だけでも誘惑を取り除く事が出来た俺は、少し余裕が出来た頭で先程の出来事を思い出す。




『唸れ俺の上腕骨!! 奏でろ俺の肋骨達! キシキシキシ』


 何とか先程の事を思い描く事に成功した俺だが……今更ながらあの時の事を考えると恥ずかしさで赤面しそうになるな……。

 骸骨だから赤くならないけど。


 だけど、確かに動いていた!



 肋骨は、本来呼吸をする事で肺が膨らみ動きはする。


 しかし、骸骨の俺には呼吸は必要ないので、普段肋骨を動かす事はない。


 しかし、あの時はまるでそれが当たり前だとでも言うように、肋骨の一つ一つがそれぞれ別々に動かす事が出来た。



 よし! 試しにもう一度動かしてみるか。


 理由はわからないが、動かせるなら試してみるのが早い。


 ……そう思ったが、今現在俺の左側に寝ているルカが、脇から首にかけて抱き付いている状態なので、左側は動かす事が出来ない。

 なので右側肋骨にのみ意識を集中して動かさなくてはいけない。


 全てを動かすなら出来そうだが、いきなり片側だけを動かすとか難易度高いな……だがしかし! ルカの安眠の為! 俺はやってみせる!!


 変な決意を固めると、右側の肋骨に意識を向け、少し外側に動かすように意識してみる。


 それから秒後。


 ……ギギギ。


 で、出来た!!


 やったぞ! 肋骨を動かす事に成功した!


 無意識とは言え一度は動かせていたものなので、意外と簡単に動かす事が出来、つい喜んで集中が途切れる。


 ギギギ「んーん……」


 しかし、そのせいで慣れてないのもあり制御が甘くなり、左の肋骨も動いてしまい、左側に抱きついていたルカが身じろぎをする。


 「…………スゥスゥスゥ」


 ただ、身じろぎはしたが再び眠り出してくれた。


 危ない危ない。


 しかし……動かす事が出来た。

 このまま練習は必要だが、もしかしたらこれは、明日の決闘の武器になるかもしれない!


 よし! ならば練習あるのみだ!


 一筋の希望を見出した俺は、寝れないこの体の特性もあり、朝までルカを起こさないよう細心の注意を払いながらひたすら動かす練習を続けた。


 お陰で、誘惑に負けずに一晩過ごす事が出来ました。



 *****



「ふぁぁ……おはようクリス」


 チュッ


 翌日の朝、片側だけだが一通り自由に肋骨を動かせるようになった頃、隣で眠るルカが身じろぎをしたかと思うと、可愛らしい欠伸と共に目を開け、おもむろに俺の顎にキスをした。


 そんな朝の挨拶にまだ慣れない俺がいつものように固まっている間、ルカはまどろみながらも俺に抱き付き、猫が自らの匂いを擦り付けるように、俺に頬を擦り付け嬉しそうにしている。


「お、おはよう……ルカ」


「フフ、おはよう」


 なすがまま擦り付けられる事数秒後、ようやく思考が戻った俺がどもりながらも挨拶をすると、笑いながらも再び答えてくれた。


 しかし、そのまま起きるかと思われたが、その後も再び俺に頬を擦り続けるルカ。


 これは……どうすれば良いんだ……。


 幸せそうにしているその笑顔を見ていると止まさせる事も出来ずに、ルカが満足するまでしばらくジッとされるがままになる。


「ふぅー、クリスパワー……補給完了」


 クリスパワーって何ぞや?

 そんな疑問が浮かんだが、ルカが満足そうにしているのでツッコまないでおく。


 なんだかんだ俺自身も、ルカから幸せそうに頬を擦り付けられ続けた事で、心が満たされている感じがある。


 なるほど、これがクリスパワー……いや、ルカパワーか。


 そのパワーは凄く、身体中から力が湧いて来て今日一日頑張れそうだ。


 作戦も出来たし、これなら今日はアルスさんに勝てるかもしれない……いや、勝つ!


 ルカパワーによりやる気にも満ちた俺は、自然と思考もプラス思考になり、いつになく強気な考えになったのだった。



 そして支度をし出したルカを見ないようにしつつ、夜の間ルカに抱き付かれて練習する事が出来なかった左側の肋骨も動かす。


 幸いな事に、夜の間に片方を完璧に動かせるようになっていた事もあり、それ程苦労する事なく動かせるようになり、ルカが着替えを終え支度が整った時には右側と同じく自由に動かせるまでになった。


 これで俺の準備も整った。

 あとは作戦通り行動するだけだ。


 ある程度勝利への算段も立った俺は気持ちに余裕も生まれ、支度の整ったルカと手を繋ぎリビングへと向かう。


 しかし、この時の俺は、これまでの順風満帆具合により、油断し過ぎていた。


 その為、大きな過ちを犯す。


 何も考えず扉を開けリビングへ入る俺。


 この時の俺を唯一褒める事があるとすれば、ルカよりも先にリビングに入った事だ。


 本来ならそこで、扉を開ける前に気づくべきだった。


 直前で香る香ばしいお肉の焼ける匂いと言う、重大なヒントがあったのだから……。



 そして開け放たれた扉の目の前。


 そこにはダイニングテーブルに出来上がった料理が並び、その前でピンクのヒラヒラエプロンを脱いでいる途中のアルスさんの姿があった……。


 もちろん、昨日と同じピンクのヒラヒラエプロンを裸の状態で着ていた為……万歳をする形で持ち上げられたエプロンのその下は……何も隠す物がない真っ裸だった。


 そしてそこには、その体と同じく、常人の数倍はある立派なモノがぶら下がっている。



「あら、おはよう。ちょうど呼びに行こうと思ってたから良かったわ」


 そう言いながら脱いだエプロンを椅子にかけ、こちらへと歩み寄ってくるアルスさん。


 その肉体は限界まで鍛え上げ、無駄な物が極限まで削ぎ落とされた、同じ男として人によっては憧れさえ持たれるような究極肉体美と呼べる代物だっだ……が。


 その形容し難い容姿や、こちらへ歩み寄ってくる時の独特なクネクネとした動きから、俺の本能が危険だと告げてくる。



 そしてアルスさんが歩くたびに揺れ動く、あるモノ……俺にはないモノ……。


 何もない……生身がない……骨しかないから付いてない。


 再び脳裏によぎるトラウマのようなあの想い。


「クリス、どうしたの?」


 アルスさんの動きと、トラウマによるダブルの精神的ダメージを食らって扉で放心状態の俺。


 すると、立ち止まった俺がいる為こちら側の状況がわからない後ろのルカが、疑問の声をかけてきた。



 ハッ!? そうだ! いつまでも放心状態でいる訳にはいかない! 教育的にもルカにこんなモノを見せちゃダメだ!


 ルカへの想いで何とか意識を呼び戻すと、すぐにアルスさんへ進言する。


「アルスさん! とりあえず服を来て下さい」


「あら、魔王様には私の裸は刺激が強かったかしら。ごめんなさいね」


 そう言ってソファにかけてある洋服を手に取り着出すアルスさん。


 いろいろ言いたい事はあるが……とりあえずルカにあんなモノを見せずに済んで良かった。


 しかし……せっかくルカのおかげで体の底から湧いてくるような力が一瞬で吹き飛んだな……まさか!? アルスさんはこれを狙って!?


 ……違うとは思うが……もしそうなら恐ろしい男だ。


 わざわざ前日にルカにあんな洋服を渡して気分を上げさせておいて、決闘当日になったら逆にこんなトラップでどん底まで落とすんだからな……。



「そうそう、魔王様」


 ようやく服を着たアルスさんは何かを思い出したようで、こちらへと歩み寄ってくる。


「昨日はお楽しみ頂けたかしら?」


 近くまで来ると、そう小声で話しかけニヤリとするアルスさん。


「……あぁ。……配慮感謝する」


 先程の事があるが、あくまでもそれは俺の予想であり、昨日は確かにとても良い姿が見れたのも事実なので、感謝だけは伝えておいた。


「ふふふ、なら良かったわ。……だって、決闘になったら私……興奮しちゃって手加減出来ないから……きっと恋人さんとも今生の別になっちゃうもの」


 なにこの人、わかってはいたけどメッチャ怖いんですけど。


「それに最高のコンディションでやり合った方が、きっと、もっと興奮出来るもの。あぁ……楽しみだわぁ」


 いや、今アナタのせいでバットコンディションだけどね!


 んで光悦の表情でバトルジャンキーみたいな発言するのはやめて下さい! さっきから悪寒が走りまくりです!


 俺は本当に生きて帰れるのだろうか……。



「おはよーぅ」


 とりあえず、先程のは狙っていた訳ではない事がわかったところで、グラスたちも起き出して来たので、話は終わり、アルスさんの作ってくれた朝食を食べる事になった。


 ちなみ朝からハンバーグと言う、かなりのヘビーな朝食を準備してくれていて、流石にルカは無理という事で、グラスたちに準備された果物やパンを食べていた。


 俺は胃もなく魔力に変換されるだけなので頂いたが、やはりあの見た目にかかわらず、作る料理はお店レベルの美味しさで、ルカの分も含めて全て美味しく頂きました。

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