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ボーンライフ  作者: ユキ
51/196

ニューエルフ

 前回までのあらすじ


 人族の欲望によって、とんでもない化け物がこの世に産み出されてしまった。


 その名は……


  *****


「それがね……出来ちゃったのよ……子供が。しかも、その後この森に私たちを攫いに来た人族たちがいたから、逆に攫ってしてみたら……その人族にも……出来たの。まだ他の魔族とはした事ないからわからないけど、この分なら、きっと他の魔族とも、出来ると思うのよねぇ」


 ヤバいヤバいヤバいヤバい!


 それが事実なら……どんな魔族や魔王ですら畏怖する、とんでもない化け物がこの地上に生まれてしまった事になる。


 一瞬自分は骸骨だからよかったと安心したが、すぐに思い直した。


 それすらもこの化け物の前では無意味かもしれないのだから……。



「そんなこんなで絶滅の危機を脱した私たちは、新たな喜びにも目覚め、身も心も新たな存在へと生まれ変わったの。言うなれば……私たちはエルフを超えた存在、そう! ()()()()()()になったのよ」


 ニューエルフ……その恐怖を助長させる見た目もさる事ながら、軽く繰り出した拳圧だけで地面を数メートル抉る力を持ち、木の上を高速で縦横無尽に飛び回るスピードも有している。見つけた獲物がどんな種族だろうと、襲い、孕ませる……。


 今までの特徴をまとめてみたが、何だこの化け物!? 森の妖精要素はどこ行った!!


 何とかして、この化け物たちが世に解き放たれないようにしなくてわ! もし、この世に解き放たれたこの化け物たちが、暴走でもしたら……全て種を飲み込み、この世はいずれ、ニューエルフだけの世界になってしまう……。


 容易に想像出来るとんでもない未来の姿に、絶望し、それと共に阻止しないといけないと言う使命感にも似た感情が湧き上がってきた。


 しかし、この化け物をどうやって……。



「あはは、どう、僕の甥っ子? 面白いでしょ? 絶対四天王に入ったら楽しくなると思うんだよね」


 その時グラスの陽気な言葉が俺の頭に突き刺さる。


 そうか、それならば!


「あら? 話って四天王への勧誘の話だったの?」


「あぁ、そうだ……改めてアルス……さん、今回俺たちがあなたに会いに来たのは、グラスより推薦があったあなたに新たな四天王として私に仕えてくれないかお願いする為だ」


 四天王として俺の下についてくれれば、暴走して他種族を襲い、そのまま種族ごと乗っとるような事がないよう、制御出来るかもしれない。


 当初の目的通りだが、その裏には新たにそんな淡い希望も生まれたのだった。



「成程ねぇ……それは大変魅力的なお誘いだわ。それにグラス叔父さんの手前、是非に……と言いたいところだけど、流石に名前も初めて聞くような実力もわからない方の下にいきなりつく程、私たちニューエルフは安く無いわよ」


 くっ……やはりダメか……俺ではこの世界を救う事は出来ないと言うのか……。



 その時、思いもよらないところから俺を援護する言葉が放たれた。


「オイ、アル坊! 四の五の言わずにとっとと魔王様の下につきやがれ! めんどくせぇ」


 そうロザンヌである。


「あら、珍しい。随分新しい魔王様の事買っているのね?」


「そりゃ、アタシの仕えるルカレット様の旦那様だからな。で……どうなんだよ」



「う〜、やっぱり……無理ね。さすがにこれはそう簡単にオーケーなんて出せないわよぉ。これでも私はこの里の長たがらね。みんなが納得してくれないような話を勝手に承諾出来ないもの。無理なものは無理よ」


 しかし、それでも頭を縦には振ってくれないアルス。


「アタシたちのお願いでもか?」


 ん? 何かまた嫌な予感がするな……。


「……そうねぇ……流石に里を救ってくれた二人のお願いを無下には出来ないわねぇ……なら、こんなのはどうかしら! 私と戦って勝ったら魔王様の下につくの。里で一番強い私と戦って勝つ程の実力者なら、里のみんなも納得してくれる筈よ!」


 えっ……拳圧だけで数メートル地面を抉るような奴と戦えと?


「確かにそれなら分かりやすいし、話も早くて良いじゃねぇか! よし、やろうぜ!」


 アルスの提案にとても乗り気なロザンヌ。


 しかも俺の意思など関係なく勝手に承諾してるし……どうやら俺はここで消滅するかもしれないです。



「それなら簡単だね! だってクリスは、私の……お、夫……だもの。凄く強いし、どんな人にだって負けないよ!」


 後半は恥ずかしがっているが自信満々に答えるルカ。


 その仕草に萌える……じゃなく、闘志が燃える上がるのを感じる!


 こうなったらやけだ! もはや俺に負けは認められない! この世界を守る為、ルカの期待に答える為にも、俺は必ず……。


「任せろルカ! 必ずアルスを倒してみせる!」


 ルカの言葉で一気にやる気が湧き上がった俺は、拳を振りかぶり堂々とそう宣言した。


「うん! 応援してるろ! 頑張ってね!」


 とても良い笑顔でエールを送るルカ。


「あらあら、お熱いのねぇ……でも、独り身の私の前でそんなに見せつけちゃって、私への挑発のつもりかしら。それならお姉さんはもちろん、その挑発……買っちゃうわよぉ」


 しかし、ルカの言葉でやる気を出したのは俺だけではなかったようで、背後に炎が揺らめく幻覚が見えてくる程アルスの闘志が湧き上がっているのがわかる。


 だが、俺はやるしか無い! ここで死ぬ事になろうともルカの為に!

 骸骨だからもう死んでるけど!


 こうして骸骨対化け物による人外の決闘が決まったのだった。


「皆やる気いっぱいだねぇ……でも、お腹も空いたしもう遅いから、明日にしない?」


 俺が覚悟を決め、みんながやる気に満ちている中、横からそんな軽い感じでグラスが提案した事で、みんな自分の空腹に気付き、一気に熱が冷めていく。


 そんなグダグダになった空気を察して、アルスもグラスの意見に賛同した事で、結局決闘は明日に延期になり、今日はアルスが家に招待してくれるという事で、そのまま皆んなでアルスの家に向かう事になった。


 ただ、一人空腹を感じない俺は、せっかく決めた覚悟が宙ぶらりん状態になり、拳を振り上げた状態のまましばらくその場でたたずむのだった。



  *****



 あの後、お客様に私の手料理をご馳走するわ、と言って張り切って何故か服を脱ぎ出すアルス。


 咄嗟にルカの目を覆いながら、自分も目に毒だと思い視線を外していると、よし! 準備オーケー、と言うアルスの声がしたので思わずチラッとそちらを見てしまった。


 そして激しく後悔する事になる。


 そこには何故か裸にヒラヒラのついたピンクのエプロンを付けた、いわゆる裸エプロン姿のアルスがキッチンへ向かうところだったのだ。


 ルカと同じヒラヒラエプロンでも、着る人によって凶器になるとは……。


 ゴリゴリに鍛え抜かれた裸のオカマエルフが、るんるんとスキップし、プリプリとお尻を揺らしながら去って行く後ろ姿を見てしまった俺は、吐きそうになるのを必死に抑える。

 骸骨だから吐かないけど……。


 とっさに目の保養の為、隣で大人しく俺に目を覆われたままのルカを見て、何とか心を落ち着かれる。


「クリス……大丈夫?」


 理由もわからないのに、俺を信じてされるがまま視界を遮られたルカだったが、俺の瀕死の精神的ダメージに気付いたのかそう心配をしてくれた。


 マジで天使である。


「大丈夫だよ。ルカのお陰で癒されたから」


「そう? 無理しないでね。クリスが私を守ってくれたように、何かあれば私がクリスを守るからね!」


 間違えた……うちの嫁は女神でした。



 そんな感じでここまでに擦り減った俺の精神が癒されている間に、出来上がった料理を持ったアルスが、裸エプロンのままこちらへ戻ってきた。


 なるべくその姿を見ないようにしつつ、出てきた料理を見るが、てっきりとんでもない物が出てくると覚悟していた料理は、香ばしい匂い香るいたって普通の唐揚げだった。


 裸エプロンで揚げ物とか正気かとも思ったが、この化け物なら飛んできた高温の油など蚊ほども熱くないのだろう。


「この森で取れたコカトリスを唐揚げにしてみたの。沢山揚げたからいっぱい食べてね」


「その前に服を着ろ! さっきから目に毒なんだよ」


「あらあら、気が回らないでごめんなさいね。普通の人からしたら私の美しいボディは刺激が強すぎて、逆に目に毒だものねぇ」


 ロザンヌの毒舌をメッチャポジティブに捉えていたが、流石のロザンヌもウンザリしたようでそれ以上反論しなかった。


 そしてようやくアルスが服を着てくれたので、ルカも俺の手から解放され、しばらくぶりの眩しさで目をすぼめる姿でまた癒される。



「さっ、服も着たわよ。遠慮せず召し上がれ」


 そこでふと気付いたが、エルフ達がゴリゴリマッチョになったのはエルフの住む森の魔物お肉の能力なのではないか?


 俺は骸骨だから関係ないが……もし、これを食べてルカがエルフのようになったら……。


 思わずその姿を想像してしまい、必死に頭を振って想像を消す。


「つかぬ事を伺うが……この魔物の肉を食べて、アルスさん達のようになるとかは……」


「残念ながら、魔物のお肉を食べただけでこの美しい体になれるのはエルフだけよ」


「そ、そうか! それは残念だ!」


 その言葉で安心した俺が唐揚げを食べ始めると、ルカも心配してたようで、安心して食べ出した。


 そしてアルスの作った唐揚げは、ルカほどではないが、お店で出しても十分通じるレベルの美味しさで、結局大皿で出された唐揚げを俺とルカでしっかりたいらげてしまったのだった。



 ちなみグラスとロザンヌは肉は食べないようで、別で出された果物や木の実を食べている。


 楽しそうにアルスと喋るグラスと、アルスの話をめんどくさそうに流しているロザンヌを見て、一瞬グラスたちもお肉を食べたらこうなるのかと想像してしまい、この化け物に更に真態が加わるとかどんな地獄だよと背筋が凍るのと、グラスたちがお肉を食べないエルフで良かったと、安堵感を味わう、いろいろ精神的に疲れる食事の時間だった。

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