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ボーンライフ  作者: ユキ
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化け物の生まれた理由

 突然現れグラスに紹介されたアルスと言うゴリマッチョなオカマエルフに連れられ、あたりが暗くなる頃ようやくエルフの里へ辿り着いた。


 ここまで先導するアルスが、グラスとロザンヌと会話しながらジンの代わりに道を切り開いているのだが……その方法が、数メートルおきに右手から放たれる拳圧で前方の枝どころか地面すら抉り取ると言う、およそ人とは思えないような方法によってだった。


 お陰でとても歩きやすくはなったが、その現実に驚愕し、里に着くまで前で話す三人以外、誰も言葉を発するものはいなかった。



 そして辿り着いたエルフの里。


 そこでもまた驚愕でみんなの表情が固まる。


 そこは想像していたような、森と共に生き、自然と共存する、アニメに出てくるようなファンタジー世界のエルフの里などではなかったのだ。


 まず里の入り口、そこには大きな門があるのだが、夜の暗い森の中、門にはネオンが赤く光り輝いており、上部には【エルフの里】と大きく書かれた文字が煌めき目立っているのだ。


 あれ? 人族に狙われないように隠れ住んでいるんじゃないの?


 そんな疑問が浮かんだが、門をくぐったその先の光景に更に驚愕する。


 門をくぐり里に入るといきなりネオン煌く歓楽街のような風景が広がっていた。


 そしてその歓楽街のその先には、巨大なピンクの木の上にこれまたピンクの家、そして地面に至るまで全てがピンクで統一されたある意味ファンタジーな街並みが広がっている。



 全体的に目がチカチカする……これがエルフの里か……。


 そこに住むエルフたちもやはり普通ではなく、目の前にはネオン街を歩くエルフの里の住人たちが歩いているのだが、そのエルフたちの姿にもまた驚愕する。


 てっきりアルスだけが特別だと思っていた……いや、思いたかったその容姿だが……行き交うエルフ全てが、アルスと同じく、筋肉隆々な体にこれでもかと厚化粧で化粧をした化け物……改め、オカマエルフたちだったのだ。



 その光景に一同言葉を失い立ち尽くしていると、前を歩いていたアルスが突然こちらを振り返り両手を広げた。


「ようこそ! この世の楽園……エルフの里に! みなさん、歓迎するわよぉ」


 その声は太く遠くまで届き、その声に気付いた化け物……いや、エルフたちが俺たちの存在に気付き立ち止まる。


 そしてグラスとロザンヌの姿を見つけるとキャーキャー言いながらワラワラと集まってきた。


 その圧力にすぐに逃げ出したくなる気持ちを何とか押し留め、動向を伺う。



「あら〜、グラスちゃんにロザンヌちゃんじゃないの〜! 久しぶりぃ!」


「あぁ、みんな久しぶりだね。相変わらず元気なようで安心したよ」


「当たり前じゃなぁぃ、みんな元気過ぎてここ数十年、里で風邪を引いたなんて聞いた事も無いわよ! それよりどうしたのよグラスちゃん、その腕ぇ」


「あぁ、ちょっと勇者とやり合ってね。このザマさ」


「もう! ちゃんと鍛えないからよ! 二人とも細すぎだものぉ。私たちみたいにちゃんとお肉食べて鍛えなくちゃダメよぉ」


「「「ねぇ〜」」」


「うるせぇよ、オカマ共。 あって行ったら」


 グラスとロザンヌを囲み矢継ぎ早に話しかけるオカマエルフたちに、ロザンヌがウンザリした表情で喋る。


 これが……この世の楽園……。


 地獄……の間違いじゃないだろうか。



「あら? こちらのお兄さん……なかなか渋くていい男じゃなぁい?」


 俺がそんな事を思っていると、一人のオカマエルフがジンを見つけるとそんな事を言い出した。


「あらホント! しかも意外と体も鍛えてるようだし、いい感じに哀愁も漂わせてて、そそられるわぁ」


 するとその声に気付いた他のオカマたちもジンへと近づき取り囲むとおもむろにジンの体を触り出した。


「ちょっ、やめろ! 触るな」


「あら、照れちゃって可愛い。ますます私のタイプだわぁ」


「ちょっと、私が最初に目をつけたのよ!」


「何言ってるのよ、最初にお触りしたのは、わ・た・し・よ」


 ジンを巡ってオカマエルフたちが言い合いを始めてしまった。


 どうやらジンは、このオカマエルフたちの好みにドストライクなようだ。


「あはは、良かったな! ジン! アタシの見立て通りだよ。お前たち、コイツはお前たちへの土産だよ! 好きに遊んで良いから、仲良く向こうでやってな!」


「なっ!? どう言う事すかロザンヌさん!? わぁ!? やめろ! 触るな! ちょっ!? 離せ!! う、うわあああぁぁぁ……」


 思いもよらないロザンヌさんの発言に驚くジン。


 そしてロザンヌさんの発言に喜びジンへと殺到するオカマエルフ達。


 そのあまりの剣幕に俺たちは誰もその場を動くことが出来ず、担がれ連れ去られて行くジンを見送る事しか出来なかった。


「さて、めんどくせぇ奴らも居なくなったし、とっととアルスの家で話を進めようぜ」


 ロザンヌさん……この為に、ジンを指名したのか……なんて恐ろしい人だ。


「正直私もあっちに混ざりたいけど、それは後にしましょう……私の家は木の上にあるあの奥のお家よ。ついてらっしゃい」


 こうして生贄として消えたジンを残し、俺たちはアルスの家へと向かうのだった。


 ジン……お前は良いヤツだったよ……。



 その夜、エルフの里には一人の男性の悲痛な叫び声が夜通しこだましたと言う。



  *****



「粗茶ですがどうぞ」


 アルスの案内で辿り着いたピンクの街のピンクの家。


 その中は以外な事に、可愛らしい小物などはあるが、至って普通の室内だった。


「それで、私に話って何かしら?」


「実はさ、こちらの骸骨将軍であるクリス十六世様が、先日新たな魔王様に就任したんだ」


「あらそうなのぉ、それはご就任おめでとうございます。……でも、私に新たな魔王様を紹介する為だけにわざわざこんな魔族領の外れまで来たわけじゃないわよね?」


 グラスとアルスが何やら話をしているが、アルスに出会ってから衝撃の連続で、今だに頭が上手く機能しない。


「さすがアルス! その通りさ! アルスにはある重要なお願いに来たんだけど……師匠、ここからは師匠から説明よろしくね」


「…………。」


「……師匠? どうしたの?」


「……ッ!? ああ、すまない。それで何だったかな?」


「もう、しっかりしてよ。アルスにあの件をお願いするんでしょ?」


「あ、あぁ、そうだったな……その前に一つ聞いても良いかな?」


 ここに来てからどうしても気になって他の事を考えられないので質問する事にした。


「あら? 何かしら? もしかして……私のスリーサイズ? それとも彼氏がいるかかしらぁ?」


「えーと……そちらも気になるが、俺が気になるのは違う事だ」


「あらそう? ちなみスリーサイズは乙女の秘密で、彼氏は絶賛募集中よ」


「あはは……」


 あまりにもどうでも良すぎて、乾いた笑みしか出ません。


「それで質問なんだが……グラスたちの話を聞くに、失礼ながらエルフはもっとか弱いイメージがあったのだが……この里の住民を見るに、皆逞しく、とても人族にやられるような風には見えない。……これは一体どう言う事なのか」


「その事ね。……確かに百年以上前のエルフは、皆んなグラス叔父さんたちみたいにか細く、攻撃魔法は里の掟で禁止されてたから、グラス叔父さんたちのような力もない、か弱い種族だったは」


「攻撃魔法が禁止?」


「エルフにはいろいろと掟で禁止されている事があるんだよ。攻撃魔法の使用や、森から出ること、お肉を食べる事とか多岐に渡ってね。……そしてそれを破った者は厳しく罰せられる。例えば僕たちみたいに里から追放とかね」


「まぁ、それが原因で、グラス叔父さんたちみたいに強さを探求するエルフが里からみんな出て行ってしまって、残ったか弱い私たちは人族の冒険者の攻撃すらまともに抵抗する事も出来ずに、里の女性たちを攫われてしまったのよねぇ」


 成程、エルフと言ったらグラスたち魔術師のイメージが強かったが、むしろそう言った者達はエルフからしたら異端だったのか。


「その時はたまたま噂を聞きつけたグラス叔父さんたちに助けてもらえたけど、結局里を出た女性たちは戻ってこなくてねぇ……しかも人族共ときたら、私たちがグラス叔父さんたちの侵入防止魔法でなかなか捕まらなくなったからって、森に火を付けやがったのよ! そのせいで森の掟で果物や木の実しか食べられない私たちは食べる物が足りなくなっちゃって……」


「それは……大変だったな」


 生き物は皆食べないと死んでしまうからな。

 俺は骸骨だから大丈夫だけど。


「そりゃもう大変よぉ〜、絶滅のピンチってヤツね……だから掟なんて言ってる余裕も無くなった私たちはある物を食べたのよ……」


「……ある……物?」


「あはは、そんな真剣な表情させちゃってごめんなさいね。本当はそんな大した物じゃないのよぉ! ただの魔物のお肉を食べただけ」


 えっ? 魔物のお肉って食べられるの? それはそれで十分驚きなんだが。


 俺が驚いているのに気付いたのか、隣のルカが説明してくれた。


「クリス。以前私が作って鰻重の魔鰻も魔物だよ。意外と魔物も食べられる種類は多いし、美味しいのも沢山あるの。人族領ならともかく、殆どが荒れた大地で、たまにある森も強力な魔物の住むこの魔族領だと、むしろ魔物以外のお肉の方が稀だよ」


 ルカに言われて思い出した。

 確かにあの魔鰻は絶品だったし、魔力まで回復する優れ物だったな。


 それにこんな場所で家畜の牛や豚など飼育してたら、すぐに魔物に食べられてしまうか。


 って事は、今まで普通のお肉だと思って食べていた食材も、殆どが魔物のお肉だったのか……。


 そう考えるとちょっとアレだが……。


「どのお肉も美味しかったな」


「そうなのよ! 美味しいの!!」


 思わず漏れてた俺の言葉に反応したアルスの大声にビックリする一同。


「初めて食べた時は驚いたわぁ〜、この世にこんなにも美味しい物があるなんてぇ、ってね。しかも魔物のお肉を食べるにつれてそれまで細くか弱かった私たちの体がどんどん逞しくなっていって……今じゃご覧の通りよ!」


 今理解した。

 エルフがお肉を食べるのを掟で禁止していたのは、こんな姿になるからだ。


 しかし、魔物のお肉を食べたからってこんなにも変わる物なのか?


 俺はグラスとアルスを交互に見て首を傾げる。


「あらなあに? 私の姿に思わず見惚れちゃった?」


 ……まさに生命の神秘ってヤツだな。


 

「それで今の姿になったのですね」


「ちょっと違うわね」


 ん? ……まだ何かあるのか?


「その後もう一つ私たちエルフの里で問題になった事があるの」


 何だが嫌な予感がする。

 この先は触れてはいけない……そんな予感が。


「あっ、それは大丈「それは種の存続の危機よ」ッ!?」


 断ろうとしたら、俺の言葉に被せるように話され俺の声が消されてしまった。


「種の存続ですか」


 しかも、更に悪い事に、その手の話題に疎いルカが、その先を察する事が出来ずに質問してしまう。


「そう! 人族によって女性エルフ達が攫われたうえ、戻って来なかったじゃない? お陰でエルフの里に女性が居なくなってしまって、新たな子を作る事が出来なくなってしまったの」


「……そっか。確かに愛し合っている夫婦が願う事で、神様が赤ちゃんを授けてくれるんだもんね……」


 おっと、ルカさん? まさかそこまで無知だったのですか?


 俺は横のグラスに視線をやるが、グラスは素知らぬ顔をしながら急に音のならない何とも間の抜けた口笛を吹き出した。


 誤魔化し方が昭和である。


「あらあら、魔王様もこれから大変ね」


「あはは……」


 いろいろ察してくれたアルスが俺に同情の言葉をかける。


 それに渇いた笑い声で返す俺の横で、ルカはよくわからない顔をしていた。


「まぁ、そんな感じでエルフの存続の危機に瀕した私たちだけど……ある事に気付いちゃったのよ」


 ヤバいと感じ、咄嗟に隣のルカの耳を抑える俺。


「……別に ピー は女性だけにあるものじゃないってね」


 とてもいい笑顔で爆弾発言をぶっ込んで来たアルスに、改めて恐怖を感じたと共に、自然と後ろの部分に力が入った。


 咄嗟とは言えルカに聞こえないようにした自分の行動を褒め称えたい。


「……し、しかし……その方法では子供は出来ない筈……だが」


 何とかこの話を終わらせたく、ルカの耳を抑えたまま俺は事実を伝える。


「それがね……出来ちゃったのよ……子供が」


 それは耳を疑う言葉だった。


 更にアルスは全種族を恐怖のどん底に陥れる発言をする。


「しかも、その後この森に私たちを攫いに来た人族たちがいたから、逆に攫ってしてみたら……その人族にも……出来たの。まだ他の魔族とはした事ないからわからないけど、この分なら、きっと他の魔族とも、出来ると思うのよねぇ」


 俺はこの時、本当に心の底から骸骨で良かったと安堵したのだった。

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