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ボーンライフ  作者: ユキ
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凶暴な魔物

 あの衝撃の事実を告げられたあと、改めてルカの部下である魔術師たちが集められると、俺たちの目の前で変身を解いてくれたが……ロザンヌの言う通り、今までヨボヨボのお爺ちゃん達だと思っていた魔術師たちが、光が収まった時にはイケメンの青年達に変わっていた。


 唖然とする俺達。


 ニヤニヤ顔のイケメン達。


 パッと見、アイドルグループかと思う程整った顔の集団なのに、そのニヤニヤで台無しだ。


 しかも、正体がバレちゃったから、これからボケたフリして女の子に触らないなぁとか言っている奴までいた。


 見た目は変わっても、変態集団には変わり無いようだ。



 そんな衝撃の事実から数日後……。



 俺たちが拠点としている魔族領東の森、後に獄森【ゴクシン】と呼ばれる場所から北東に向かい人族領との領境。


 そこには獄森よりも小規模ながら、広大な森が広がっていた。


 そして、その森こそが今回の目的地であるエルフの里がある森だった。


 その森の中を、新たな四天王候補に会う為、エルフの里を目指して俺たちは進んでいる。



「ハァハァ……エルフの里までまだかかるんすか?」


 そう愚痴るのは先頭で生い茂った草木を剣で切り落とし、後ろの俺たちが通りやすいようにしているジンだ。


 エルフの里へ行くにあたりロザンヌに名指しで指名された、この場で唯一の人族である。


 ロザンヌに指名された時、かなり嫌がっていたが……ジンなら、美人で有名なエルフ女性たちにお酌してもらえるかもと喜んで参加すると思っていたので意外だった。


 ロザンヌのひと睨みで大人しくなったけど……何か理由があるのか?



「う〜ん、この調子ならあと二時間程かなぁ、日が落ちる暗いにはつけると思うよ」


 そう話すのはエルフの里の位置を把握していて、道案内をしてくれているグラスだ。


 今までは様付けだったが、俺が魔王になったので、グラスも含めて部下になるので、全員呼び捨てで呼ぶ事になった。



 そしてジンが道を切り開いているとは言え、飛び出た根っこや石で歩きづらい道でも俺の隣で繋いだ手を決して離さないルカ。


 今日のルカは今までよりも露出の低い格好をしている。


 目覚めた後の飲み会で、もうみんなルカが可愛い物好きだって知っているから着たい服を着て良いんだよと伝えたが、なかなか信じてもらえず、それから数日はいつも通りの和服を着崩した露出の多い格好にマフラーと、いつもの格好をしていた。


 しかし街を歩けば「あれ? 今日はあの可愛いウサギさんの服は着ないのかい?」と言う老人を始め、いろんな人から似たような事を言われたようで、それでようやく理解してくれた。


 顔を真っ赤にしてかなり恥ずかしがっていたが。


 ただ、長年あの格好をして人前に出ていたせいで、いきなり可愛い服に変えるのは抵抗があるようで、徐々に変えて行こうと言う事で、服装はそのままだが、今は俺のアドバイスで素足だったのを辞めてレースのタイツを履いている。


 そしてそんなルカを初めて見たグラスは、泣きながらサムズアップしてきた。


 いや、別にグラスの為にしてる訳じゃないからね?



 話を戻すが、そんなレースタイツを履いたルカと俺たちの後ろには、に正体を明かして以降エルフ姿のままでいるロザンヌがいて、今回の旅ではこの五人でエルフの里を目指している。



 そしてエルフの里を目指してこれまで歩いてきたのだが……この森へ入って三時間はたっただろうが。


 なかなか目的地につかない事と、歩くのも苦労するこの道にかなり体力を消耗される……ジンだけが。


 そりゃそうだ。


 俺は骸骨だから体力の代わりに自動回復する魔力を消費するだけだし、ルカやグラス、ロザンヌは桁違いの戦闘力により、体力も化け物級で、全く疲れる気配もない。


 ルカなんて、ずっと手を繋ぎながら俺の腕にしなだれているが、この足場の悪い状態と動きにくそうな服装なのに、転ぶどころか重心がブレる事すら一切無かった。


 更には邪魔な枝などは近付くだけで溶けてなくなる恐ろしい魔法? を常時発動しており、実に快適そうに歩いている。


 俺も溶けないかちょっと心配だが……。



 こんな感じで今回のメンバーもメンバーだし、ここまで一人先頭でひたすら道を切り開いているジンだけが、かなり疲労しているのが現状だ。



「……まだそんなにかかるんすか……場所もわかってるんですし、グラスさんたちは魔術師なんですから、里までひとっ飛びで連れてってくれれば良いじゃないっすか」


「それが出来たら僕だって最初からやってるさ」


 やれやれと言った感じでジンを小馬鹿にするグラス。


「里には強力な侵入対策が施されていて、外から里へ入るにはこの森を決められたルートで進まないと入れないんだよ。もし間違ったルートで奥に進もうとすれば、奥に行くほど幻術にとらわれ、森を彷徨い続ける事になるよ」


 何それ、コワッ!


「と言う事だから、この森で遭難したくなかったら、アンタは黙って私達の言う通り歩きやすいよう道を作ってな」


 エルフ姿のロザンヌに一喝されて慌てて今まで止めていた手を動かし道を切り開いていくジン。


 正体を明かして以降、エルフ姿でいるロザンヌだが、エルフ姿になっても怒ると怖いのは変わらないようだ。


 可哀想ではあるが、先程手助けしようとしたら魔王様がそんな事をしてはいけません! と、ロザンヌに怒られたので俺にはどうする事も出来ない。


 すまん、ジン。



「決められたルートって言っても、どう見てもこのルートを誰か通っているようには見えないけど……」


「それは当然です。少しでも痕跡が残れば外敵に里へのルートがバレてしまいますからね。アタシたちが通って後も、ほら……」


 ルカの疑問に答えながらロザンヌが指差した後ろを振り返ると、そこにはジンが必死に切り開き、今通ってきたばかりの道に枝が再び伸び、踏み荒らした土が盛り上がり、そこに青々とした苔が生えてきて、元通り人の通らないような状態に戻ってしまった。


「これは……凄いけど。ここに住んでいるエルフは毎回通る度に道を切り開かなくちゃいけなくて大変だな」


「流石にそんな面倒な事はしないよ。基本エルフは木の上で生活し、移動は枝から枝へ飛び移って移動するからね」


 おぉ、流石エルフ。森と共に生きる……物語とかに出てくるイメージそのままだ!


 グラスやロザンヌもそうだが、今回その正体がエルフだと分かった魔術師たちも変態しかいないから、あまり期待していなかったが、これなら清楚で高貴なイメージ通りのエルフと出会えるかもしれない!


 やはり男としてはファンダジーにエルフは欠かせないよね!



 ……えーと、ルカさん? 何でそんなに力強く俺の手を握りしめているんですか?


 あっ……ヤバい。ミシミシ言ってる。


 ヤバいヤバい! それ以上力を込めたら粉砕する! マジですいません! ファンダジーと言ったら吸血鬼こそ至高だと思います!!


 そう心の中で弁明すると、俺の手を粉砕しそうな程握りしめていたルカの手がようやく緩められた。


 ハァ……ハァ……危なかった……ロザンヌといい、ルカといい、何故俺の心を読めるんだ!



「成程、確かにそれなら道を作る必要もないね」


「そっ、だからこれはこの森へ侵入してくる人族への対策って訳」


 何事も無かったように先程のグラスの説明に納得の表情で答えるルカ。


 ……うん、何にしてもこれから変な事考えないよう気をつけなくては。


 そこで気持ちを切り替える為、先程の話で気になった事があったので聞いてみる事にした。



「何でまたそんな大掛かりな対策を打っているんだ?」


「それはほら……僕たちって見ての通り凄く見た目が整っているだろ?」


 それは事実だが、それを本人に言われるとイラッとするのは何故だろう。


「勇者ヤマトが魔王を倒した直後から、弱体化した魔族を狙った人族の魔族狩りが頻繁に行われるようになって、捕まった魔族は奴隷にされていたんだけど……僕らエルフ……特に女性のエルフは、その整った容姿から人族の貴族から狙われてしまったんだ」


「それでアタシら里を出たエルフが気付いた時には、この森の女性のエルフは全ては人族に攫われた後で……生き残った男性のエルフも抵抗した時の傷でかなり酷い状態でね。だから、これ以上人族の脅威に晒されないように、こうして強力な侵入防止の魔法をかけたって訳さ」


「捕まったエルフ達はどうなってしまったの?」


「それなら大丈夫! 助けが必要な者は全て僕たちが助け出したから。ただそれ以外……むしろ女性エルフ全員そうなんだけど……人族の生活が気に入っちゃったみたいでね。そのまま残った者が殆どなんだ。まぁ、流石僕らの仲間だけあって、今じゃ魔族差別が酷い人族の世界でも一定の権利を得て生活しているみたいだけど」


「確かに……あれは天職って感じだもんなぁ……」


 納得の表情で深く頷くジン。


「ジンもそのエルフの女性たちに会った事があるのか?」


「まぁ……な……」


 何やら言葉を濁しているが、どうしてだろう?


「でも、何にしても良かった。人族側に残ったエルフも、この森のエルフも無事で」


「ルカレット様……それが、そうでもなかったんです。この森に強力な侵入防止魔法が施されたあとも、エルフを奴隷にしようとこの森に訪れる人族が後を絶たなかったようで……」


「そうなの? それじゃまたエルフの方々が被害に……?」


「里の方には被害はなかったんだけど、里の外に出ていた何人かのエルフがね……ただ今はとある理由でヤマト王国が立ち入り禁止にしたから大丈夫なんだけど」


「とある理由?」


 気になったのでグラスに聞いてみた。


「それなら俺も聞いた事あるぜ。何でも……数十年前に突然、とても凶暴な魔物が出現するようになったってやつだよな……当時その魔物は、討伐に向かった冒険者のSランクパーティーや、国から派遣された軍隊でも歯が立たなかったみたいで、討伐に向かった殆どの者が戻って来なかったって聞くぜ」


 おいおい、Sランクと言えば冒険者の最高ランクじゃないか!? 今の俺ならSランク冒険者も倒せるが、下手したらその魔物は俺と同等の強さである、四天王クラスの強さはあるぞ!?


「それだけじゃなくて、何とか生き延びた兵士も、その時の恐怖で錯乱し、正気を保っていられたものは一人もいなかったとかで……今だにその魔物の正確な情報もわかっていないんだぜ」


「人族側には魔王を倒した勇者がいただろう?」


「その時には勇者も王としての仕事が忙しくてこんな外れの方の案件まで手が回らなかったらしい。だから国もお手上げ状態だったんだけど、幸いな事に、何故か森からその魔物が出てくる事は無かったから、それ以来立ち入りを禁止するのみで国も放置しているのが現状らしいな」



「……そんな凶悪な魔物がいる森に、俺たちはいるって事か……ならもっと気を引き締めた方が良いんじゃないか?」


「あっ、大丈夫大丈夫。何てったってソイツは……!? ……どうやら噂をすればみたいだね」


 グラスが話の途中に急に周辺を伺うような動作をしたと思うと、遠くのある一点を見てそんな事を言ってきた。


 俺もグラスの見つめる先を魔法で強化した視力で見てみると、遠くの方で何やら木の枝を高速で飛び移りながらこちらに向かってくる影を見つける事が出来た。


 最初、エルフは木の上を移動して生活していると言っていたので、エルフかとも思ったが、その陰が近付いてくる事でそれは違うとわかった。


 何故なら……明らかにグラスやロザンヌと比べて、大きいのだ。



 他の皆んなもそれに気付いたようで、ジンは道を切り開くのを止めて剣を構え、ルカも俺と一緒に前へ出て戦闘体制に入る。


 その間にも木の上を高速で移動するソイツは近付いてきて、あっという間に近くまでくると、そのまま木の上から飛び降り、大きな音と振動を響かせ、俺たちの目の前に着地した。


 着地の衝撃で上がった土煙が晴れると、ゆっくりと体を起こし、仁王立ちでこちらを伺っている化け物がいた。


 ソイツは二メートル以上ある俺と大して変わらない身長で、深緑のマントを深く被っているので顔は見えないが、そこから金色の太い突起が飛び出ている。そしてマントの上からでも分かるほど鍛えられ、隆起した筋肉だけで、相当の手練れだとわかる。


 コイツが……Sランクの冒険者パーティーや人族の軍隊を壊滅させた……凶暴な魔物?


 俺たちが警戒しているなか、俺たちを見回すソイツの視線がある一点で止まる。


 そして発せられる言葉。


「あらぁ〜、グラス叔父さんじゃなぁ〜ぃ! 久しぶりぃ〜!」


 思いもよらないオカマのような声で話し出すと、被っていたマントを外す化け物。


 マントが外され露わになったそこには……突起だと思っていた物はリーゼントで、緑色のド派手なアイシャドウに真っ赤な口紅、濃い眉毛と厚化粧でも隠しきれない青ヒゲと言う、およそこの世の者とは思えない化け物……ではなく、世に言うオカマの姿があった。


「……ん? グラス……叔父さん?」


 言われてみれば、エルフの特徴である尖った耳をしているが……まさかな。


「久しぶりだねアルス。皆んな、紹介するよ。この子は僕の姉の子でエルフのアルス。さっき話に出てきた凶暴な魔物の正体で……師匠に紹介したかった人物さ」


 えっ、グラス様の姉の子で……エルフ?


 ……この見た目で、エルフ?



「「「……ええぇぇぇッ!?」」」


 グラスとロザンヌ以外、彼がエルフだと言う事実を理解し驚愕の声を上げるのだった。

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