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ボーンライフ  作者: ユキ
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お酒は飲んでも飲まれるな

 一世一代のプロポーズを流れでクマのぬいぐるみを着たままする事になってしまった黒歴史から一夜明けた次の日。


 あのあと俺たちのプロポーズを盗み見ていた仲間に、祝いと称した飲み会を強制され、朝方までこの家で行われた。


 祝ってくれるのはありがたいが……せっかく思いが通じ合ったのだから、二人っきりの時間を過ごしたかったと言う気持ちもあったが、元四天王で、今は俺のこ……こい……びと……うん……今更ながら嬉しさと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだが……そのルカが、皆に祝われてとても嬉しそうにしていたので、結果的には良かったのだろう。


 ただ、その結果、現在部屋の中は食べ散らかした食事や酒の空き瓶、床で寝る酔っ払い達で大変な事になっている。



 物で散らかっているのは片付ければいいし、飲み会が始まって早々にダウンした為ベットに寝かされたローレンの事務官代表コリアや、ベットでくっつきあって寝ている元勇者の仲間のルナーレと、元四天王でサキュンバスのミルカや、その二人を眺めたまま寝てしまったのだろう……だらしない顔でベットに頭を乗せたまま寝ているルカの部下で魔術師達を現在まとめているロザンヌさんはまだ良い。


 何故かパンツ一丁でゴミ箱に頭を突っ込んだまま寝ているルカの育ての親で副官の真態ことエルフのグラスや、空の酒瓶に頭をすっぽり入れたまま器用に尻尾を電球に絡めてぶら下がった状態の元魔王でベビードラゴンに生まれ変わったミュート様。


 俺もそろそろ寝るわと言ってベットへ向かったは良いが、潜り込んだベットには既にコリアが寝ていてその真横に寝てしまうと言う、社会的にアウトな状態のローレンの大隊長であるジンなど、酔っ払い達の状態はなかなかカオスだ。


 仕方ないから女性陣が起きる前にあとでコッソリ起こしてやるか。



 ん? そう言えば、吐くほど酔っ払っていたのにお祝いだからと更に飲まされていた元魔王軍参謀のゴブリンキングで、俺と同じ転生者のリンが、トイレに行ってから帰ってこなくなったけど、大丈夫だろうか……。


 俺も飲ませていた側なので、さすがに少し心配になり、外で待機させていた使徒している骸骨兵を一体見に行かせたら

、案の定、トイレに頭を突っ込んだまま眠りにつくダメな酔っ払いの姿があった。


 何故酔っ払いは何かに頭を突っ込みたがるんだ……。


 そう思うのも、もう一人頭をある場所に突っ込んだまま寝ている人物がいるからだ。



 それは俺と一緒にベットで寝ているルカだ。


 日の出も間近の頃、酔っ払って寝てしまったルカをお姫様抱っこで運びベットへ寝かせたのだが、その際首に回した腕が取れず、やむ無くそのまま一緒にベットへ寝転んだのだが、何とか腕から抜け出そうとしている内に何故か俺の肋骨の中に頭を突っ込んでいて、腕で腰をしっかりホールドされ逆に身動きが取れなくなってしまった。



 どうしたもんか……。


 そう思い胸の中を覗き込むと、そこにはとても安らかで幸せそうなルカの寝顔があり、思わず見惚れて時間を忘れて眺めていた為、既に日も高くなった今に至る。



 このままでも良いかぁ、となりかけたが、この状態を周りで寝ているコイツらに見られるのはマズイ。


 昨日の今日でまたコイツらにからかわれる材料を与えてしまってはこの後が怖いからだ。


「ん、んん……」


 何とか抜け出せないかとアタフタしていると、その動きに気付いたルカが起きたようで目を開け、そこでやっと抱き付きから解放された。


 そしてモゾモゾと動き俺の中から出てくると、顔をこちらに近づけてきた。


「クリス……おはよう」


 チュッ


 一瞬何をされたのかわからなかった。


 やっと解放されたと安堵すると共に、残念な気持ちを感じて油断していた所に、頬骨に暖かで柔らかい感触があり、しばらくしてからやっとそれがオデコにキスをされたのだと気付き、慌てて後退りした。


 ガッシャーン!! バラバラァ


 しかし先程までいたのはベットの上だった為、後退りする事で盛大な音を立ててベットから落ち、更に焦っていた為体の制御が緩まり骨がバラバラに床に散らばる。


「な、なにごとだ!? うおっ!?」


 ボフンッ!


 その音にビックリしたミュート様の電球に絡めていた尻尾が緩み、下のベットへと落っこちた。


「んん〜、何ですかぁ〜?」


「んあ〜、なんだなんだ!」


「……ッ!? キャーーッ!!!」


 バチンッ!! ヒューー……ドゴンッ!!


 ミュート様が落ちたベット。

 それは運の悪い事にコリアとジン眠っていたベットで、落ちた衝撃で共に目覚めたコリアとジンはお互いしばらく見つ目合った後、ようやく隣同士で寝ていた事実に気付いたコリアが悲鳴と共に強烈なビンタをジンに食らわし、そのまま壁まで吹っ飛んでいった。


「……何事……ですか……?」


「うるさいなぁ……ッ!?」


「ふぁ〜……おはようございま……ッ!?」


「「キャー!!!」」


 ピカァッ! チュゴーン!!


「ぎゃァァァアア」


 ジンが壁に激突した事で、その音で壁の向こうで便器に頭を突っ込んでいたリンが目覚め扉を開けて戻ってきたが、その姿はゲボまみれで異臭を放っており、ゴブリンの姿と相まって化け物と化していた。


 そしてこれまた運の悪い事に目覚めたミルカとルナーレがそのおぞましい姿を見ておそらく化け物と勘違いしたのであろう……絶叫を上げながら放たれた二人の魔法がリンに命中してリン諸共爆発したのだった。



 不運のピタ◯ラス◯ッチにより騒がしい朝、と言うか時間的には既にお昼だが……ルカと恋人となって初めての朝を迎えたのだった。



  *****



「……なんか……すまん」


 そう謝る俺の前には左目に青痣が出来、全身ボロボロのジンと、黒焦げで頭から煙が上がっているリンの姿があった。


「まぁ……酔ってたとは言え、俺らに被があったからしょうがない」


「……ですね。しかし、私はともかく、ジンがそこまで酔うなんて珍しいですね」


 ジンと自分に治癒魔法をかけながらそう話すリンの言葉に、確かに普段のジンからしたら珍しいなと思った。


 普段ならどれだけ飲んでも対して普段と変わらないジンが、昨日は珍しくコリアの寝ているベットに寝てしまうと言う社会的にアウトな事をする程酔っていたのだから。


「あぁ……確かに昨日は、親友のめでたい場ってのもあって、嬉しくて自分でもわかるくらい飲み過ぎてたからなぁ」


「その気持ちはわかります……何だかんだで、あの状態でも飲んでしまったのはやっぱり嬉しかったからですからね」


 ジンとリンの思いもよらない言葉に、良い友を持ったのだなと目頭が熱くなるのを感じる。

 骸骨だから涙は出ないけど。



「おまたせー!」


「こらっ、走ったら溢しますよ」


 三人でホッコリしていると、料理を持ってミルカが駆けてきて、それを後ろから同じように料理を持ってきたルナーレが嗜める。


 そしてそんな二人を最早笑顔で取り繕う事すら忘れてだらしない顔のロザンヌさんがヨダレを垂らしながらついてきた。


 いや、料理にヨダレ垂れるからマジで自重して下さい!



 そんな心配を他所にテーブルに並べられる朝食。


 ホカホカのご飯と良く味の染みてそうな漬物、そして生姜とネギ、鰹節ののった冷奴とシンプルだが、飲んだ翌日の胃に優しい料理たちだ。


 最後にヤカンとお皿に盛られた魚の切り身や薬味を持ってルカがキッチンから戻ってきた。


「今日は皆あまり食欲も無いと思うから、胃に優しい鯛茶漬け作ったよ」


 そう言いながら生まれ変わったのでアレだが、その前も合わせればこの中で一番の年長者であろうミュート様のホカホカの白飯の上に具材を乗せたあとにヤカンの中身を注いでいく。


 その瞬間鯛出汁のいい香りが部屋中に広がる。


 ぐーぅ。


 後ろの方からお腹の鳴る音がしたのでそちらを見ると、そこにはジンに強烈なビンタをお見舞いしたが、二日酔いが酷かったようで先程まで再びベットに横になり死にそうな表情で寝ていたコリアが起きており、恥ずかしそうにお腹を抑えていた。


「とても……良い匂いがしたので……」


「ふふふ、二日酔いにも効く薬味が入ってるから早く食べよう」


 匂いだけで二日酔いで食欲の無いどころか、起きるのも億劫そうだったコリアが起き出すとは……さすがプロも顔負けのルカの手料理である。


 かく言う俺も、久しぶりのルカの手料理なので、その匂いだけで今にもヨダレが口から溢れそうだ。

 骸骨だからヨダレは出ないけど。



 そして準備をしていたメンバーも椅子やソファーなどに腰掛け、料理の準備も終わると何かを訴えるように皆コチラを見てきた。


 ……はいはい、わかってますよ。


「えぇ……皆さん、昨夜は俺たちの為に祝って頂きありがとうございます。未熟な二人ですが、今後ともご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します」


「結婚式の挨拶か」


 ジンの言葉に周りに笑いが漏れる。


 確かに挨拶が少し堅かったなと反省すると共に、場を和らげてくれたジンに、癪だが感謝しておく。


「ルカ、朝食を作ってくれてありがとう。ミルカとルナーレ、それからロザンヌさんもお手伝いご苦労様。皆さん、ルカの手料理は絶品なので目一杯堪能して下さい。それでは皆さん……いただきます」


「「「いただきます」」」


 無難に挨拶を済ませて出来たての鯛茶漬けを口に流し込む。


 その瞬間広がる鯛出汁の風味。


 噛むたびに一緒に入った薬味が混ざり合い、どんどん豊かになる味わい。


 飲み込む事でその温かさで体も温まり、心まで満たされていく。


「「おいしーぃ!!!」」


 とても良い笑顔でそう大声を上げたのはミルカとルナーレだ。


「確かにこれは美味しいな」


「はい、それに二日酔いのこの体に染み渡るようで、とても元気が出てきました。」


「本当に美味しいし凄いです! 先程までの頭の痛みが嘘のように弱まってきました!」


 ミュート様もリンもコリアも気に入ったようだ。


 テレビショッピングのコメントのようだが、実際効果は目に見えて出ており、リンとコリアは食べる前ゾンビのような顔をしていたのに、今では顔色も大分良くなっている。



「おかわり……こりゃぁ良いな、これからは飲んだ次の日はちょっとお邪魔させてもらうか」


「ジンさんはもう少し遠慮して下さい!」


 コリアの言う通りだ。お前は少しは遠慮しろ。


「ジン、おかわりどうぞ。みんなもありがとう。おかわりまだまだいっぱいあるから沢山食べてね」


 その言葉に俺もすかさずおかわりをお願いする。


 嬉しそうなルカの笑顔に免じて、今回は許してやろう。


 こうして久しぶりのルカの手料理を皆んなで心ゆくまで堪能したのだった。

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