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ボーンライフ  作者: ユキ
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告白

 俺がソファに座る巨大なクマのぬいぐるみであるクーちゃんの中に隠れていると、とうとう目的の人物であるルカが部屋に入って来た。


 よしよし、このままもう少し様子を見てから、作戦実行だ!


 そう思ったが、ルカは部屋へ入ると他には目もくれず、真っ直ぐ俺の所へ向かって来たので、ビックリして作戦実行のタイミングを逃してしまった。


 そして目の前まで来たルカは立ち止まり、ジッと俺が隠れるクーちゃんを見つめて来る。


 バ、バレてない、よな? ……うん! きっとそうだ! 俺の完璧な作戦がこんな簡単にバレる訳がない!


 酔ってまともな判断の出来ないクリスは、何故か変な自信でそう結論付けた。


「クリス、そこにいるんでしょ?」


 その言葉にドキッとして思わず身じろぎしてしまうクリス。


 何故だ!? 何故俺がここに隠れているとバレた!? ……まさか、ルナーレたちが?


 そんな事を考えてなかなか動かないクリスに痺れを切らしたのか、辛そうな表情でルカが再び話し始めた。


「……やっぱり……怒ってる……よね?」


 しまった、出るタイミングを逃した。

 しかし……怒る? 一体何の話をしているんだ?


「ごめんね、クリス。……私……怖かったの。もし私の本心を知って、クリスに嫌われたらって思うと……怖くて……言えなくて……それでついクリスを避けるような真似をしてしまったの……本当に、ごめんなさい」


 そうだったのか……俺はてっきり何か嫌われるような事をしたのかと思っていた。


「でもね、ルナーレに言われて気付いたの。クリスはいつだって私の為に一生懸命で……そんなクリスが私を嫌いになる筈ないって!」


 当たり前だ! 俺にとってルカはいつ死んでもおかしくないブラックな環境から救ってくれて、自分に何の利益もないのに友達と言う理由だけで今まで保護してくれた命の恩人だ。

 それに、今では大切な家族なんだから、嫌いになんてなる訳ない!


「だから今は、知って欲しいの。私の……本当の気持ちを」


 そう言って胸の前で手を組み目を閉じるルカ。


 ソファに座る俺からは若干見上げるような形になり、窓から差し込む月明かりで照らされたその姿は、儚げながら決意に満ちた表情がまるで女神のようで……とても美しかった。


 そのあまりの美しさに一気に酔いも覚め、頭が急にクリアになる。



「クリスに家族になって欲しいって言われたあの夢の中の出来事から、私の中でクリスへの想いがどんどん大きくなっていって……」


 すると突然目の前にあの夢の中での映像が浮かび上がる。


『それなら……それなら俺が! ルカの家族になる!!』


 それは自分主観ではなく、客観的に上空から見ているような映像だった。


『ルカの家族になって……これからは、俺がルカをずっと支えて行くよ!!』


 それと共に、リンとミュート様の先程の言葉も……。


『夢の中とはいえ、あんなにも熱い言葉をアナタに言われたのですから』


『あれだけ熱烈なプロポーズをしていたではないか』


 そうか……あの二人はこの事を言っていたのか……。


 それと共に、冷静になった頭でその映像を見ることで、二人の言っていた意味にも気付いた。


『ルカ……俺と……家族になってくれない……かな』


『……はい……よらしく……お願いします』


 ははは……確かにこれじゃ、プロポーズじゃないか……。


 そして次第に映像は薄れていくと、目の前には再び祈るような姿のルカが現れ、続きを話し出した。




「それは想いだけじゃなかったの。


 クリスと話したい……。


 クリスに触れたい……。


 クリスをもっと知りたいし、私をもっと知って欲しい……。


 私を……ずっと見ていて欲しい……。


 私を……。


 そんな……欲求が、私の中で次から次へと溢れてきて、自分でも止められないの」



 あぁ……そうか……ルカが悩んでいたのは俺のせいだ……。


 俺は単純にルカの家族になればルカが寂しい思いをせずにすむと思っていた。


 でも……家族になるって事はそんな簡単な話じゃなかった。


 一言に家族と言っても、家族にはいろいろな形があるからだ。


 親と子供。


 お爺ちゃんお婆ちゃんと孫。


 兄弟、姉妹


 いろんな家族の形があり、俺はそんな肝心な部分をしっかり話さず、逃げた。


 ルカの事を知っていたからこそ、それでも良いと思っていた。


 ルカは幼少期に親を亡くしてからは人里離れたこの場所で育ち、他者との繋がりがあまりなかった。


 グラスの偏った教育で育てられた事もあり、そう言った事に疎かったので、大丈夫だと自分に言い訳をして……。



 でも、知識で知らなくても感情は芽生える。


 知識がない分、自分の感情に戸惑い、人より多く悩んだだろう。


 それでもルカは、逃げずに自分を曝け出してくれている。


 なら俺がしなくちゃいけない事は……。



「こんな私だけど……どうかこれからも家族として一緒にいて下さい」


 真っ直ぐな瞳で俺を見つめ話すルカ。



「話してくれてありがとう。その答えを言う前に、俺もルカに話さなくてはいけない事がある」


 俺はゆっくりと立ち上がりルカを見つめ返す。


 ルカは不安な表情を一瞬したが、すぐに決意した表情になり、真っ直ぐこちらを見つめてきた。


「ルカに助けられた時から、沢山の時間をルカと一緒に過ごし、少しずつその人柄や考え方を知っていくうちに、ある一つの想いが芽生えた。……友達として、ルカを守りたいと言う気持ちだ。」


 その言葉にルカの綺麗な瞳が少し潤み出す。


「それは次第に大きくなり、それと共に他の想いも増えていった。


 ルカと話したい……。


 ルカに触れたい……。


 ルカをもっと知りたいし、俺をもっと知って欲しい……。


 俺を……ずっと見ていて欲しい……。


 俺を……」


 それは先程自分が伝えた想いと同じだと気付き、思わず口元を手で抑え涙が溢れ出すルカ。


「でも、俺はその気持ちを抑え込んだ……俺は所詮骸骨で、肉体を持たないから……」


「そんな事! ……関係……ない」


 涙ながらに否定するルカ。


「ありがとう。……そうだね、俺はそうやって逃げていたんだ。夢の中でも……ルカに家族になろうと言った時、俺は家族と言う言葉を深く考えずに言った。……いや、本当はわかってたけど、わからないフリをして誤魔化した」


「家族の……言葉?」


「あぁ……家族としてただ一緒に居るだけの存在じゃなく、俺がルカと作りたいのは……。


 お互いを必要として。


 共に助け合い。


 手と手を取り合うパートナーとしての関係」


「それって……」


「肉体がないからとか、もう言い訳はしない。


 今の俺の望みはただ一つ……。


 ルカに……。



 俺の妻になって欲しい」



 その言葉を聞きルカは泣き崩れた。


 その姿は四天王最強を誇ったルカレット・エレンシアではなく、ただ大切な人に想いを告げられ、感極まり涙する、一人の弱い女性の姿だった。


 その姿を見たクリスは優しくルカレットを抱きしめる。


「……ぅ……ヒック…………よ……よろ、しく……ヒック……お願い、します……うわぁぁぁああ」


 そのまま泣き続けるルカレット。


 こうして二人はめでたく結ばれ、()()()()()家族になったのだった。



   *****



 そんな二人を窓の外からコッソリ覗く人影達。


「ちょっ……見えないよ……私にも見せて!」


「アナタにはまだ早いです」


 必死に中を見ようとするミルカとそれを邪魔するルナーレ。


 そしてそんな二人のやり取りを穏やかな笑顔で眺めるロザンヌさん。



「はぁ……素敵……私もあんなプロポーズ受けてみたいなぁ……」


「なんだ、お前にもそんな乙女チックなところがあったのか……グハッ!?」


 うっとりした目で二人を見ているコリアと、余計な事を言ってど突かれているジン。



「めでたいねぇ……でも師匠のあの姿は無いよね」


「確かに、せっかくの瞬間がクリス君のあの格好で台無しだな」


「いえ! ご主人様はどんな格好でも素敵です!!」


「あ、あぁ……すまない……と、ところでお前は邪魔するかと思ったが、良いのか?」


「そりゃぁ、変なヤツだったら二度とルカに近づかないよう、()()()()排除してるけど、クリスは僕の師匠だからね。彼ならルカを任せても心配ないよ」


「ふむ、そうか。確かに彼なら誠実だし安心だな」


「それにね、ルカを育てて僕は気付いたんだ。花を近くで愛でるのも良いけど、少し離れた所で美しくなっていくさまを眺めるのも最高だって」


「ほぉ、お前もようやく落ち着いてくれた「そして花が一番綺麗に咲き誇るのは、恋をしている時だからね。師匠は、そんな女性の魅力ををより高める天才だ! これからルカがどんなに光り輝くか……グフフ……あぁ〜、楽しみだなぁ」……ふ、ふむ……お前は相変わらずだな」


 相変わらずの真態っぷりなグラスと、それを見て長年の友でも引いているのがミュート様だ。



「うぅ……気持ち悪い……」


「イテテ……お前、飲み過ぎだよ」


「アナタ達が飲ませたんでしょう! ……ヴッ!? ボロロロロォ……」


「うわぁ!? 汚ねぇなぁ!! 吐くんなら向こうで吐け!」


 先程まで泥酔していたせいで吐いているリン。



「……って! さっきからアンタたちうるさいんですけど!? 完全に隠れる気ないだろ!!」


 ルカなんて途中で気付いて耳まで真っ赤だ。


 ただ……それでも離れず抱き付いているルカがメッチャ可愛いです……。



「あはは、ごめんごめん、大事なルカと尊敬する師匠の感動的なシーンに思わず興奮しちゃって。あっ、動画はしっかり撮ったから安心してね」


 悪びれる様子もなく、それどころか爆弾発言までしてくるグラスにルカの耳が更に赤くなる。


 そして流石に居た堪れなくなったのか、俺からそっと離れた……少し残念である。


「……ん? 撮った? 今の告白シーンを? 全て?」


「もちろん! 師匠がぬいぐるみに隠れて高笑いしてる所から今まで全部ね」


 俺は崩れ落ちた。


 酔ったテンションのあの時も……ぬいぐるみに入ったまま告白したあの姿も……全て撮られていただと!? 完全な黒歴史じゃないか!!


「まぁまぁ、そう落ち込むな、格好はアレだが……なかなかカッコよった……ぞ」


 後半笑いを堪えきれてないですけど!? てか、ミュート様のそのベビードラゴン姿も大概だからね!!



「ご主人様、カッコよかったです! ……次は私にもお願いします」


 あっ、うん……マジでうっとりした顔で言われるとそれはそれで反応に困る……てか、サラッと爆弾発言しなかった?


「お兄様聞いてよぉ〜、ルナーレのせいで全然見えなかったんだよ! せっかく私の魔法でお兄様に映像送ってサポートしたのにぃ」


 あっ、やっぱりさっきのミルカの魔法だったか。


 凄く助かったのでとりあえず沢山頭を撫でてお礼を言ったら機嫌も治った。


 てか、ロザンヌさん……笑顔で取り繕っていますが、ヨダレ垂れてますよ……。



「骸骨って聖なる攻撃に弱いんだよね? それじゃ今の俺には無理だなぁ……感情がドスグロ過ぎて」


 いや、ジンさん何するつもり!? 目が怖いんだけど! いつものやる気のない目はどうした!?


「ルカレット様、クリス様、おめでとうございます!! とても感動しました! ……お幸せに……お……お、うわぁぁぁん」


「お、おう!? 感動してくれるのは嬉しいが、一旦落ち着こう! なっ! ……よし! ジン! あとは任せたッ!!」


 感動のあまり泣き出したコリアを、今にも俺を殺して来そうなジンに丸投げしておく。


「やれやれ、皆さん騒がしくてすみません。……改めておめでとうオボロロロォォ……」


「お前は家に帰って寝てろ!!」



「……ふふふ」


 するとそんな騒がしい連中を見て、先程までの涙や恥ずかしさが何処かに飛んで行ったのか、笑い出すルカ。

 するとこちらを見てニッコリと微笑んだ。


「みんな良い人達だな」


「あぁ、バカばっかりだけど……みんな優しくて良い人達だ」


「そっか……そんな優しい人達に強力してもらって、こんなにも祝福されてるんだもん……幸せにならなくちゃね」


「……あぁ」


 そう言って笑顔はこれまで見てきたルカのどの笑顔よりも美しく、これからも絶対に守って行くと心に誓った。

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