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ボーンライフ  作者: ユキ
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飲み会

「……と言う訳で、あれからルカの様子がおかしいんだ」


 ルカが目覚めてから3日後の夜。


 相変わらずルカからお風呂や就寝の際のベットに誘われないどころか、翌日には声をかけてもよそよそしい反応になり、目すら合わせてくれなくなった。

 骸骨だから目はないんだけど……。


 その理由を散々考えてみたが、結局答えを出す事が出来なかった俺は、ルカたちには今夜は外で飲んでくると言って、ある人物たちと酒場に来ている。



「そいつは大変だったなぁ。夢の中じゃぁアレだけ親しげだったのに……女の気持ちってのはよくわらなねぇな」


 そう話すのは、まだ乾杯してそんなに立っていないのに、既に二杯目になる酒を飲んでいるジンだ。


 これだけのペースで飲んでいるのに、顔が若干赤くなる程度で普段と殆ど変わらず、かなりお酒が強い。


 いや、他にも変わっている所があった。

 いつものやる気のない目に珍しく若干正気が感じられるのだ。


 ……うん、こりゃただ酒が飲める事を楽しんでるだけだな。

 相変わらずのダメ人間である。



 そんなダメ人間のジンだが、ミルカ救出の為、共に王都に潜入して以来、何故か馬が合い、こうして偶にお酒を飲む仲になっている。


 決して類は友を呼ぶと言う訳だはない! 決してだ!


 ジンはこんな性格なので、変に気兼ねする事なく話が出来て、楽なのだ。



 そんなジンと俺を呆れた顔で見ているのは元魔王軍参謀でゴブリンキングのリンだ。


「アナタたちは……そんな事では女性陣に呆れられてしまいますよ」


 リンともこの街に来てから一度向こうから飲みに誘われ、一緒に飲んでみたら何故か意気投合して、こうしてジンも含めて三人で偶に飲むようになり、今ではお互い呼び捨てで呼ぶ仲になっている。


 リンの場合、 前世も含めたその濃厚な人生経験と、参謀を勤めていた程の頭脳により、的確なアドバイスをもらえる事からとても頼りにしている。


 ……ただ。


「何だよ、一人だけわかったような口ぶりで……」


「これでも元々世帯を持っていた身ですからね……今は家族も全て失い独り身ですが……」


 この通り、お酒が入るとネガティブ思考になるところが欠点だ。


「とにかく! クリスは一度ルカレットさんとしっかり話すべきだと思います! ……でないと、私のように二度と話す事が出来なくなってしまいますよ……」


「話と言っても……俺が話しかけると適当な言い訳をしてすぐにいなくなっちゃうんだよなぁ……」


 ネガティブ発言は酒が入るといつもの事なのでスルーしておく。


「いっそしばらく距離を置いた方がいいんじゃないか? ほら、考える時間? 的な」


「やっぱりそうかなぁ?」


 ジンの提案は自分でも考えていた事なので、悩むところだ。


「……クリスは、ルカレットさんが本当に……それを望んでいると思いますか?」


「……いや、ルカに限ってそれはないな」


「そうでしょう。なら逃げずにしっかりと話し合って下さい。……きっとルカレットさんも今は混乱しているだけだと思いますよ」


「混乱?」


「そりゃそうでしょう。夢の中とはいえ、あんなにも熱い言葉をアナタに言われたのですから。若いって良いですねぇ」


 はて……何か俺は混乱させるような事を言っただろうか……?

 ジンの顔を見るが、ジンもわからないようで首をかしげている。


「わからないのでしたら、もう一度自分の言葉をよく考えてみて下さい」


 そう言って不敵な笑みを浮かべるリン。


 なんだこの余裕の態度は……これがモテる者とモテない者の差だとでも言うのか……。


 顔はゴブリンなのでよくわからないが、きっとゴブリン世界ではかなりのイケメンなのだろう!


 じゃないとこの余裕の態度が説明出来ない。


 ジンを見るとそのやる気のない目からモテる者に対する静かな殺意を感じる。


 どうやら俺と同意見のようだ。でも、同類じゃないからな!


 助言は大いに役立った。


 だが、そのイケメンの余裕は許さん!!



 俺たちはアイコンタクトで頷き合うと、まだあまり減ってないリンのコップに酒を注いで行く。


 溢れそうになる自分のコップに慌てて口をつけ飲み出すリン。


 口を離すと続けざまに今度はジンが酒を注ぐ。


 そしてまた俺……。


 ふふふ……今夜はリンの醜態をつまみに、楽しい飲み会と行こうではないか!


 そうして何とか止めようとするリンを無視して次々と注ぎ続けた結果、すっかり出来上がったリンは、グチグチとネガティブ発言を繰り返し泣き続けると言う、何ともカオスな状態が出来上がったのだった。


 いやぁ〜、今日も酒が美味いぜ!



 *****



 悩みは解決しないが楽しい飲み会も終わり、デロンデロンに酔っ払ったリンを寝泊まりしている部屋へ連れて帰ると、同じ部屋で寝泊まりしているミュート様が呆れた顔で出迎えてくれた。


「何だ、今日はまた一段と酔わせたのだな」


「すいません、リンのあまりのイケメンっぷりに、つい」


「まぁ、リンはいろいろと溜め込むタチだが、キミたちと飲んだ翌日は清々しい顔になっているので良いがな」


 飲むたび毎回こんな感じになっているのでミュート様も慣れた者で、俺たちがベットまで運び寝かせると、毛布を掛け、起きた時ように枕元にお水を置いてあげていた。


「ただ、ジン君はともかく、クリス君は世帯を持った身であまり遅くまで飲み歩くのは感心しないな」


「なっ!? お前! いつの間に結婚したんだ!! この裏切り者が!! 俺と一緒に一生独り身と言う呪いを背負うと約束しただろう!!」


 ミュート様の言葉を聞いたジンが俺に掴みかかり、ガタガタと揺らしながらそんなアホな事を言ってくる。


「いや……落ち着け! そんな約束はしてないけど、俺はまだ結婚どころか恋人すら居た事ないから!!」


 何をどう勘違いしているのか、ミュート様の言葉を否定する。


「ん? 何を言っているんだ。あれだけ熱烈なプロポーズをしていたではないか」


「えっ?」


「ん?」


 あれ、何かがおかしい。

 熱烈なプロポーズ? とは何の事だ?


 目の前のジンを見るが、ジンもわかっていないようで小首を傾げている。


 うん、オッサンが小首を傾げてもキモいだけだな。



「何にせよ、家で待つ者がいるのだから早く帰ってあげなさい」


 ミュート様の言葉に疑問は残ったが、挨拶を済ませると俺たちはそれぞれ自分の家へと帰路に着くのだった。



  *****



「ただいま」


「お〜か〜え〜りッ!!」


 家に帰ると勢いよく走り込んできたミルカがいつものように飛び込んでくるので、勢いを殺しながら受け止める。


 もう夜も遅いのでてっきり寝ているものだと思っていたが、わざわざ寝ずに待っていてくれていたようだ。


 家で待つ者……もしかしてミルカの事か?

 そう思い腕の中で何やら匂いを嗅いでいるミルカを見る。


「クンカクンカ……ハァハァ……お兄様の匂い」


 えっ……骸骨に匂いとかあるの?


 何だがミルカの変態度が悪化している気がするが、大丈夫だろうか……まぁ、しかし……うん、無いな。


 ミルカは見た目もそうだが、まだまだ子供だ。

 ミュート様が勘違いするにしても幼過ぎる。



「お帰りなさい、ご主人様」


 するとミルカに続きメイド姿のルナーレが出迎えてくれた。


 その格好からして、お風呂も入らずに待っていてくれたのだろう。


「ただいまルナーレ」


 ルナーレ……確かに言われてみれば、服従の契約では結婚式の誓いの言葉のようなシュチュエーションだったが……。


「どうかされましたか?」


 俺が黙ってルナーレを見つめているので不思議に思い小首を傾げるルナーレ。


 その仕草がまた何とも可愛らしく、思わずドキッとしてしまった。

 さっきのオッサンとは大違いだ。


 すると何かを思いついたような反応をしたかと思うと、何を思ったのか、首元のリボンを取り、襟のボタンを外して胸元を恥ずかしそうに開き出すルナーレ。


「ちょっ!? 何してるの!?」


「えっ……? ご主人様が私を何か思う事があるような目で見ておられたので……魔術師様達の言う通り、やはり胸元を開いた方が良いと思われていたのかと……」


「いや、違うからね! あの人たちの言う事間に受けちゃダメだからね!」


 いくら王女様で世間知らずだからって、あの変態たちの話を信じちゃあかん!


「では……ジッと私を見て、どうされたのですか?」


「いや……それは……」


 流石にミュート様が熱烈プロポーズをしたと勘違いされている相手かもしれないと考えていたなんて、とても言えない!


「そ、そう! ルナーレがあまりにも綺麗だったから、思わず見惚れていたんだ!」


「え……そ、そんな事……いやだ……もう」


 途端に顔を真っ赤にして嬉しそうにくねくねと身をよじるルナーレ。


 動く度にその短いスカートのせいで、下着が見えそうで見えないと言う、何とももどかしい状態になり、つい目がいってドキドキしてしまう。



 ゴホン……まぁ、とりあえずは誤魔化せたようで良かった。


 よくよく考えてみたら、ルナーレとの服従の契約はルナーレの方から持ちかけられたもので、俺はそれに答えただけだ。


 ミュート様の言うように俺が熱烈なプロポーズをした訳ではない。


 なら一体誰のことを言っているんだ……。



 そこでふとある人物がいない事に気付く。


「ところで……ルカが見えないけど、どこかに出かけているのか?」


 すると、くねくね動き照れていたルナーレだか、急にその動きを止めると、真剣な表情で話し出した。


「それが……ご主人様が帰ってくるほんの少し前、急にソワソワし出したかと思うと、『ちょっとトイレ』と言って、そのまま裏口から出ていかれました」


 いや、トイレなら家にあるのに何故に出て行く。


 明らかにどうやってか知らないが、俺が帰ってくるのを察知して逃げているよな……これ。


 話し合いどころか、顔すら合わせてくれないようになってしまってはお手上げじゃないか……。


「ルナーレ……俺がルカの夢の中で、何かルカを混乱させるような事したかな?」


「何かしたかと言われれば、しましたね」


 やっぱり……。


「……ですが、それはご主人様が考えているような悪い事ではありません」


「……と言うと?」


「これ以上は、敵……いえ、ライバルに塩を送る事になるので私の口からは……」


「……??」


 敵? ライバル? 確かに人族と魔族は敵同士だが、今のルナーレとルカは家族なのだから、敵も何も無いと思うのだが……。


 う〜ん……さっぱりわからん!


 ルカの事といい、ミュート様に勘違いされている件といい、俺には検討もつかない。


 やっぱりちゃんと話し合わないとダメか……。


 しかし、顔すら合わせてくれなくなったこの状況で、どうやって話し合えば……! そうだ!


「ルナーレ! ミルカ! 協力して欲しい事があるんだ!」


 俺は閃いた案を実行すべく、ルナーレとミルカに協力を仰ぐのだった。

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