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ボーンライフ  作者: ユキ
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ゾンビフェスティバル

※四天王ミルカと勇者の仲間の僧侶ミルカが同じ名前になっていたので、勇者の仲間の僧侶ミルカをルナーレに変更・修正致しました。

 ご迷惑お掛けして申し訳ありません。


 引き続きボーンライフをよろしくお願い致します。

「……ミルカ……様……」


「はい……私が、四天王……ミルカ……です」


 壁に吊るされた少女は、か細い声で自らを四天王ミルカと名乗った。


 てっきりミルカ様の子供かと思いその名を出したが、勘違いから自分の正体を明かしてくれたようだ。


 しかし、俺の見た四天王ミルカは、ルカにも劣らない妖艶で美しい、大人の女性だった筈。


 これはいったい……。


「私の……今までの姿が……幻覚だと……良く……わかりましたね。」



 ……予想外です。


 確かに幻覚が得意だと聞いていたが、普段から自分の姿を偽っていたんですね。

 全く気付きませんでした。


 しかし、まさか四天王はエロ要員が多いと思っていたら、実はロリ要員だったとはなぁ……。


 それに幻術のエキスパートであるミルカ様なら、俺の姿をイリュージョンで変えていても見破られるのも頷ける。


 しかし今はそんな事を気にしている場合では無い。



 『ジン、こちらの扉も開けてくれ』


 俺の念話に答えるように、コリアと一緒に仲間を介助していたジンがこちらへとやってきて牢屋の鍵穴を弄り出した。


 そして、やはりものの数秒で扉を開けると中に入り、ミルカを吊るしている手錠も簡単に外してみせた。


 手錠が外れるとそのまま地面に落ちそうになるミルカを受け止める。


 しばらくご飯もろくに与えられなかったのだろう、その体は細く痩せ細っており、とても軽く、拷問の跡だろう、至る所に傷がみられる。


 そのまま目線がミルカの顔に移った際、ミルカと目があった。


 するとみるみるうちにミルカの顔が茹蛸のように真っ赤になっていく。


 しまった、今は幻術で人族に見た目を変えているから、目もちゃんとあって、俺がまじまじと身体を見ていたのがバレバレだった。


 すると次の瞬間俺の腕の中のミルカの姿がモヤでもかかったようになると、以前見た妖艶な大人の女性の姿へと変わっていた。


 凄いのが、こうして腕で抱き上げている状態なのに、変身した直後に重さが大人の女性程度になり、触った感覚も痩せて骨張った感触から手に吸い付くようなモチモチの何とも言えない弾力に変わった事だ。


 流石サキュンバス族歴代最強の幻術を操り、四天王まで勤めた事だけはある。


 視覚だけでなく変身前から抱えているのに重さや感触まで変わったと錯覚させてしまうとは凄まじい幻術だ。


 そして変身が終わると魔法の力でフワリと浮き上がり話し始めた。


「骸骨兵さん……いえ、確かクリスさんだったわねぇ。助けてくれてありがとぉ。あの手錠に魔法の発動を阻害する術がかかってて、逃げるどころか自分にかけている幻覚まで溶けちゃったのぉ。あの姿だと恥ずかしくてまともに話も出来ないしぃ、ホント参っちゃうわぁ。でも、どうして私を助けてくれたのぉ?」


 今の姿になった途端、先程まで小さな声でボソボソ喋っていたのに、艶のある妖艶な喋り方で流暢に話し出す。

 どうやら見た目を変える事で恥ずかしさがなくなり、その者になりきって喋れるようになるようだ。


 とりあえず俺のせいで気まずい雰囲気にならなくて良かった。


「詳しい話は後で話します。まずはここから脱出しましょう」


「そうねぇ、こんなカビ臭い所はもうごめんだわぁ」


 ミルカ様の同意を得ると、先に上に上がっているコリアに合流する為走り出す。


 地上では既に手当てを終えた兵士達、全員で五人がコリアと共に俺たちを待っていた。


 ただ、兵士達に施されたのはあくまでも応急手当てで、ちゃんとした治癒師や僧侶がいる訳ではないので皆歩くのもやっとな状態だ。


 そこで外で暴れている分体の完全に骸骨になっている者を五体呼び、兵士達を背負わせる事にした。


 骸骨を選んだのは、流石に腐敗しているゾンビ状態の者に背負わされるのは可哀想だと思ったからだ。



「す……すごぉーい!!」


 骸骨達に兵士を背負わせ小屋から出ると、外の光景を見たミルカが目を輝かせて感動の声を上げた。


 外では今だにゾンビのような見た目の俺の分体が敵を追いかけ回し、恐怖を撒き散らす地獄とかしていた。


「何この状況! 最高に熱くなるわぁ!」


 どうやらミルカ様はゾンビ物が好きなようだ。


「ねぇねぇ、もっと面白くして良いかしら?」


 とても良い笑顔で俺に尋ねてくるミルカ様。

 これから脱出する訳だし、混乱を助長してくれるなら助かるので頷いておく。


「やったぁ、それじゃぁ……えい!」


 演技も忘れて変身前の子供の見た目相応の喋り方で魔法を発動するミルカの掛け声と共に、俺のスキルの限界である、百体しか居なかったゾンビ軍団がどんどん増えて行く。


「キャァー!」


「なんだコイツら!?」


「助けてぇー!」


 それだけではなく、遠くの方からも人の叫び声や助けを求める声が響きわたってきた。


「……一体どこまで幻術が及んでいるんですか?」


「ん? もちろん、街全体だよ」


 良い笑顔で答えるミルカ様。


 どうやらこの王都は今、ゾンビパニック状態になってしまったようだ。


 この騒動の原因である俺も、その言葉を聞き顔が引きつりそうになる。

 骸骨だから変わらないけど。


 何はともあれ街が混乱の渦にあるなら脱出も容易になる。


「ご助力感謝します。今の内に行きましょう」


 そして混乱するその場を抜け、教会の正門へと走り抜けるのだった。



 *****



 教会本部の最上階。


 そこは贅沢な限りを尽くされた部屋で、見事なデザインのいくつもの調度品や絵画が飾られ、家具や柱に至るまで細かな細工が施された、さながら美術館のような場所だった。


 その部屋の中央、豪華なベットに座る老人がこの部屋の主でグリル教教皇のグロービルだ。


 寝巻きの白い服の上からでもわかる鍛え抜かれた筋肉と鋭い眼光が特徴の人物で、短髪をオールバックにした髪型と合わさり見る者を威圧させる。


 そんな彼はベットから立ち上がると、自らの眠りの邪魔をした外の騒音について確認する為部下を呼び付けた。


「この騒ぎはなんだ? 外で何が起きている」


「ハッ! 突然教会敷地内の墓地より死体が這い出してきて暴れ出し、それが街全体にまで広がり、住民達が逃げ惑っているようです!」


「突然死体が動き出した? ……まさか魔物化したとでも言うのか!? この地は我等グリル教が定期的に浄化をしているうえ、結果にて外界の悪しき瘴気から護られているのたぞ!」


「しかし……!! そうです! 死体が動き出す前、教会敷地内に賊の侵入の報告がありました!」


「ならば元凶はそいつらであろう。教会から魔物が現れたなどグリル教の評判に関わる。すぐに聖騎士達を向かわせ、その者達を捕まえろ!」


 グロービルの低く響く怒鳴り声により、部下は慌てて部屋を出ていく。


 それを横目にバルコニーへと向かったグロービルは、眼下の闇の中に広がる悲鳴や爆発音の響く街の様子を忌々しげに見つめる。


「忌まわしき魔物共が……」


 その瞳は憎悪に満ち、見つめるだけで相手を殺してしまいそうな圧力があった。



 *****



 正門を抜け街へと出ると、そこは先程までと同じく地獄が広がっていた。


 徘徊する体が腐敗したゾンビ達。


 逃げ惑う住民。


 家の中にいてもゾンビ達はお構いなしに現れるようで、扉を開け逃げ出す住民とそれを追うゾンビも見受けられた。


 また先程までは真っ暗な夜空だったのに、どこかで火事になっているのだろう、遠くの方がほんのり赤く見通しが良くなっている。



 これは流石にやり過ぎなのでは、と思ったが、隣のミルカ様は良い笑顔でざまーみなさい、と言っているので指摘しないでおく。


 きっと捕まっていた間に受けたであろう拷問の仕返しなのだろう。


 とりあえず当初の予定通り、城門を目指そう。



 俺たちは城門へと続く大通りを駆ける。


 と言っても骸骨達が怪我人の兵士達を担いで走っているので、あまり早くは走れない。


「見つけたぞ!!」


 あまり速度を出して走っていなかったので、しばらく走っていると後ろから追っ手に追いつかれ、声をかけられる。


「賊が、よくも街をメチャクチャにしてくれたな!!」


 そう叫ぶのは金ピカの鎧に身を包み鍛え抜かれた体で金色の短髪が似合う男だった。


 またその男の後ろには銀に耀く鎧に身を包んだ同じく筋肉モリモリな男達も控えている。


「我が名はケルン! グリル教聖騎士隊副隊長のケルンだ! 我が聖剣のサビになりたくなければ、大人しく投降しろ!」


 聖騎士……確かグリル教の抱える精鋭部隊で、剣の技術も一流ながら、教会に属す事から回復魔法も使いこなす厄介な集団だ。


 俺たち魔物にとって回復魔法は毒のようなモノなので、出来れば関わりたくない相手だ。


 逃げようにも怪我人を抱えた骸骨達がいる以上、逃げ切らないだろう。

 ならばやるべき事は一つか。


『ここは俺が何とかする。お前達は先に行け』


 俺の念話に頷き走り出すコリア達。


「あっ、コラ待て! 逃げるな!」


 コリア達を追いかけようと聖騎士達が動き出したので、その前に立ちはだかる。


「くっ……まぁいい。先ずはこの大男を取り押さえるぞ!」


 ケルンの指示で俺を取り囲む聖騎士達。


「私も手助けするわぁ」


 そう言って横から現れたのはミルカだ。

 先程までの素の口調から、変身後の大人の色気漂う女性の喋り方に戻っている。


 皆と逃げずに、俺を心配してわざわざ残ってくれたのか……。


「コイツらには捕まっている時に散々痛ぶられたから、自分が何をしたのか思い知らせてあげないとねぇ」


 ……何て事はなく、ただの仕返しでした。


「ん? お前は捉えていた魔族!? 街を混乱の渦に落とし入れただけでなく、凶悪な魔族の脱獄を手助けまでしていたのか!! この人族の恥知らずが!!」


 どうやら俺の幻術のせいで、俺の事を人族だと勘違いしているようだ。


「あいにく、俺は人族ではない……」


 勘違いさせておくのもアレなので、幻術を解いて本来の姿を見せる。


「この通り魔物なのでな。人族の恥など知った事じゃないんだよ」


「なっ!? その姿は……まさか骸骨兵か!? と言う事は、こちらはフェイクで先程逃げた方が本命だな!! 小賢しい真似を!」


 おっと、今度は俺をただの骸骨兵だと思っているらしい。

 目の前で幻術を解いて話して見せたのに、バカなのかコイツは?


「ケルン副隊長、先程この骸骨兵自ら話し、幻術を解いていました。おそらくコイツは普通の骸骨兵ではないかと」


 すかさず一人眼鏡をかけ、周りよりもスッとした体のいかにも頭脳担当と言った感じの部下が隊長にフォローを入れる。


「おお、そうか! ならとっととその骸骨兵と脱獄犯を捉えるぞ!」


 単純である。

 こんなのが副隊長で大丈夫なのか?


 そう疑問に思ったのも束の間、ケルンが剣を鞘から抜き構えると、剣を頭上に掲げた。


「スキル発動! 『先導するもの』」


 そうケルンが大声で叫ぶと周りの聖騎士達が黄色く光るオーラのようなモノに包まれる。


 この反応は見覚えがある。

 確か勇者の仲間の僧侶ルナーレが、仲間のコクーンに対して使った身体能力を向上させる補助魔法だ。


 ルナーレが使った魔法は一人しか対象に出来ないが、どうやらこのスキルは自分も含めた複数人に対して発動出来るようだ。



 そして次の瞬間、ケルンは五メートル程の距離を一瞬で飛び越えると斬りかかってきた。


 クッ!? 危なく一撃入れられる所だった。


 なんとかすんでで躱したが、スキル発動後の疲労で動けないと思って油断をしていたとはいえ、この速度……見た目やバカな行動によらず、かなりの使い手のようだ。


 その後も振り抜いた剣を返し連続で斬りつけられる。


 その顔はかなりの汗を流し疲労が見え、やはりスキルの影響があったのだと安堵すると共に、それでも追撃してくるケルンの根性に関心した。


 そこへ周りの聖騎士達が加り連携して斬りかかってくる。


 その際代わりにケルンは後ろに下がり息を整えている。


 しかし、勇者や勇者の仲間のコクーンと比べればまだまだ遅く、油断さえしていなければ躱わすのは容易い。


 聖騎士達から次々と繰り出される斬撃を冷静に対処しつつ、隙あらば相手の鎧の隙間に確実に一撃を入れ1人ずつ沈める。


 今回は敵の肉体の内部にダメージがいくよう殴っているので、そう簡単には起き上がってこれないだろう。


 横を見るとミルカ様も危なげなく戦っており、それどころか倒した兵士に追い討ちで死なない程度の魔力弾を打ち込んでいる程だ。

 鬼畜である。


 これなら数分で何とかなるだろう。


 そう思ったその時、倒した筈の聖騎士達が淡く光ると何事もなかったように立ち上がりまた斬りかかってきた。


 そうだった、コイツらは回復魔法も一流の聖騎士だ。

 少しでも意識があれば、回復して何度でも立ち上がってくる厄介な相手だと聞いている。


 いや、聞いてはいたが、実際目の前で見るとまるでゾンビじゃねぇか!? 俺のスキルのせいもあるけど、敵も味方もゾンビばかりで、この街はゾンビフェスティバルでも開催してるんですか!?


 その間も倒した聖騎士が淡い光と共に復活してくる。

 しかも笑いながらだ。


 筋肉隆々なオッサン達を倒しても倒しても笑いながら復活してくる……何の罰ゲームだよ!?


 コラ! そこ! 起き上がりながら変なポージングすんな!


 ミルカ様はミルカ様で、笑いながら復活する聖騎士にこちらも満面の笑顔ですかさず魔力弾打ち込んでるし。


 違う意味で地獄絵図だよ!



 こんな厄介な奴ら相手にしなくちゃいけないなんて……こうなると武器を持ってこなかった事が悔やまれる。


 こんな時、魔剣クレットさえあればなぁ……。


 そう思ったその時、俺の視界の端に入っているおでこのツノに何やら赤く光る筋が入り伸びて来た。


 先程まで攻撃していた聖騎士達は、俺のその変化を警戒し一旦距離を置いて様子を見ている。


 このツノの模様には見覚えがあるな……。


 そう思った俺は、あたかもそれが当たり前のように頭のツノを右手で握りしめ、引っ張る。


 すると、何の抵抗も無くツノは引き抜かる。


 そしてその右手には、勇者によって砕かれる前の綺麗な姿の()()()()()()が握られていた。

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