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ボーンライフ  作者: ユキ
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王都潜入

 王都セリーヌ


 ヤマト王国の首都で、勇者ヤマトが建国した際、妻である第一夫人の名前から取って名付けられた、数十万にもなるこの国随一の人口を有する都市である。


 人族にとっての最重要都市だけあり、その守りは強力で、都市全体を結界が覆い、外からの転移が出来ないのは勿論、どんな強力な魔物や魔族でも一切通さない強力な術が施されている。


 この結界は、生まれ変わる前の魔王様でも破壊するのにかなりの時間と魔力が必要な程強固な結界で、例え勇者率いる王都の主力部隊がまだ魔族領に駐在していていない今でも、現状のこちらの戦力で正面から結界を破り、ミルカを救出するのは現実的ではなかった。


 唯一その効果が及ばないのは、東西南北の城壁に設置された門が開いている時だけなのだが、ここには軍や教会の精鋭部隊が配属され常に目を光らせているので、ミルカのような幻覚のエキスパートでもない限り、魔族が王都へ侵入する事は不可能である。



 そんな強固に護られたセリーヌの目と鼻の先。

 以前ジン達が隠れたらしい森に俺は潜んで、同行したメンバーと共に王都へ潜入する準備をしていた。


「では、準備が出来ましたらこの箱の中に入って下さい」


 そう荷車の上に置かれた箱を指し俺に指示するのは、使い古された魔法使いのローブと帽子を被った、冒険者に扮した事務官代表のコリアだ。


 普段の見た目から一見戦闘に向かなそうだが、実は魔法が得意でそこら辺の冒険者よりも出来る! と本人は自称していた。


 今回王都への潜入が決まり、同行者として真っ先に名乗りを上げたのが彼女である。


 実は、以前潜入した際に捕えられた同胞が、ミルカと同じ建物の牢に捕えられていると言う情報を得ていたようで、今回同行したのは、あわよくばその者たちを助けられたらと言う事らしい。


 魔法の話も本当か怪しい所だが、以前潜入した際の報告での彼女の悲痛な姿を知っているだけに断る事が出来ず、あくまでもミルカ救出が第一目標で、他の者は二の次でならと言う約束で同行を許可した。



「クリスさん、重いんでちゃっちゃと入って下さい」


 そして、そんな彼女や周りの人族が強く推薦した事で、本人は嫌そうにしていたが決まったもう一人は、元々の装備が冒険者と変わらない為、使い古さられた旅用のローブを着ているだけで、あまり見た目の変わらない、相変わらずやる気のない顔で俺が入る箱の蓋を持ち、俺が入るのを待っているジン・ウォレットだ。


 ローレン軍の大隊長であるジンは元々敬語をあまり得意としていなかったが、王都までの旅で俺に慣れたからか、更に砕けた喋り方になっている。


 何だが俺ってトップなのに、ロザンヌさん達といい、扱いが雑な気がするんだけど……。


 まぁ、トップの扱いなんて慣れてない俺からしたら、こちらの方が話しやすくて助かるんだが……悲しくなってるのは、何でだろう。



 そんな事を思いながら、俺は開かれた箱の中へと入る。


 中へ入った俺は、体に巡らせている魔力をカットする。

 すると体を維持する事が出来なくなり、そのまま箱の中にバラバラに崩れ落ちる俺の体の骨達。


 完全にバラバラになったのを確認したジンは箱の蓋を閉めた事で、箱の中に暗闇が訪れた。



 *****



 クリスさんが箱の中に入り、蓋を閉めた俺は荷車の持ち手を持つ。


「じゃぁ、行きましょうか」


 出発の合図と共に歩き出すコリアの後を追い、荷車を引っ張る俺。


 荷物は荷台の箱とその中に入ったクリスさんの骨と旅の荷物だけなので意外と軽い。

 けど、門まで遠いので、出来れば手伝って欲しいなぁ……なんて思ったりもする。


 そんな俺の思いもコリアには伝わらず、そのまま街道に出ると門へ向け歩き出し、1時間程歩いて辿り着いた門の前で、入場の為の検問に並ぶ列の最後尾に並んだ。


 今の時間は夕方という事もあり、魔物の討伐から帰って来た冒険者が多く並んでいて、冒険者に扮した俺たちはその中に違和感なく馴染めた。


「次の者、前へ」


 そのまましばらくすると俺たちの検問の番になり、門の前で待機している兵士に呼ばれた為、荷車を引き兵士達の前へと向かう。


「冒険者か、まずは冒険者カードの提示と、依頼帰りなら依頼書の提示を、他の街から来たのならこの街に来た目的を言いなさい」


 担当の兵士に指示され、コリアと俺はあらかじめ今回の為に準備しておいた偽造冒険者カードを提示した。


 前回もその時準備してもらった偽造カードを使用したが、ロザンヌ様達が作ってくれたこの偽造冒険者カードは、かなり精巧な物なのでバレる事はないだろう。


「セリーヌに来た目的は拠点をこちらに移そうと思い、パーティーで移って来ました」


「ふむ、冒険者カードに問題はないな。それでそちらの荷物は?」


「これは……その……」


「何だ、言い淀んで。……やましい物でも入っているのか?」


 俺の言葉に怪しみ出す兵士。

 直ぐに弁解の為言葉を続ける。


「そ、そんな事はございません……ただ、あまり見せる様なものじゃないと言うか……」


「怪しいな。おい、箱の中を改めろ」


 弁解は上手くいかず、箱を怪しんだ兵士の指示で後ろに控えていた他の兵士二人が荷台に上がり、箱の蓋を開けた。


「ぅわぁ!?」


 すると箱の中を見た兵士が悲鳴を上げる。

 ここで箱の中身が骸骨兵だとバレた場合、途端に周りの兵士達に捕えられ捕まってしまうだろう。


「何だ! どうした?」


「あっ、すいません。箱の中身は人の骨でした」


 どうやらその心配は無用だったようだ。

 そりゃ骸骨兵がバラバラの状態で大人しく箱の中に収まっていたら普通の骸骨と見分けるなんて不可能だろう。


 ただ心配な事もある。

 クリスの頭に生えているツノだ。


「骸骨? おい、どう言う事だ」


「……はい、実は、この街に来る途中でゴブリンソルジャーとヘルスライムに遭遇しまして……ゴブリンソルジャーのナイフが仲間の一人の頭部に刺さり、やられてしまったのです。……しかも運の悪い事にその後ヘルスライムに捕まり、骨以外全て溶かされ食べられてしまいまして……ゴブリンソルジャーとヘルスライムは何とか我々で倒せましたが、溶かされてしまったので、残ったのは骨だけで……せめてこの街の教会で骨だけでも埋蔵出来ればと、箱に拾い集めて持って来た次第です」


 そこにすかさずコリアが涙ながらに悲しむそぶりを見せながら説明をする。

 それは迫真の演技で、演技だとわかっている俺でさえ悲しくなってきた。


  そしてそれとなくツノをナイフと誤魔化すフォローも入っている。


 その言葉で箱の中身を確認していた兵士も納得したような表情になり箱を閉める。


「そうだったか……それは残念だったな。丁重に埋蔵してやれ。他に問題もないようだし行っていいぞ」


「ありがとう……ございます」


 目尻に涙を溜め、影のある笑顔で感謝を言うコリア。


 マジで、これが演技かよ……。


 そうしてコリアの名演技も手伝い、心配されたツノの事もツッコませる事も無く、王都へと潜入する事に成功した俺たちは、拠点の宿を取る為に宿屋を探しに行く事にした。


 それと共に、女性の涙は今後絶対信じないと俺は固く誓うのだった。


 *****



 俺達は無事王都へ潜入する事に成功した。


 この作戦を立案したのはリン様で、普通の魔族では潜入は難しいが、骸骨兵であるクリス君ならバラバラになれば普通の骸骨と見分けがつかないのでいけるだろうとの事だった。


 ただ、以前身体強化の練習で失敗した際、魔力の供給を止めるとその部位の制御が出来なくなりバラバラになると言う事を知っていたから良かったけど、いくら骸骨兵で痛みを感じないからって、作戦の為に物理的にバラバラにしようと言うのはやめて欲しい。


 痛みは無くとも、心が痛むからね。


 そして、この作戦の同行者は怪しまれない人族が良いと言う事で、ローレン側に打診した結果この二人が協力してくれる事になった。


 ただ、この二人も以前の潜入で顔が割れていて、普通なら難しかっただろうが、今は魔王様を倒したと言う事で、人族側は連日お祭り騒ぎとなり人の出入りも多く、多くの兵士や教会の人員が未だ魔王領から帰って来ていないことで人手不足だった為、警備も緩くなっていて問題ないだろうと言う事で同行する事が出来たのだ。



 そして宿を取ったジン達によって俺の入った箱は部屋へと運ばれ、ようやく箱の蓋が開放された。


 俺は今まで切っていた魔力を周りの骨に纏わせるイメージをする。

 すると骨達は次々と組み上がり、元の俺の体へと戻って行った。


 そして体が元通りに戻った俺は箱から抜け出し、目の前で待っていてくれたジン達に声をかける。


「王都への潜入ご苦労。この後は計画通り夜を待ってミルカ達が幽閉されている教会地下へと向かう。それまで各自準備を怠らないように」


「「はい」」


 俺の言葉に返事をしたジンとコリアは、各々自分の武器や道具を確認し始める。


 俺はと言うと、教会へ潜入を行うにあたりやらなきゃいけない事が一つある。


 なので心の中である呪文を唱える。


 『イリュージョン』


 すると俺は光に包まれると、光が止んだ時には俺の見た目は坊主頭が特徴の大男に変身していた。

 ちなみに服も冒険者風にしてちゃんと着ています。


 この魔法は幻覚で自分の姿を変える魔法だ。


 夜とは言え数十万人が住む王都で骸骨のまま通りを歩けば、騒ぎになるに決まっている。

 それでは潜入の意味がないので、以前グラスの魔道書で習ったこの魔法を使う事にした。


 グラスの魔導書なので、注釈でこれで好きなあの子のあんな姿やこんな姿も再現出来るね、なんて書いてあったが、グラスが亡くなった今ではそんなバカな事すらグラスを思い出し懐かしく思えてくる。


 ちなみに王都への潜入で使わなかったのは、俺程度の魔法では門に在中している王宮魔導士が発動している魔法で見破られてしまう為だ。


 しかし、潜入してしまえばその様な魔法を使っている事など皆無なので、そんな心配もせずに堂々と街中を歩ける。



 これがあれば魔王軍をやめ、偽りとは言え、人としての平和な生活を送れると思った事もあったが、今の俺にはルカを守ると心に誓っている。


 だから今回の救出任務は絶対に成功してみせる!



 さて、見た目も変装して、気合いも入れて、俺の準備は終わった。


 早々に準備を終えたが、外はまだ夕焼けの空で夜になるまでには時間がかかり、コリア達もまだ入念な準備をしている。


 あれ……やる事なくね?


 だって俺の武器である魔剣クレットは勇者との戦いで殴り壊され、いつの間にか無くなってしまったので持っておらず、魔法で変装してはいるが、実際は装備どころか服すら着ていないので、装備の確認もクソもないからだ。


 さて……夜までの時間、何しよう……。


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