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ボーンライフ  作者: ユキ
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ベビードラゴン

「お久しぶりです、クリスさん」


「リン様!? 生きていらしたんですね!」


 突然の訪問者、白い仮面で顔を隠し、黒いマントを頭まで被った、ゴブリンに転生した元魔王軍参謀のリン様は、勇者達が魔王城へ進軍した際、魔王城に居た筈なので、魔王様が討たれたのにこうして生きていたので思わずそう聞いてしまった。


 聞いてからしまったと思ったが、時すでに遅く、雰囲気が暗いモノに代わり、自分が生き残った理由を話してくれた。


「……はい、ルカレット様とグラス様が倒されたとの報告を受けた魔王様は、勇者に勝つ事は無理だと判断し、勇者達が攻めてくる前に我々部下達を全て逃して一人魔王城に残ったのです」


「それは……」


 まさか自らの命を囮に部下達を守ったなんて……流石魔王様だ。


 流石に魔王城に到着したその日に落とされたのでおかしいと思っていたが、魔王様の所まで間抜けの殻で、何の抵抗も受けず侵入出来たのならそれも頷ける。


 そこで来客なのにいつまでも扉の前で話をしている事に気がつく。


「立ち話もアレですので中へどうぞ」


「それじゃ、私はここら辺で仕事に戻るよ」


「これはこれは、ロザンヌさん、ここまで案内して頂きありがとうございました」


「良いってことよ。それじゃクリスもまたね」


 そういって去って行くロザンヌさんを見送り、待たせていたリン様を家の中へと案内する。


 よく見るとリン様はリュックを背負っており、どうやらこの街へついて直ぐにこの家に来たのだとわかった。


 歩いて来たのならそれなりの長旅で疲れているだろうから、ダイニングテーブルへと案内したあと、少しでも疲れを癒せればと紅茶と美味しいと評判のお菓子を準備する事にした。


 その間部屋を見回したリン様は少し驚いているように感じたが、このファンシーな部屋は俺の趣味ではないですからね。


 ただ、ルカが自分の本当の趣味を周りに言わないようにしていたので、ルカの為にその誤解は受け止めよう。



 あっ、ルカが部屋着のままだった……。



 幸いリン様の位置からはベットに寝ているルカを見る事は出来ないので、俺は準備したお茶とお茶菓子を持って、それとなく天蓋のカーテンを閉めたあと着席した。


 ……おそらくバレて無いと思うが……バレてたらごめん、ルカ。



 するとそんな俺の行動に気付いていないのか、リン様が仮面を外し、フードを下ろした。


 そこには緑色の肌に尖った耳、伸びた鼻と顔中イボだらけのゴブリンの顔がある。


 前回は気付かなかったが、よく見ると頭の上が小さな王冠の形に盛り上がっている。

 そう言えば本人がゴブリンキングに進化したと言っていた事を思い出し、その特徴的な頭部が種族名の由来なのだと納得した。


 素顔を露わにしたあと、こちらを確認してから話し始めるリン様。


「まず私がここに来た理由から話させて頂きま「それは私から話そう」」


 ん!? 誰かの声がしたが、誰だ? この部屋には俺とルカとロザンヌさんとリン様しかいない筈だが……。


 俺がキョロキョロと周りを確認していると、リン様がおもむろに背負っていたリュックを机の上に置きチャックを開けた。


 すると開いたリュックの中から黒い肌に金の瞳、小さな翼が背中に生えたお腹のぷっくりした可愛らしいドラゴンの赤ちゃん、ベビードラゴンが出て来たではないか。


 そのベビードラゴンは背中の小さな翼をパタつかせるとゆっくりと浮かび、机から空いている椅子に移ると顔だけが出た状態でこちらを向いた。


 そのフォルムやたどたどしい動き、そして机からちょこんと出た顔があまりにも可愛く、思わず抱きしめたくなる衝動にかられるが、そのベビードラゴンがおもむろに口を開き、言葉を発した事でその欲求は止まることになる。


「久しぶりだな、骸骨兵君」


 ……あれ、この威厳のある喋り方、聞き覚えがある。

 しかし、そんな筈は……


「この見た目だとわからないかな……私だよ、魔王ドラミュートだ」


 俺は衝撃で固まる。


 だって魔王様の名前を初めて知ったから……じゃなくて。


「魔王様!? 本当に魔王様ですか!? 勇者と戦い、討たれたと聞いておりましたが、そのお姿は一体!?」


「ふむ、その通りだ。確かに私は勇者に討たれた。そして死んだ体は卵に戻り、新たな龍人としてこうして生まれ変わったのだ」


 マジか!? てっきり自らを犠牲に部下を守り勇者にやられて死んだものと思っていたが、蘇る術を持っていたとは……てか、さっきのリン様の暗い雰囲気は何だったんだよ! 完全に亡くなったもんだと思ってたよ! ややこしい!


「私が魔王様のお力になれないどころか足手纏いだったが為に、その様なお姿になられてしまい、誠に申し訳ありませんでした!!」


 突然椅子から降りると魔王様に向かい土下座するリン様。


 先程の暗い雰囲気は魔王様をこんな姿にしてしまった原因が自分にあると自らを責めていたからだったようだ。


 それにしてもややこしいだろ……。


「よいよい、何度も言っているがリンのせいではないから気にするな。あの剣を持った勇者とまともにやって勝てる者など賢者サイトウくらいだろう」


「はぁ……しかし 「しつこい! あくまでもこの姿になったのは私の力不足が原因だ! それ以上は私を侮辱するものと受け止めるぞ!」 そ、そんな! 滅相もございません! ……わかりました。この件はこれ以上私の方から申すのはやめます」


 リンの言葉に満足そうに頷く魔王様。


 その姿も可愛いと思ったのはここだけの話だ。



「さて、話がそれてしまってすまなかったな。そろそろ本題に……ん? クリス君、どうしたのだね?」


「えっ? 顔に出てましたか?」


 ……ん? 骸骨なのに顔に出るのか?


「いやいや、骸骨兵君の顔は何も変わって無いよ。ただ、上の立場になると下の者は怖がって中々意見を言えなくなるのでな、なるべく部下の雰囲気などで察する様に気を付けていたら自然とわかる様になっていたのだよ」


 何その特殊技能!?

 アナタは上司の鏡ですか!


 こんな有能な上司をこんな姿にして、魔王軍解散の原因を作った勇者、許すまじ!



 まぁ、それはおいといて、せっかくどうしたのか聞いてくれているので一つ疑問に思った事を聞いてみる。


「龍人なのに、産まれた時はベビードラゴンの姿なんですか?」


「ふむ、それは私も疑問に思っていたが、何しろ生まれ変わるのは私も初めてだからな……もしかしたら生まれ変わった事で体のバランスが変わり、ドラゴン寄りの体になってしまったのかもしれん」


「それは……成長したら本物のドラゴンのようになると言う事でしょうか?」


 ヤバい……ちょっと見てみたい。

 ただでさえその態度や口調で渋くカッコいい印象だったのに、そのうえドラゴンとか反則でしょ。


「そんな期待に満ちた視線を向けられてもな……それにどんな姿になっても己が姿を受け入れ、あるがまま過ごすだけだよ」


 やっぱりこの人カッコいい!!


 一生着いていきます!!


 俺の気持ちを察しているのか苦笑いを浮かべる魔王様。



「それじゃそろそろ本題に入っていいかね」


 俺が頷くのを確認し、気を取り直したのか真面目な顔になり、小さな腕を組みながら続きを話しだす魔王様……その愛らしさはプライスレス。


「この様にか弱い幼体に生まれ変わった私は、それまでの全ての力を失い、また一から力を付けねばならなくなってしまった。しかし、私が以前のような力をつけるまでには早くとも数十年から、普通なら数百年はかかるであろう。例えこれまでの実績があったとしてもそんな弱い私では魔族達の殆どの者が私の言う事を聞く事がないであろう」


 前にルカが言っていたな。

 ルカや魔王様と違い、殆どの魔族の間では本来の意味の弱者を強者が虐げる弱肉強食の考えが主流だって。


 それなら今の愛玩動物のような見た目と強さの魔王様の言う事を聞く者など殆どいないと言う魔王様の言う事は正しいのだろう。


「私が力を失った今、混乱した魔族を纏める為には新たに皆が言う事を聞く様な強い魔王を立てねばならぬ……本来なら私と同等の力を持つグラスにやってもらえれば良かったのだが……そのグラスが勇者に討たれてしまった今、次に力のある四天王で唯一残ったルカレットにやってもらえればと思いここまで来たのだが……」


「そうでしたか……ですが、残念ながらルカレット様は未だ目覚める気配がありませんので難しいかと……」


「ふむ、世の中思う様には行かぬものだな……少しルカレットの状態を確認しても良いかな?」


「はい、そちらのベットで眠っています」


 俺の言葉にリン様が立ち上がると魔王様をそっと抱き上げた。


 ……少し羨ましいです。


 俺はそんな二人を横目にルカのベットへと案内し、ベットのカーテンを開けた。


 ベットの上には未だ眠りにつくルカ……しまった!? 部屋着のままだった!


 横の魔王様とリン様の様子を伺うと、魔王様は特に反応を示さずそのままベットへと飛び降りたが、リン様は驚愕の表情をしていた。


 魔王様は小さい頃からルカを知っているから驚かないのか。

 でもリン様は……。


 魔王様との話の時、それまで砕けた話し方になっていたルカなのに、リン様が来た途端固い喋り方に戻ってたもんなぁ……そりゃ四天王ルカレットのイメージとこの部屋着とのギャップじゃ驚くのもしょうがない。


 そしてルカ……ごめん。



 そんなリン様を他所に、ルカの枕元までヨチヨチ歩いて行った魔王様は、顔をグイッと近付けじっくりルカの全身を見ながら観察をしている。


「ふむ、やはり体の方は何の異常も無いな。……これはやはりあの方法しか直ぐに目覚めされる事は出来ないだろう」


「何か治す手立てをご存知なんですか!?」


 俺は魔王様の言葉に思わず食い気味に詰め寄ってしまった。


 しかし、そんな無礼も気にせず魔王様は俺の質問に答えてくれた。


「ふむ、だが、それを行うには準備がちと難しくてな……命の危険も伴うぞ?」


「そんなの構いません! ですからその方法を教えて下さい!!」


「わかったわかった……ならば、まずは質問だが、ミルカの事は覚えているか?」


「はい! サキュンバス族で四天王を勤めておられた女性ですよね」


 ミルカ様は王国に潜入し賢者の石や豊作のクワの調査を行なっていたけど、召喚された勇者に見つかりやられ、捉えられたとコリア達から報告があった。


「そうだ。そしてミルカ達サキュンバス族は幻覚を得意とする種族だが、幻覚だけでなく、人の夢に入る特殊な魔法を操る事も出来る。その力を使えばルカレットの夢に入り、直接ルカレットの精神を呼び覚ます事で目覚めさせる事が出来るであろう」


「本当ですか!? それならば魔族領内のサキュンバス族を探せば良いんですね!」


「それが、そう簡単にはいかんのだ。ルカレット程の実力者になると精神耐性も強く、ただのサキュンバス程度では魔法は弾かれてしまい、ルカレットの夢へ入る事はかなわん。それこそサキュンバス族の歴史の中でも最強とうたわれ、ルカレットと同じく四天王を勤める程の実力者であるミルカでもないとな」


「それって……」


「ふむ、ルカレットを目覚めさせるには、王国に潜入し、捕えられたミルカを助ける必要があると言う事だ」

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