表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーンライフ  作者: ユキ
19/196

解放

 そんなバカな……そんな筈ない……ルカレットと友達になろうと思ったのは俺の意思で、決して命令された訳じゃ……。


 本当にそうだろうか?


 その時頭の中の冷静な俺が認めたくない俺に問いかけてきた。


 相手は四天王で俺は骸骨兵だぞ? 使う者と使われる者だ。

 現に最初の戦場では何の説明もなく、突然道具のように戦場に放り込まれたじゃないか。

 そんなヤツといきなり友達になりたいと思うか?


 ……それは。


 反論を考えようとするとが、混乱する頭では上手く考えがまとまらない


 それに、よく考えてもみろ。

 会って間のない友達に対して、友達だからとか、守りたいとかで命張って戦闘したり、自分をひたすら追い込み強くなろうと訓練するか?


 ッ……確かに、そうだ。


 よく考えると思い当たる節はあった。

 異常なまでにルカの友達であろうとしていたの

がそうだ。


 そうさ、お前はルカに命令され、友達をさせられていた道化なんだよ。


「ぁ……ぁぁ……」


「ごめんね、クリス。辛いよね……今解放してあげるからね。……でもね、例え命令でお友達になってくれたのだとしても、クリスとお友達として居られた時間は、とっても幸せだったよ」


 涙ながらに話すルカ。

 しかし、今の俺にはその言葉を聞く余裕がなく、ただの音としてしか認識されなかった。


 そして意を決した表情になるルカ。


『骸骨兵クリス十六世よ。契約者ルカレット・エレンシアが命じる。これまでの全ての命令を破棄し、以降は骸骨兵クリス十六世、自らを主とし行動する事を命じる』


 ルカが何かを言った瞬間、それまで疑問にも思わなかった事や思い、感情が、ダムが決壊したように一気に心の中に溢れてくる。


 人を初めて斬った時の感触


 俺の手で命が消えようとしているその光景


 特に戦場での事がより深く、心の底へと突き刺さり、俺の精神を襲った。


 俺はその罪悪感と情報の多さにより頭が割れそうになり、この体で初めて意識を手放した。


 その際何かをルカが言っていたか、聞き取る余裕もなく



  *****



 ユサユサ


 誰かに起こされようとしてゆさぶられている。


 でもせっかく久しぶりの睡眠なんだからもう少し寝かせて欲しい。


 ユサユサユサユサ


 あと10分、いや5分だけで良いから、この気持ち良いまどろみを満喫させて。



 ユサユサユサユサユサユサユサユサ、ゲシッ!!


 だぁ!! わかった起きます、起きますよ!! てか今蹴ったろ!!


 そして半端キレ気味な気持ちで目を開けると……目の前には化け物が居た。



「うわぁ!?」


 思わず驚き声が出ると共に後ろへ後退りする。


「やっと起きたか、寝坊助な骸骨兵だねぇ」


 そこには化け物改めてルカの部下の魔術師達が居た。


 そして俺を起こしてくれたのは先程自分が打った魔法を跳ね返され直撃した筈のロザンヌさんだった。


 俺がお化けでも見るような目でロザンヌを直視していると急に頬を染めクネクネしだした。


「ヤダね、そんなに見つめて。私に恋、しちゃったのかい?」


 いや、正直気持ち悪さで吐きそうです。


 でもそんな気持ちを察してくれる事もなく更にクネクネするロザンヌさん。


「もう、骸骨なのにしょうがない子だね。でも、恋は抑えられるものじゃないから、しょうがないよ」


 そう言ってウィンクしてくるロザンヌさん。

 これ以上聞かされると俺の精神が削られて行くので疑問に思ってた事を聞いて話題を変えることにした。


「魔法の直撃を受けてましたが大丈夫でしたか?」


「あらまぁ、見てたのかい。恥ずかしいわねぇ。心配しなくても自分が打った魔法位、打ち消すなんて他愛もないよ」


 そう言ってなんて事ないように笑うロザンヌさん。

 例えそうだとしても着弾した場所一帯吹っ飛んで盛大に爆発するような威力の魔法だった筈だ。


 やはりこの人達は化け物である。



 そんな事を考えてる時にある事に気付く。


 俺は普通にこの人達と話しているのだ。


 ルカの部下でも俺が意思のある骸骨兵だと知っているのはグラス様だけな筈。


 なのに驚きもせず普通に話すどころか、先程この人は俺を揺すり起こした。


 骸骨兵が倒れていたら普通機能停止したのだと思い、わざわざ揺すり起こしたりしない筈だ。


「あの……どうして俺が話しても驚かないんですか?」


 俺の言葉に不思議そうな顔で答えるロザンヌさん。


「どうしても何も、グラス殿から意思があるって聞いていたからね」


 なんて事ない感じで暴露するロザンヌさん。

 周りの魔術師達もうんうん頷いている事からみんな知っているようだ。


 あの真態エルフめッ!!


 俺の目の前には軽い感じで、テヘッとか言いながら舌を出して頭を小突いているグラスが容易に想像できた。


「そんな事より、もう既にルカレット様から避難指示が出てるんだから、起きたなら早く空間転移の扉を通って避難するよ」


 急に急かすロザンヌさん。

 でもそんな事だなんて……結構真剣に悩んでた事だがら、俺、傷付いちゃうよ。


 そんな傷付いた俺など気にも止めず、周りの魔術師達も早よせいと言っている。


 そこで周りを確認した事で再び疑問が浮かぶ。


「ルカは……指示を出したルカレット様本人はどうしたんですか?」


 俺の言葉に先程までザワザワしていたのに急に黙り込む魔術師達。


 するとロザンヌさんが代表してその疑問に答えてくれた。


「ルカレット様は、一人で勇者と戦う為、ダンジョンに行かれた」


「なっ!? それなら早く助けに行かなくちゃ!!」


 ロザンヌさんの言葉に驚きすぐにルカの元へ向かおうと立ち上がった俺の目の前に立ち塞がる他の魔術師達。



「助けに行ってどうする? お前の強さじゃ足手纏いになるだけじゃぞ?」


 くっ! 確かにそうだ。

 俺レベルでは人外の人達の戦いでは何の役にも立たないだろう。


「それに、ここへ来た時にルカレット様から聞いたが、お主の命令は破棄されたんじゃろう? ならわざわざ危険を犯してまで主人でもないルカレット様を助ける義理はないじゃろう?」


 確かにそうだ。


 しばらく眠りについた事で大分頭もスッキリしてこれまでの事を考えられるようになったが、やはりルカと友達になろうと思ったのは命令によるところが大きかったと思う。



 でも……。


「それに、ワシらはルカレット様にお主を無事に避難されるようにとお願いされているんじゃ。だがら大人しく着いてきなさい」


 やっぱり。



 いつだってそうだ。



 いつだってルカは自分の事より俺の事や周りの事を考える優しい子だったじゃないか。



 最初に俺が友と言ったのも、そのルカの優しさとここの綺麗さに胸を打たれたからだ。



 何より、俺の中にはルカとの楽しかった日々がまだ鮮明に残っている。



 そんな日々を取り戻す為にも……再びルカと友達になる為にも、俺はルカの元へ行かなくちゃ!!


「それでも、例え足手纏いだとしても、俺はルカの元へ行きたい! だって俺は、ルカの……友達、だがら!!」



「良く言ったね。流石僕の師匠だ!」


 その時空間転移の扉から一人の人物が入ってきて俺に声をかけた。




 その人物は淡い水色のローブに金色の長髪をなびかせ、尖った耳が特徴の超絶美青年、真態こと、エルフ姿のグラスだ。


「これはグラス殿、やっとお戻りになられたのですな」


「みんな、待たせてごめんね。急に転移陣が使えなくなったから焦ったよぉ〜。しょうがないから距離的に近いこの空間転移の扉まで飛んで来たんだ。いやぁ〜、しかし、空間転移の扉がまだ起動してて良かったよぉ」


 相変わらずの軽い口調にそれまでのシリアスな空気がぶち壊しだ。


「ところでさっきの話聞かせてもらったけど……師匠はルカの為に、命をかける事が出来るのかな?」


 と思ったら、急に真剣な表情で命をかけられるかを聞いてくる。

 そのギャップに妙な圧力も加わり、思わず飲み込まれそうになる。


 でも、そんな事で俺の覚悟は揺らぐわけがない!


「もちろんです!」


 俺の言葉に満足したのか何度も頷くグラス。


「よし、わかった! それなら師匠は僕が責任を持って面倒を見るから、みんなは先に避難してて」


 グラスの言葉にざわつく魔術師達。


「しかし、それではルカレット様の意に背く事になってしまいます」


 魔術師達を代表してロザンヌさんがグラスに反論する。


「大丈夫大丈夫。だってルカは師匠の無事を確保したいんだろ? なら僕が居れば万事解決だよ! それとも何? ……みんなは僕の強さを信じられないの?」


 グラスの言葉に一気に静まり返る。

 再びの圧だ。


 流石化け物達の副官を務めるだけあって、普段のチャラチャラした印象と違い、こんな時の有無を言わさないと言う圧は半端ない。


「わかったらならみんなは早く避難してねぇ」


 すぐにその圧が消え、軽い感じで手を振り避難するよう促すが、今回は誰もそれに反論する者はおらず、大人しく空間転移の扉を潜り避難していった。



「さて、それじゃ、早いとこルカの所へ向かおうか!」


 その言葉に頷き、俺たちはルカと勇者がいるであろう白髭危機一髪へと向かうのだった。



  *****



 ダンジョン白髭危機一髪は四階層からなるダンジョンで、その内部は一階層だけでもローレンの街がすっぽり収まるほど広大だ。


 内部は階層毎にさまざまな環境になっていて、一階層はアマゾンのように深い森が広がり、二階層目は全面吹雪舞う銀世界、三階層目は辺り一面砂だけの砂漠だか、昼間は四十度を超える猛暑で夜は一桁まで下がる過酷な環境が広がっている。


 だが、このダンジョンは賢者によって後世育成の為に造られた人造ダンジョンだ。


 最初の一階層から三階層まではその過酷な環境化で挑戦者が如何に環境に適応し、更に途中現れる魔物に対応出来るかを試し育てる場所だとするのなら、最後の四階層目は目的が違う。


 岩肌で囲まれた全長一kmはある正方形の空間で、本来ならそこにはドラゴンが一頭鎮座し、挑戦者の純粋な強さが試され、ここで負けるような者は外では使い物にならないと一種の線引きの為の場となっていたのだ。


 まぁ、ドラゴンと言っても実際よりかなり力を弱くして作り出された個体らしいが。


 しかし、今は制覇したグラスの手によりドラゴンどこらかダンジョン内の全ての魔物の生成は止められ、ただの何もない広いだけの空間になっていた。


 また、本来なら全ての階層を進み最下層まで向かうには広大な広さの階層を探索し次の階層を繋ぐ階段を探しださなくてはいけないのでかなりの日数がかかるのだが、今はダンジョンを制覇したグラスの手により階層を繋ぐ階段が前の階層の出口の横に移動させられているので難なく最下層まで移動が出来る。



 最下層までの道のり、敵の人族と何十人も鉢合わせしたが、その事如くをグラスが一刀のもとに打ち倒している。


 中には最初に大声で宣戦布告してきた赤い鎧と大声が特徴のバルューミーだかバリウムだが言うのもいたが、そいつもこちらを見つけ何かを言おうとした所で周りの数十人の近衛兵と共に一刀で両断された。


 あの大声を間近で聞かずに済んでグラスに感謝だ。


 そうして何なく最下層まで降りた俺たちは、広く何もない筈のその空間で、ある光景を目撃する。



 それは無数に散らばった沢山の骸骨兵達の残骸と


 勇者の手により首を持ち上げられ宙吊りになった、全身ボロボロの状態のルカだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ