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ボーンライフ  作者: ユキ
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魔物と魔族

「……と言うのが、私の生い立ちと魔王様との出会いになります。ちなみに目を醒めてから知ったのですが、姉の双子の子供はどちらも生きていたそうです。姉が身をていして庇ったお陰で傷が浅く処置が間に合ったと魔王様が言っていました……母親とは偉大ですね」


 悲しさと嬉しさの混ざったような表情で喋るリン様


「辛い経験を……されたのだな」


 そう言うルカは涙声で、見ると手で顔を隠しているが号泣しているようだ。


 正直俺も骸骨じゃなかったら泣いてたと思う。

 ご家族やお仲間の方々は残念だが、お子さんと姪っ子さん、甥っ子さんが生きててくれて本当に良かったと思う。


 口調が固くなっているのはリン様がいるからだろう。


「私の家族や仲間の為に泣いて頂き、ありがとうございます。でも辛い思いをしているのは私だけではありません。魔物だからと言う理由で何もしてないのに殺されてしまうのが今の魔物達の現状なのです」


 確かに、骸骨兵の体だがら魔物の気持ちになれるが、もし人間としてこの世界で生まれたのなら、魔物は理由もなしに恐れていただろうし、下手をしたら殺す側だったかも知らない。


「皆さんは魔物とはどう言った存在だと思いますか? そして魔族との違いは何だと思いますか?」


 魔物とは? ゲームとかだと人間を襲う敵や害悪として登場するが、この世界でもローレンの街の人の話を聞く限り同じような感じだ。


「文献には魔物は魔素が穢れ瘴気となったものに触れた生物や物質が変異し凶暴化した個体だと書かれていた。なので我ら魔族も魔物を見つけた場合は排除するべきと教えられてきた。しかし、人工的に作られた魔物は純粋な魔素を使っている為凶暴性はなく、リン様の村の方々は話を聞く限り凶暴性が無いようなのでおそらく昔魔王軍が人工的に作った魔物の子孫であろう。ただ、魔族との違いと言われても……魔族と魔物は全く別の生き物だがら、全てが違うとしか……」


「そうですね。魔物が産まれる原因はそれであっています。しかし、瘴気で変異した魔物が全て凶暴化する訳ではありません。私の村も人工的に作られたゴブリンの子孫ではなく、瘴気により変異したゴブリンが作った村なのです」


「そう、なのか? それは私も初めて知った」


 ルカの返答によると自然に発生した魔物は全て凶暴化していると言うのが一般的な考えのようだが、リン様の話だとどうやら全てではないようだ。


「一概には言えませんが、瘴気は負の塊ですから知能の低いもの程その影響を受けやすく、元から知能のない物質や植物、そして知能の低い虫や動物から変異した者は負の感情に支配され凶暴化しやすいのです。しかし、動物でも知能の比較的高い個体から変異した魔物は意思を持ち、凶暴化しない個体も少数ですが存在します。そして、魔物と魔族の違いですが……それは変異する前の元となったものが人間か、そうでないかの違いだけです」


「なっ!? バカな! なら魔族は魔物と同じく瘴気により人間から変異したと言う事か!?」


「その通りです」


 そうだったのか。

 たいして知識のない俺でさえ驚いているのに、魔族として育ったルカの驚きはその比ではないだろう。



「詳しい事は実際に見てきた私が説明しよう」


 そう言うと魔王様自ら説明をしてくれた。


「千年以上前、この星では人々が争い今では考えられない程の規模で戦争が行われていた。その戦争で自然は破壊され、星は大きなダメージを受け、やがて終わらない戦いに人々は疲弊し、人口もピーク時の十分の一以下になってしまった頃、突然魔物が現れたのだ。きっと戦争で破壊された環境が原因でそれまでなかった瘴気が生まれたのだろう」


 元の世界でも温暖化で氷が溶け、大昔の病気が復活するのではと言われていたし、ウイルスが変異し世界的に流行したりもしていた。

 きっとこの世界でも似たような事が起きたのだろう。


「魔物は生き物だけでなく植物や石などの物質に至るまでありとあらゆるものが瘴気により変異し、それは人間も同じだった。しかし、他のものから変異した魔物と人間とでは明らかな違いがあった。他のものから変異した魔物は殆どの魔物が凶暴化し人々を襲ったが、人間から変異した魔物、今で言う魔族は意思はそのままで多少攻撃的にはなったが、凶暴化する事がなかったのだ。しかし、そんな事は普通の人間には関係ない。他の魔物と同じくいつ凶暴化するかわからない人々が自分達と一緒に住んでいるなんて怖くて許容出来ない者達が殆どで、我ら変異した者達を迫害し、当時残っていた数少ない人の住める安全地帯から追い出したのだ」


「人の住める安全地帯から追い出しては変異した人達が危ないのではないか?」


「そうだね。当時の世界は殆どが荒廃しとても生き物が住める状態ではなかった。例え変異し、普通の人より強い肉体を手に入れた我らとてずっと住むには厳しい場所だった。更に凶暴化した魔物も当然いる環境だ、そんな場所に放り出された我らは弱い者から次々と死んでいったのだ。……そんな時、神様があの方を遣わしてくれた」


「あの方?」


「最初の勇者にして、ギフト【豊作のクワ】の持ち主スズキ タクヤ(鈴木 拓也)様だ」


 ここにきて神様に勇者か。


 そして先程の会議に出てきた豊作のクワとは勇者の持ち物だったのね。ルカに聞く手間が省けた。


「我々の前に降臨されたスズキ様は、豊作のクワで荒廃した大地を耕すと、それまで草木一本生えなかった大事に草花が生え、命を吹き返らせた。それだけではない、瘴気に満ちた空気は澄み、スズキ様の意思一つで綺麗な水まで沸いてきた。正に神の如き力で我々を救ってくださったのだ」


「その伝説は本当だったのですか!?」


「あぁ、本当だ。私がこの目で見てきたからな。そして我らを救って下さった鈴木様は、我ら人から変異した魔物を魔族と呼び特別視させ魔物と分ける事で、普通の人からの偏見から我らを守って下さったのだ」


 それで現在は魔族と魔物は違う存在と認識されているのか。


「鈴木様の元、我ら魔族と人族は協力して衰廃した世界を耕し元へと戻して行って。少しずつ命を吹き返して行く世界……あれほど生きがいを感じていたのはあの時だけだよ。そうして世界を徐々に浄化していったが、いくら神の力を宿す豊作のクワといえど、一本だけで世界を元に戻すには人の寿命では足りなすぎた。鈴木様亡き後はその意思を継ぎ鈴木様の子孫の方々が引き継いでいったが、少しでもその手助けになる為に、人族は鈴木様の子孫を側で支え、既に復活させた大地を維持する為にその地、後の人族領に残り、我ら魔族はその強靭な肉体を生かし、まだ手をつけられていない場所を人の手ではあるが徐々に直して行く事にした。それがこの地、魔族領だ」


「人族と魔族が協力……しかし、そんな話聞いた事ありませんが?」


「それは……五百年前に神によって降臨された賢者サイトウ様が当時魔物の王と呼ばれ天災の如く猛威を奮っていた脅威を倒した事で人族に平和が訪れ、滞っていた人族領の環境を元通りにした後、本来なら次は魔族領も浄化して行く筈が、奴ら人族は裏切り、豊作のクワを手放さないどころか、賢者の残した賢者の石で新たな勇者を召喚し、魔族は人族の敵として当時魔族を束ねていた魔王を討伐させたのだ」


「そんな事が……では我らが賢者の石と共に豊作のクワを探して奪うのは」


「そう、新たな勇者を召喚させない為と、人族から豊作のクワを取り戻し、この荒れた魔族領を元の綺麗な大地に戻す為だ」


 聞けば聞くほど人族とは自分勝手な生き物だな。

 だが、俺も元は人間だったから同じ人間の残虐性だけでなく慈悲深く、他者を思いやる気持ちがある事も知っている。

 きっと今はその負の面が強い物が権力を持ち、人々を支配しているのだろう。


「話がそれてしまったな。つまり、今は魔族と魔物は別の種とされているが、本来は我らも同じ魔物なのだよ」


「……」


 今まで知らなかった衝撃の事実や、魔王軍の目的をいっきに知らされた為、どうやらルカはまだ頭の整理が出来てないようだ。


「魔王様、ご説明ありがとうございます。今、魔王様がご説明された通り、魔族も魔物も同じ魔物です。そして魔物と呼ばれる者たちの中にも、少数ですが意思を持ち、平和な日常を望む者達も存在します。私はあの村で生き残った存在として、そして子供達の未来を守る為に、魔族だけでなくそんな魔物達も幸せに暮らせる場所を作ろうと考えています。その為に私は魔王様にお願いして魔王軍に入りました」


「……とても、素晴らしい考えだな! 私も協力させてもらうぞ!」


 まだ頭の整理が追い付いてはいないが、リン様の考えには賛同したのだろう。

 リン様の手を取り、そう力強く答えたルカだった。


 リン様も嬉しそうだ。



 話もひと段落した所で俺の方からも気になった事があったので質問してみる。


「ところで、リン様。昔のお話の中で気になった事があるのですが……」


「私の体に起きた変化ですね?」


 おう、流石出来る参謀は察しがいい。

 俺が頷くと説明をしてくれた。


「後にわかった事ですが、私の体に起きた変化は()()でした」


「進化? ゲームで良くあるようなあれですか?」


「そうですね。一般的には知られていませんが、魔物はある一定量の、ゲームでいう所の経験値を積む事で進化する事があるのです。そしてあの時は……私が喉を斬った男が直前で亡くなったのでしょう。男が死んだ事により私の進化に必要な経験値が貯まり、あのタイミングでホブゴブリンへと進化に至ったのだと思います」


 そんな事があるとは。

 ルカも初耳だったようで驚愕の表情をしている。


「しかし、私は骸骨兵をこれまで沢山使徒して来たし、骸骨兵達はこの前の戦闘で敵を倒し、リン様の言う経験値を得た筈だが、そんな現象は見なかったぞ」


「ルカレット様が疑問に思うのも無理はありません。魔物が進化するのは本当に稀な事なのです。また全ての魔物が進化出来るとは限りません。そしてこれは私の持論ですが……進化する為には経験値以外にもう一つ重要な事が必要なんだと思います」


「それは?」


「思いです。進化に必要な経験値を貯めた魔物が強い思いを持つ事で進化のきっかけが生まれる、と私は考えています」


 思い……か。

 確かにそれなら普通の骸骨兵がいくら敵を倒して経験値を貯めた所で進化しない筈だ。

 だって骸骨兵には普通意思がないから。


 ……なら、俺ならどうだ?


 俺には意思がある。

 そんな俺が経験値を貯め、進化に必要な準備が出来たとしたら……。


 自分がまだ強くなれる可能性があるのだと知り、ワクワクで身震いがする。


「経験値とはどうやって貯めるのですか?」


 この質問は大事な事だ。

 経験値と言っても、訓練や練習で手に入るのか。

 それとも生き物を殺さないと行けないのか。

 それによっては今後どうするかも決まってくる。


「大事なのは魔素です。私達は魔素を日々魔核へ取り込み、魔力へ変換していますが、その際魔力にはならずに微量ながら体へと取り込まれる魔素があるのです。そして、戦闘で相手を殺した場合、その溜め込んだ相手の魔素は倒した者の体へと移ります。その魔素が進化に必要な一定量を超える事で進化するので、何もしなくてもある時突然強い意思で進化する者もいますし、敵を倒せばより早く進化へと至る事が出来ます。また、魔力を消費する事で魔素を取り込み回復しようとしますのでその循環が早まり、体へ貯まる魔素も増えます」


 なるほど、ようは何もしなくてもいつかは進化に必要な魔素が溜まるが、早く進化したいなら訓練などで魔力をより多く消費すれば良いし、もっと早く進化するには敵を殺して魔素を奪えば良いのか。


 ただ敵を殺すと言っても戦争にでもならないとその機会はないが、ルカの部隊は現状ローレンの街の防衛がメインで戦う機会がない。


 なら俺は、今までのようにひたすら魔法の練習をして魔力を消費し続ける事が進化する為の準備と魔力量向上にも繋がりベストだろう。


「ちなみに私はあの後もう一段階進化し、今はゴブリンキングになりました」


「進化は一度だけではないと言う事ですね」


 その答えに頷くリン様。


 この世界では命を賭けたやり取りが元の世界よりも身近に行われる。

 まして、俺は骸骨兵の魔物だ。


 先程の話から、普通なら魔族であろうと人族であろうと見つかれば討伐対象にされてしまう。


 ならば強くなる事に越した事はない。


 俺は更なる鍛錬を心に決めた。



「さて、私の方からの話は以上だ。ルカレットからのお話はクリス君に意思がある事だけではないだろう? 本題は何かな」 


「はい、それはクリスの体を元に戻す為、賢者の石を手に入れた時はどうかその力を使わせて頂きたいのです」


 おっと、リン様の話でスッカリ忘れていた。

 もともとそれをお願いする為に来たのだった。


「なんだ、そんな事か。賢者の石を奪うのは人族にこれ以上勇者召喚をさせない為だからな。構わないぞ、好きにしなさい」


 何と! まさかの二つ返事でした。


 グラス様の時もそうだけど、俺って心配症過ぎなのか? いや、お二人が物分かりが良すぎるのだ。


 だって勇者召喚をさせない為とはいえ、賢者の石の機能は凄まじい。

 悪用されたらとても危険な代物だと思う。


 そう考えると、きっとルカがそれだけ信用されてるって事なんだろうなぁ。


 本当にルカとの出会いは俺にとって幸運だったようだ。

 正にルカは俺にとっての幸運の女神である。


「おじ様ありがとう!! ……あっ」


 あまりに嬉しかったのか、リン様が居るのも忘れて素で喜び魔王様に飛びつくルカ。


 リン様もまさかのルカの変わりように目をまん丸にして驚いていた。

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