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ボーンライフ  作者: ユキ
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勇者の新たなチカラ

 勇者が突然息を吹き返したように力を取り戻した理由。


 それはクリスたちにより極限まで精神を追い込まれた事により生まれた、強い想いが生んだ新たなスキルのせいだ。



 スキル『仲間は勇者の為に』

 勇者の仲間となった者は、勇者が望めば魔力や体力などその全てを奪われ、怪我を肩代わりさせられる。


 勇者とは何ぞやと思わせる自分勝手な極悪スキルだ。


 その対象となったノルビは魔力と体力の全てを奪われ、突如の魔力枯渇状態に苦しみ指一本動かせない程の虚脱感に襲われていた。


 そして、勇者が奪ったのはそれだけではない。



「……スキル『憧れの衣装』」


 呟いた自分以外誰にも聞こえないであろう、小さな呟き。


 勇者のその呟きと共に、装備していた鎧の代わりに突如ピッチピチのレーシングスーツ姿に変わる勇者。


 途端にとんでもないスピードで空を蹴って駆けた勇者は、動きを追えずに固まるクリスに強烈な蹴りを喰らわし吹き飛ばした。



 勇者の使った新たなスキル……。


 それはノルビのスキルだった。


 スキル『憧れの衣装』

 漫画に出てくるキャラの衣装を作り出し、纏う事でそのキャラに準じた力を得る事が出来る。

 ※ただし女の子キャラ限定。


 ふざけているようなスキルだが、その能力は相当ヤバい。


 漫画のキャラによっては、とんでもない力を発揮する能力だ。


 そんなとんでもスキルを勇者は奪い、そしてその力の矛先は、クリスへと向かうのだった。



  *****



 クッ……何が起きた……? 勇者が突然消えたかと思えば次の瞬間俺は吹き飛ばされていた。


 瞬間移動をする能力か……?


 それとも……視認出来ない程のスピードで移動したと言うのか……?



 だとしても、油断なんてしていなかった……。



 身体倍加も常に全開で発動し続けていた……。



 それなのに仮に目で追う事の出来ない程のスピードで移動したのだとしたら……それだけ俺と勇者との身体能力に差があると言う事……。



 そんなの……どうやって勝てと言うんだ……。



「クリスッ!! 大丈夫!?」


「ご主人様!!」


 瓦礫の中で予期せぬ勇者の強化で絶望感に打ちひしがれていると、ルカとルナーレの声が瓦礫の外から聞こえて来た。


 どうやら落下した場所は先程まで居た魔王城の魔王の間だったようで、天井を突き破り突然落ちて来た俺を見て二人は心配して駆け寄って来てくれたようだ。



 そうだ……例え勝てない敵だとしても、俺は何が何でも勝たなくちゃいけない……。


 顔の前の瓦礫がどかされ、最愛の人と大切な仲間の心配した顔が見える。



 ……俺には守るべき存在がいるのだから。


 

 二人に引っ張り出されて瓦礫から這い出すと、ルカは途端に俺の体を隅々まで確認し出す。


「……うん! 大きな怪我はなさそうだね!」


 一通り見て無事を確認して安心したルカのその笑顔……。



 その笑顔はいつも俺に勇気をくれる。



 絶望に打ちひしがれそうな俺の心を、光で照らしてくれる。



 まさに彼女は俺の女神……



 ……ん? 怪我はない?


 そこでふと、先程のルカの言葉に引っかかる。


 骸骨だから怪我とは言わないだろうが、あんな目で追えない程の攻撃を受けて大きな損傷が無いないなんて可笑しくないか?


 ジンと同じ能力なら粉々に粉砕されている筈だ。



 視界の端でルナーレが「私もいるのに二人の世界に……」とか言いながら悶えているが、ただの変態なので気にしない。



 ……もしかして、スピードが早くなるだけで攻撃力が上がる訳じゃ……ない?


 その時、二度の破壊で屋根の大部分が無くなった天井から、ゆっくりと()姿()の勇者が背中の翼をはためかせて降りてきた。



「ルナーレ! ふざけてないですぐに後ろに下がって自分とルカを守るように結界を張るんだ!!」


「ご主人様の扱いが酷い……ハァハァ……」


 頬お赤らめ息を荒くするルナーレだったが、俺の命令に迅速に答え、ルカと共に後ろへと下がり結界を展開する。



「クフ……フフフ……俺を見下す奴はみんな死んでしまえば良いんだ……そうだ……死んじゃえ……フフフフ……」


 そんな俺たちを他所に何やらブツブツと呟く勇者。


 その発言は明らかにヤバい奴のそれである。


 目はキョロキョロと忙しなく四方八方を行き来し焦点があっていない。


 これは完全に精神攻撃をやり過ぎて裏目に出てしまった感じだなぁ……。


 仲間の安全を早く確保したいと焦って無理をした自分のミス……。



 悔やまれはするが……だが、後悔してもしょうがない!


 幸い勇者の精神状態は完全に崩壊しているせいか、敵である俺を目の前にしているのに攻撃を仕掛けてこない。


 いや、さっきみたいのがあるから油断は出来ないけど、今は勇者の新たなスキルと思われる力を見極める事が先決だ。


 本当にスピードが上がるだけなら何とかなるかもしれないしね。




 ……そう考えてた時代が俺にもありました。


 一向に動かない勇者に痺れを切らした俺が、一歩歩み出した瞬間、体を襲う複数の衝撃。


 念の為、軸足をスキルで地面に固定していた為吹き飛ばされはしなかったが、今回は限界まで視力に強化を施したのに動き出す僅かな動きは見えたものの、その後の動きは全く目で追えなかった。


 ジンの進化したスキルでさえ、今の俺ならギリギリ視認する事が出来るのに……それすら凌駕する超スピードでの移動……。


 幸い予想通り威力は強化されていないようで、1万の骸骨兵と融合して圧縮される事で得たこの体の強度ならそれほどダメージはない。


 ……が、全く見えないのにどう対象すれば……。



 今の攻撃で唯一得られた情報と言えば、動き出す瞬間ピチピチの全身タイツのような姿に変わったのが一瞬見えた位だが。



 アレは……勇者の趣味か?



 な訳ないよなぁ。


 こんなアホな事を考えられるのも、勇者の攻撃が止んだあと、こちらがジッとしていると勇者もまたラリった様子で攻撃をしてこないからだ。


 恐らくアレがスキルの能力の一部何だろうけど……あの変態的な格好にどんな意味が……。



「クリスッ! ノルビちゃんが!?」


 焦った様子で叫ぶルカの声と同時に、ルカに預けた分体からこれまでの経緯が同期され理解する。


 どうやら長身の女性の正体は、ダッチが最後に助けて欲しいと俺に託した娘のノルビだったようで、ルカとの戦闘中に突然苦しみだし、今はルカが保護してルナーレの結界の中に共にいるようだ。



 そのノルビが、勇者が謎のスキルを使用した瞬間、更に苦しみだした。


 そして、分体と同期した事で過去に起こった事も同じ時間軸で並び、最初にノルビが苦しみ出した時、こちらで起きた事と結びつく。



 勇者に突然魔力が戻った瞬間だ。


 つまり、勇者が突然息を吹き返したように魔力が溢れ出したのは、ノルビからスキルの力で奪っている可能性が高い。


 ミュートから聞いた話だと、以前ワッフル公国で戦った敵メルルが、スキルで味方を強化する為に、別の味方の体力を犠牲にして強化していたと聞く……。



 ノルビの状態を魔力が見えるこの目で確認すると、見る見るうちに魔力が減っていくのがわかる。


 また頬も徐々にこけ、顔色もすぐれなくなっている事から、魔力だけでなく、体力もまた減っているのだとわかった。


 対して、勇者は先程よりも魔力が徐々に増えていき、顔色も良くなって来ている。



 これは……当たりか。


 なら、もしかしたらスキルで奪っている対象をどうにか出来れば、魔力や体力の供給が絶たれてどうにかなるんじゃないか?



 かと言って、ノルビはダッチに託された存在……殺す訳にはいかないし……。



 待てよ!? 確かミュートの見解だと、メルルの場合スキルの効果が及ぶ対象が自分が支配されていると認識している人物に限定されていた筈!!


 仮にメルルと同じような条件なら、ノルビと同じく奴隷の首輪をしていたコクーンももしかして!?



 そう考え、急ぎ倒れたままのコクーンを見るが、幸いと言うかその考えは外れたようで、コクーンは何故か三角木馬に縛り付けられて苦痛の表情ではあるが、特に変わった様子もなく気絶したままだ。


 何故に三角木馬……?


 てかどこから持って来た?


 この状態にしたであろう犯人のルナーレに詰め寄りたい気持ちを抑えて、一先ず予想が外れた事に安心する。


 後ろで俺の心を読んだルナーレが「ご主人様に可愛がってもらう為に買った私物です」とか言ってるが、俺には聞こえないし、理解したくない。


 ルカはノルビの治療に夢中で気付いてなくて良かった。



 だいぶ脱線したが、とりあえずはノルビさえ何とかすれば良さそうだな……。



 しかし、どうやって……。



 その時脳裏にあるアイデアが思い浮かんだ。



 しかし……その方法は諸刃の剣。


 下手をすると、勇者の力の源を断つどころか、逆にパワーアップしてしまうかもしれない……。



 いや……きっと大丈夫だろう。


 何故だか彼を思い出すとそんな根拠の無い自身が湧いて来た。


 どうせ他に方法はないんだ! 俺は彼を信じる!!



「ルカッ! これをノルビにッ!!」


 その方法を実行すべく、ルカにある物を放り投げた俺の動きに反応した勇者が、今度は何故か機械のビキニアーマ姿に変わり、背中から両肩へと変形しながら飛び出した砲筒から2対の巨大なエネルギーの塊を放出した。



 2対のエネルギー波は螺旋を描きながら俺へと迫る。


 その攻撃に危険を感じ、すぐに振り返りクレットをエネルギー波に合わせて振り抜くが……。


 驚くべき事に、ダッチの炎鎧による飛ぶ斬撃すら一瞬で吸収したクレットをもっても吸収しきれず、何とか一部を吸収して小さくなったエネルギー波を両断する事で直撃は回避する事が出来た。


 しかし、両断されたエネルギー波は後ろの壁を貫通し遠くの方の山に着弾すると、爆音轟かせ大爆発を起こした。



 クレットで吸収しても尚この威力……。


 視線の先には山がえぐれ、その形を変えている。


 先程までのレーシングスーツ姿はとんでもない速さの代わりに軽い攻撃だったのと違い……今回の攻撃は、視認出来るが何て威力してるんだ……。



 あんな高密度のエネルギー波が直撃したら……例えこの体でも一瞬で蒸発するじゃないか?


 自分に直撃した時の事を想像するとゾッとする威力の攻撃に、それよりもその攻撃がルカたちの方へ行かなくて本当に良かったと安心する。



 それにしても、攻撃をする前のあの見た目の変化……。


 勇者の趣味じゃなければ、スキルの能力と言う事になる。



 そして先程の機械式のビキニアーマーのようなものには見覚えがある。



 あれは……前世で大人気だった、ロボットを美少女擬人化したアニメキャラの衣装だ。


 先程のエネルギー波もそのキャラが使う必殺技だったと前世の知識にある。


 それで知識と結びついたが、その前のレーシングスーツ姿も、何かのアニメに出てくるヒロインの女性キャラがあんな服を着ていたようだし……。


 つまり、勇者の能力は……。



「グッ!?」


 その時元の姿へと戻り、壊れたオモチャのようにブツブツと何かを呟き続けていた勇者が、突然苦しみだした。


「クリスッ! 上手く行ったよ!!」


 その変化とルカの言葉に、俺は先程の賭けに成功したのだと確信する。

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