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ボーンライフ  作者: ユキ
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人の趣味を下手げに聞いたらあかん

「アナタは戦わないの?」


 クリスと勇者、ルナーレと女武闘家。


 それぞれの戦いが始まるなか、未だその場に留まり戦いの行方をオドオドと見つめる長身の女性に、離れた場所に立つルカが質問する。



「ッ!? わ、私は……」


 まさか自分に声を掛けられると思っていなかった女性は、ビクッと驚き反応するが、その後は言い淀み、ルカの問いに答える事が出来ないでいる。


 そんな長身の女性の様子に何かを察し、語りかけるルカ。



「うん……そうだよね。戦いたくないんだよね?



 だってアナタは無理やり連れて来られただけで、私たちと戦う理由が無いものね。



 ……ノルビちゃん」


 ビクッ!?


「ど、どうして私の事を!?」


 驚きながら髪の結び目を抑えるノルビ。


 ノルビとは、人族の暗殺者からクリスを守り亡くなった、鬼族の長ダッチの娘の名だ。


 そんなノルビの様子に、ルカは不思議そうに頭を傾ける。



「あれ? 私の事忘れちゃった?


 ……でも、無理もないかぁ。


 あの時はお互い、前の魔王様とアナタのお父様との戦いを止めるのでいっぱいいっぱいだったもんね……。


 じゃぁ改めて!


 私はルカレット。


 元魔王軍四天王のルカレット・エレンシアだよ」



「ッ!? あ、あの時の!? でも……雰囲気がだいぶ違いますね……そ、それよりも! その節はいろいろとご迷惑をお掛けしました!!」


 ルカの自己紹介に漸く思い出したようで、先程よりも更に驚いた顔をすると、途端に大きな体を縮こませて恐縮し出すノルビ。



「良いの良いの! むしろウチの副官がごめんね。なんか……大人、な? ……服を着て貰ってただけだって本人は言ってたけど……変な事されなかった?」


「ッ!? ……だ、大……丈夫……です」


 どうやらグラスにエロい服を着せられていた鬼族の娘と言うのは、ノルビの事だったようだ。


 自分の娘の事ならば、ダッチが里を上げて魔王軍に戦争まで持ちかけたのも頷ける。


 今思うと、あの人はかなりの親バカだったのだろう。



 そしてノルビがこんなに恐縮するのも無理はない。


 自分が原因で実の親が魔王軍に戦争をしかけたんだから。


 しかもその理由がグラスとイチャコラしてたなんてねぇ……。



 その時の事を思い出したのだろう、耳まで真っ赤な顔で更に小さくなって俯くノルビ。


 これまでの印象からかなり引っ込み思案な性格なようだし……自らそんな服を着たのではなく、グラスに上手い事言いくるめられて、引くに引けずに着てしまった……と言うのがことの成り行きだろう。



「あ、あの時グラスさんには、わ、私の趣味に付き合って貰っただけ……です、ので」


 違った……ただの変態だった。


 よく見れば、俯きながら口角が妙に上がっているのが見える。


 その時の事を思い出して恥ずかしがっていると思いきや、ただ思い出して興奮し赤くなってるだけのようだ。



「趣味……? そっか! 大人のお洋服って言っても可愛いのやカッコいいのも沢山あるもんね!」


 イマイチ話を理解出来ないルカは、そう解釈したようだが……あのグラスが絡むんだから絶対健全な服な訳がない。


 と言えよりエロい服って本人が言ってたし……。



 何て考えている内に、いつの間に移動したのかルカの目の前にノルビが移動しており、その上、真顔で顔をグイッと近付けて来た。


 ヤバいと思ったが、ただの緊急連絡様の分体であるこの体ではどうする事も出来ず、ルカとキスでもするんじゃないかと思える程近付いたノルビの次の行動を、ただ見守る事しか出来なかった。



「そうなんですッ!! 村のみんなはただ大事な所を隠せれば良いって、ボロボロの布や魔物の毛皮を着ているだけなんですけど……世の中には沢山のいろんなデザインのお洋服で溢れてるんですよッ!! 中でも、勇者たちがもたらした()()と言う物に出てくる女の子たちは、可愛さやカッコ良さと共に、エロさも兼ね備えた完璧と言っても過言じゃない衣装に身を包んでいるんですッ!! その姿はそれはもう……私の想像を超える神とも呼べる存在でしたッ!! あの出会いはまさに運命!! そう!! 運命なのですッ!! あぁ神よ……」



 ……これは予想外です。


 ルカに危害を加えるかに思えたノルビだったが、始まったのは自分がいかに洋服にどハマりしたかについての馴れ初めと、漫画のキャラの衣装がいかに優れているかの話。


 要約すると、過去の勇者がこの世界に持って来た二次元キャラの女の子が着ているエロい服に感銘を受けた……と言う話だった。



 そしてその圧は凄まじく、キョトンとするルカを他所にその後も早口で永遠に語られる、二次元キャラが着る洋服の素晴らしさ。


 その道の人に、下手に趣味の事を聞いたらダメだと薄らと前世の知識であるが、その通りだった。



「……と言う事で、そのキャラの衣装の素晴らしさを理解してくれたグラスさんが、私の為に魔法で衣装を再現してくれたんですッ!! それがもうチョーヤバくて!! 完全に漫画に出てくる衣装その物だったんですよッ!! それでそれで、グラスさんったら『せっかくだから着たら?』って言うんですよ? きゃーー!! 私なんかがあの衣装に袖を通すなんて!! ……でも、及ばせながらこんな機会二度とないかもしれないので着させて貰ったんです。そしたらもう……最っ高でッ!! 私はこの為に生まれて来たんだって思えたんですッ!!」



 あっ、終わった?


 後半は飛んで行った本体と勇者の代わりにルナーレの戦いに見入ってたんで聞いてなかったよ。


 だから、話を聞くルカの様子にも気付かなかった。



「そうだったんだ! そんなに凄いお洋服なら私も着てみたいなぁ」


 あっ、それ言ったらあかんヤツ……。


 真面目なルカは、よく分からないながらもノルビの話をしっかり聞いていたようで、素直にそんな感想を言ってしまったのだ……。



「本当ですかッ!? ルカレットさんはまるで漫画のキャラが飛び出して来たみたいに、綺麗でとってもスタイルも良いから、きっとエロい衣装が似合うと思うんですッ!!」


 案の定、ノルビは獲物を見つけた肉食獣のごとくルカの言葉に食らいつく。



「えっ……? エ、エロい……お洋服? それってもしかして……肌をいっぱい出す……ような?」


「それはもちろんッ!! 衣装の良さを最大限活かすには女の子の柔肌が必要不可欠ですからッ!!」


 そんなノルビの発言に、今更自分がやらかした事に気付いたルカ。



「あ、あはは……そっかぁ……でも、そう言うのは……ちょっと……」


 何とかノルビの魔の手から逃れようと、遠回しに断るルカだったが、既に遅かった。



「大丈夫ですッ!! 絶対似合いますからッ!! なんなら今持ってる中で似合いそうな衣装があるので着てみて下さいッ!!」


 完全にルカをロックオンした彼女には、ルカの遠回しなお断りの言葉など、そよ風の如く流されるだけだ。


 そうしてガサゴソと荷物の中から一着の衣装を取り出すノルビ。


 てか、何でこんな場所まで持ち歩いてるんだよ……。



「あぅ……」


 ノルビが取り出した衣装を見たルカは、そのあまりに少ない布面積に顔を真っ赤にし、後退りする。



「えっと……私は……」


「さあさあ!! 今すぐ着て下さいッ!! あっ、特殊な服だから着かたがわからないですよね! 気が利かなくてすいません!! 私、手伝いますね!!」


 そんなルカに、やはりいつの間に移動したのかノルビは、ルカの背後に回ると怒涛の早口と共にルカの服を脱がし出した。



「え!? そうじゃなくて……や、やめ……!?」


「グフフッ!! なんて透き通って滑らかな肌でしょう……そして、この出るとこは出て締まるところは締まったボディッ!! これはこの衣装も……映えますねッ!!」


 手際良く脱がされるルカは、両手で必死に下着を隠そうとするが、それが悪手となり、両手の塞がったルカの体をノルビは後ろから弄るようにじっくり触って観察し出す。


 その様は完全に変態のそれである。



「ん!?……そこは……ぁ……ダメ……」


 ノルビのその手つきに身悶えし、次第にルカの体から力が抜けて行く。


 すかさずノルビの手はルカの最後に残された薄い下着へと伸び……。



「さあ、脱ぎ脱ぎしましょうねぇ……」


「ダ……ダメって……



 言ってるでしょッ!!」


「グバッ!?」


 散々体を弄られて我慢出来なくなったルカの渾身の一撃を受けて床に崩れ去る事となった。



「あっ!? ご、ごめんなさい! 大丈夫!?」


 魔王クラスの実力を持つルカの一撃なのだから、普通の人族なら爆散し、魔族でも悶絶する威力なのだが……。



「グフフ……ルカレットさんわかってますね……この衣装のキャラはツンデレで、恥ずかしくなるとつい暴力的になってしまうんですよ。つまり私には……ご褒美と言う事ですッ!! ありがとうございますッ!!」


 変態には通用しなかった。



「えっ!? ええと……どう致しまし……て?」


 そんなノルビの反応にルカも困惑しっぱなしだ。


 てか、ウチの純粋無垢なルカに悪影響だから、誰かコイツを何とかしてくれ!!



「グフフ……気を取り直してお着替えしましょうね」


「ひぃ!?」


 ゾンビの如く復活すると、淀んだ瞳でルカへと近付くノルビ。


 その動きに流石のルカも怯えて今にも泣き出しそうになっている。



 最早勇者との戦いなんて関係ない! 動けない自分の代わりにこの害悪を駆除してもらおう!


 そう決意して、本体との切っていた繋がりを復活させようとしたその時……。



「グフフ……カハッ!?」


 涎を垂らしながらルカへと迫るノルビが突然苦しみだし、その場に崩れ落ちたのだった。

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