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ボーンライフ  作者: ユキ
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魔王軍幹部会議

 領主城の中庭にローブを着た二十人あまりの魔術師が円を作り、その中には淡く光る魔法陣が浮かび上がっていた。


「それでは留守は任せる」


「承りました。お気を付けていってらっしゃいませ」


 挨拶を済ませ魔法陣の中央へと向かう女性は、ルビーのような綺麗な瞳と、薄らと赤みの入った銀の長髪が目を引く、芸術品のような整った顔の美女で、黒をベースに赤いラインの入った着物を来ており、薄い素材の為そのスタイルの良い体のラインが良くわかり、更に着崩し露わになった胸元と歩くたびにスリットから覗かせる生足は周りの視線を集め、首元だけはフワフワの長く赤いマフラーを付けているのだが、見えない鎖骨が妄想を誘い、その全てが彼女の妖艶さを醸し出している。


 その妖艶な女性こそ魔王軍四天王が一人、ルカレットだ。


 そしてルカレットと一緒に魔法陣の中央へと向かう者が一体。


 二mをゆうに超える巨体で、体には衣服どころか皮膚や肉さえ無い、あるのは骨だけの骸骨兵ことクリス十六世だ。


 そして、中央へと到着したルカレット達が振り返り、その先の他の魔術師より明らかに豪華な装飾を付けた老人であるグラスにうなづくと、グラスの合図で周りの魔術師達は魔法陣へと力を注ぐ。


 その瞬間魔法陣は今までの淡い光から眩い程の光へと代わり数秒後、光が収まると魔法陣の中央に居たはずのルカレット達は跡形も無く居なくなっていた。



  *****



 光が止むとそこは石造りの高い建物にある広いバルコニーであった。


 手すりの向こうを見ると分厚く真っ黒い雲に覆われた空と広く枯れた大地、遠くに見える気高い山脈があり、とても人が住めそうにない不毛の土地が広がっていた。


「ルカレット様、お待ちしておりました。既に参謀並びに他の四天王の皆様方は会議室でお待ちです。どうぞ中へお入り下さい」


 衛兵であろう屈強そうな魔族がルカにお辞儀をすると城内へと続く扉を開け中へと促した。


 ルカはそれに従い扉へと向かう。



 中は通路になっており、バルコニーと同じく床から天井まで石造りで見た目よりも頑丈さを優先した作りになっている。


 また通路の天井は高く幅も広いので二mを超える俺がルカとならんで歩いても余裕で通る事が出来る。


『ここが魔王城か、武骨で通路もとても広いし、巨人でも住んでるみたいだね』


『凄いでしょ。実際魔王軍には巨人やトロール、サイクロプスなんかも在籍しているから、多種多様な魔族が務められるよう大きく頑丈に作られているんだ』


 今二人をはたから見たら通路を無言で歩いているように見えるだろう。

 しかしこうして会話が出来ているのは、グラス様に頂いた魔術書に書かれていた念話を使っているからである。


 念話とは離れた相手に魔力を飛ばして自分の言葉を脳に直接送る魔法である。

 距離に応じて使用する魔力が多くなるが、近距離で念話する分には俺の場合普通に声を発するのに使用する魔力と変わらないのでマイナス要素はない。


 俺に脳が無いから最初は受信出来るか不安だったけど、こうして会話が出来ている事から、脳の役割をしている魔力でも念話ん受け取る事が出来るようだ。


 そして会話をする為にはお互いに念話を使えないといけないデメリットもあるが、直接脳に魔力を送るので、会話をしていてもルカのように魔力を見る事が出来ない限り会話をしている事を悟られないメリットがある。


 幸い魔王軍にはルカのように魔力を見る事が出来る者はいないそうだ。


 俺に意思があると周りにバレない為にもこれ程便利な魔法はないと、真っ先にルカと一緒に習得した。


 どうやらルカは今まで攻撃魔法を覚え強化する事を優先していた為、こういった補助魔法などはほとんど覚えてこなかったそうだ。


 そのせいもあり、ルカは慣れない補助魔法に悪戦苦闘し、今回は念話を覚えるのだけで精一杯だったが、俺は例の如く簡単に習得する事が出来たので他にも使えそうな魔法をいくつか習得している。きっとこの先役に立つだろう。


 ちなみに念話のページの下の方にこれを使えば意中の相手に一方的に自分の気持ちを伝え続ける事が出来、昼夜問わず行い続ければきっと自分を好きになってもらえるよ! なんてグラス様の注釈があり、ルカが食い入るように見ていたが、それは一般的に洗脳と言うものだから絶対やっちゃダメだと強く言い聞かせておきました。

 グラス様なんて事書いてるんだよ!



 そうしてルカと念話で会話をしていると、通路の先に一際大きな扉が見えた。


『ここが会議室だよ。さっきの衛兵の話だと既に参謀と他の四天王はいるみたいだから、気を引き締めて行こう』


 その言葉に念話で返事をする。


 そして扉の前まで来ると、扉の左右で警護している衛兵が敬礼をした後、後ろの扉を開け俺たちが入れるようにしてくれた。


 中へと入っていくルカに続き扉をくぐると、そこは大きく頑丈そうな円形のテーブルを中心に豪華な装飾が施された椅子が六脚のみ並べられた窓のない大きな部屋だった。


 上座の椅子と左奥の一つを除きそれぞれの椅子には既にその主人が座り、今しがた入ってきたルカをそれぞれが見ていた。


「お待たせしたようで申し訳ない。少しいざこざがあってな」


 いざこざと言っているが、ルカが行きたくないと駄々を捏ねてなかなか準備をしなかったのが原因です。


「ハッ! 俺様を待たせるなんて、吸血姫様は随分調子こいてるな」


 真っ先に文句を言ってきたのは顔や体は人間をベースにシルバーの長髪とそこから覗かせるピンと立った犬耳、お尻にはフワフワの尻尾が生えた獣人だ。

 後ろには同じく犬耳とフワフワの尻尾だが茶色の体毛の獣人が控えている。


 ……あのフワフワの尻尾に顔を埋めてフガフガしたい。

 思わずその姿とフワフワの尻尾を見てそんな欲求が込み上げてくる。


『あの五月蝿いのかシルバーウルフの獣人で四天王のランドだよ。会う度につっかかってきて面倒くさいヤツなの』


 俺が尻尾を見つめフガフガしたい欲求と戦っていると少し機嫌悪そうな声でルカの念話が飛んできた。


 よっぽどアイツが嫌いなんだろう。

 現に今もつっかかってくるランド様を見もせず完全無視している。


「まあまあランドさん、別に集合時間までまだあるのですからルカレットさんが待たせた訳ではありませんよ。ルカレットさんも気にしないで大丈夫ですので席について下さい」


 喧嘩越しのランド様を宥めながらルカに座るよう促してきた者は、物腰の低い喋り方だか、声はどこか作ったような印象で、白い人の顔の形の仮面をし、頭からローブを被り、中の人がどんな人物なのか全くわからないいかにも胡散臭そうなヤツだった。


『この人はリン、数年前に突然現れ、その知略であっという間に魔王軍No.二の参謀にまで上り詰めた天才だけど、今だに誰もその素顔や魔王軍に入るまでの経歴を知らない謎の多い人物なの。ちなみに声も魔道具で偽装したものね』


 俺に説明しながらも空いている左奥の椅子へと向かい座るルカ。

 俺はその後ろに控える。


「気に、するな」


 ルカの右隣、一つ目と頭部に生えた一本ツノ、緑の皮膚に3メートルを超えるであろう巨漢が特徴の人物が言葉少なくルカに慰めの言葉を送った。

 その後ろに身長は二メートル越えと俺とそれ程変わらず、前に座っている四天王と見た目が同じ臣下が控えている。


「ありがとう、サリー」


『彼はサイクロプスのサリー。見た目は強面でゴッツイけど、聞いての通り優しい良い子なの。そしてランドの隣に居るのがサキュンバスのミルカ。あまり話した事はないからわからないけど、この子が王都に潜入して諜報活動をしているから賢者の石の情報もこの子から聞けるよ』


 そういってミルカと紹介された人物を見て思わずツッコみそうになる。


 黒い長髪に整った顔立ち、スタイル抜群のそのプロポーションは黒の薄い水着のような布で大事な部分を隠している以外はほぼ裸の大人の色気漂う妖艶な女性が足を組み座っていた。

 そう、完全にキャラがルカと被っているのだ!


 お色気担当多すぎだろこの四天王!


 あとは頭から黒い触覚のようなものを生やし、黒い尻尾は細く先が逆さまのハートの形でザ・サキュンバスといった見た目をしている。

 後ろに控えているのはこれまた妖艶な格好のショートカットが似合う紫髪のサキュンバスだ。



「それでは少し早いですが皆さん揃いましたので魔王軍幹部会議を始めます。ちなみに魔王様はお忙しく、手が空きましたら参加するそうです。」


 キャラが被っている者もいるが、なかなかお約束的な四天王が揃っているなと思っているとどうやら会議が始まるようだ。


「皆様からの報告書は既に上がってきており全て拝読されて頂きましたが、他の四天王の方々への情報の共有の為と、新しい報告事項がありましたら合わせて報告して頂きたいので、ルカレットさんから左へ順に報告をお願い致します」


 リン様の進行で会議が始まり、指名されたルカが立ち上がり報告を始めた。


「うむ、私からはローレンの街の侵攻結果と白髭危機一髪の調査結果をさせて頂く。ご存知の通り、ローレンの街の侵略でこちらの被害は召喚した骸骨兵を2割失ったが、配下への被害は無く、順調に占領に成功した。また占領後の統治も順調で、リン殿のアドバイス通り魔王軍のイメージアップ戦略を行った所、その甲斐あって住民からの支持もかなり良い状態だ。このまま行けば魔族領への併合も問題なく済むだろう。次に白髭危機一髪の調査結果だか、やはりあのダンジョンは賢者サイトウの作り出した賢者の石が使われていた。しかし、調査の結果この賢者の石は試作品の為勇者召喚の機能を有しておらず使えないとの事なので安心してくれていい。とは言え、試作品だが賢者の石にはかわりなく現在でも解明出来ない未知の知識が使われている品でもあるので、今後はダンジョンを含めたローレンの街の守護の継続と、試作賢者の石の解析を進めて行く予定だ。私からは以上なる」


 報告が終わり席に着くと、隣のサリー様がのっそりと立ち上がり短い言葉で報告を始まる。


「次、俺の番。カムリーの街、計画通り、占領完了した。軍の再編成、終わり、次出れる」


「サワンの街の占領も余裕だったぜ。部隊の再編成も終わったから命令があれば直ぐにでも次の街を占領に向かえるぞ」


 カムリーとは魔族領と隣接する王国最南西の街で、王国領と魔族領の西に横断するシール山脈の麓にある鉱山都市だ。サワンは王国最南東の街で、海に面している。ローレン侵攻後、王国が混乱した時期を見計らって西南のカムリーをサイクロプスのサリー様が、東南のサワンをシルバーウルフのランド様がそれぞれ同時に進行した街になる。


「次は私ねぇ」


 そして、遂にミルカ様の報告の番になる。


「現在私は、部下と共にとある伯爵を洗脳して、そいつの王都にある屋敷に潜伏しながら戦争を有利にする為の諜報活動と賢者の石と()()()()()に着いて調べているわぁ。今回の戦争は王国側も予想外みたいでお城は大変みたいよぉ。更に私と部下で洗脳した連中が偽の情報を流したり周りの足を引っ張ってくれてるから対応もかなり遅れそうよぉ。賢者の石については屋敷の書庫にある重要書類によると、賢者の石が過去に王都で勇者召喚をする為に使われたのは確実ねぇ。それと豊作のクワは王様が代々管理しているみたいよぉ。詳しい場所まではわからないけど、他の情報も統合すると、どちらも王城で王自ら管理していると考えるのが妥当ねぇ。流石に王城ともなると強固な防護魔法で私でも簡単には入れないから洗脳した連中で調査はしているけど難航しそうよぉ」


 豊作のクワ? 聞いた事ないが、きっとそれも魔王軍にとって重要な物なのだろう。


 それはあとでルカに聞いてみるとして、やはり賢者の石は王都にあるのか。しかも王城で王自ら管理してるとなると、流石の四天王とはいえど潜入は難しいのか。


 そうなると魔王軍が王都を攻め落とすしかないが、それがいつになるのかわからないし、出来るのかもわからなぁ。


 正直、今こうしてルカに保護してもらって安全も確保されている以上、そこまで元の体に戻る事にこだわっている訳ではないしなぁ。


 だけどこれだけルカが元の姿に戻れるよう良くしてくれているのにやっぱりいいです、じゃ申し訳がたたない。


 どっち道、魔王軍に在籍している以上賢者の石を奪う事が重要事項なのだし、このまま魔王軍にいればそのチャンスもあるだろう。なのでとりあえずいち魔王軍として今のまま頑張ろう。


「そうそう。伯爵の証言によると過去に勇者召喚がされたのが十年前が一番最近みたいだからぁ、少なくても次の勇者召喚まではあと数年は魔力を貯めないといけない筈よぉ。だからそんな急ぐ必要はないんじゃなぁい」


「それは良い情報ですね。人族など魔族に比べれば身体能力で大きく劣り、稀に強い個体も居ますが、それでも団結されなければたいした脅威になりえない種族です……が、唯一勇者だけは魔王様すら凌駕しうる力を持つ特異な存在です。その可能性が限りなく低いとわかっただけでも重要な情報ですね」


 声に感情を感じないせいでわからないが、喜んでいるの……かな?


 そりゃ魔王軍の最大の敵になり得る勇者が召喚されないと分かれば魔王軍なら誰でも喜ぶだろう。


 俺にしても四天王であるルカの元で働いているのだから、命の危険を脅かす最大の脅威が現れないと言う情報はとても喜ばしい事だ。


「それでも、賢者の石には十年分の魔力が溜まっている事はそれだけでも我ら魔王軍にとっては脅威ですので、引き続きミルカさんには調査及び、魔王軍侵攻に乗じて混乱した王都での諜報活動をお願い致します。そして、出来れば賢者の石及び豊作のクワ見つけ出し、ヤツらから奪い取って下さい」


 リン様の言葉でハッとする。

 確かに賢者の石は勇者召喚以外にも現代の技術でも未知とされるとんでもない機能が付いたオーパーツのような物だ。

 勇者召喚が出来ないとはいえ、そんな物に十年分もの魔力が溜まった状態で敵の手にあると言うだけで十分脅威だ。


 敵もそれがわかっているからこそ仲間内で際、詳細な保管場所を明かさずに厳重に管理しているのだろう。


 目の前の情報に踊らされず冷静に分析しているあたり流石短期間で参謀にまで上り詰めた方は違うな。


「さて、それでは最後に私の方から今後の作戦について確認ですが、ミルカさんは先程の指示通りに、ルカレットさんは引き続き試作賢者の石の解析及び防衛を、そして、サリーさんとランドさんですが、南東と南西から進軍を開始し、途中にある街や村を占領していって下さい。占領後は後方部隊が占領を引き継ぎますので、そのまま最終目標の王都を目指します。流石の人族も自分達の危機に団結し途中から反撃に出てくるので侵攻スペードは落ちるでしょうが、今の勢力なら半年もあれば王都まで行けるでしょう。王都では我々魔王様率いる本陣も合流致しますので、くれぐれも先走って攻撃を仕掛けないように。宜しいですか?」


「「「「ハッ!!」」」」


「それでは次に兵や物資の確認と細かい事項についてですが……」



   *****



「それでは他に報告が無ければこれにて会議を終了と致します。各自持ち場にお戻り下さい」


 どこの部隊も計画通り作戦が進んでいるようで、滞りなく会議が終わった。


 会議が終わるとルカは早々に立ち上がり扉へと向かう。

 やはり人前でだいぶ疲れたので早く帰りたいのだろう。


 しかし、扉の前にはいち早く動いたシルバーウルフのランド様と臣下の獣人が待っておりルカに声をかけてきた。


「オイ、ルカちょっと待て。この前の返事もまだだし、そんな急いで帰らず俺様の相手をしろ」


『面倒なヤツがまた来たなぁ……クリス、とりあえず無視の方向で行こう』


 そう念話で話すとランド様を無視し、横を通り抜けようとするが、ルカの目の前に素早く回り込み通れなくするランド様達。どうやら逃してはくれないようだ。


「どこに行くんだよ、まだ話の途中だろ。それとも俺様と話すのが光栄過ぎて顔も見れないってか」


 ニヤけた笑みで見当違いな事を言うランド様。どうやらかなり自信過剰なようだ。


「フッ、何を言うのかと思えば。ただ犬っころと話す言葉を持たないだけだよ」


「何だと……この俺様をただの犬呼ばわりとは随分調子に乗ってるな。俺様は強靭な肉体を持つウルフ族でも特別な体毛を持ち、魔法を一切受け付けない、シルバーウルフだぞ。お前みたいに魔法主体のヒョロイ女は俺様にかなう訳ないんだから、大人しく強い俺様の女になってれば良いんだよ!」


 どうやらランド様はルカを狙っているようだ。

 戦場での大魔法を見た身としてはアレが効かないなんてホントかよと思ってしまうが、それが事実ならランド様の言う通り魔法使いにはかなり部が悪いだろう。


「そう思うなら試してみるがいい。オマエのそのチンケな毛など全て燃やし尽くしてやる」


「ふふ……ははは! 良いねぇ、やっぱりお前は最高だよ。その生意気な顔が、屈辱で歪む姿を想像するだけでイっちまいそうだぜ」


 うわ〜、コイツもグラス様と同じ変態だぁ〜。しかもヤバい分類の変態だよ。

 でもそんな変態に一切怯まないルカさんマジカッケェースッ!


 ん? 何だろう、そんな変態が何かに気付いたのかこっちを見ているなぁ。いや、そんな見られても俺にそっちの気はないですからね。


「そういや、いつも連れてるジジイはどうした? 遂に死んだか?」


 そっちでしたが、また変態に目をつけられたんじゃなくて良かった。


「心配しなくても、元気にローレンの街で賢者の石の解析にあたっている」


「ハハハ、その代わりで骸骨兵か。お前の所はジジイとババアしか居ないからな、いつ死ぬかわからん死にたいの部下ばかりで大変何だろう。骸骨兵なんて使い捨てのゴミ連れてこなくちゃ行けないくらいだからな。なんならウチの優秀な部下を融通してやろうか?」


 そう言えば確かにルカの部下はお爺ちゃんとお婆ちゃんしかいないな。何故だろう? しかもお爺ちゃんはグラスを筆頭に変態揃いだし。

 獣人は身体能力に長けているって聞くし、融通してくれるのなら有り難いんじゃないか?


 そんな事を考えていると前のルカの様子がおかしい事に気付く。

 なんて言うか……負のオーラ? 的な、近くにいるだけでヤバいと本能が感じる程の雰囲気を醸し出しているのだ。


 しかし、野性の勘に敏感な筈の獣人のランド様は自分の話に夢中で気付いていない。


「ふざ、けるなぁ!! 私の部下はみな優秀だし、骸骨兵は使い捨てのゴミじゃないッ!!」


 怒りの言葉と共に周囲に魔力が飛散し、いち早く異変に気付いていた俺は耐える事が出来たが、その余波で周りの机や椅子、そしてランド様の臣下が壁へ吹っ飛ぶ。

 少し離れた所で様子を見ていた他の四天王や参謀のリン様は耐えていたが、その部下は膝をつき脂汗をかいていた。

 流石と言うか、目の前でその余波を食らったはずのランド様は魔力が効かないと言っていたその体毛のお陰か、その場で耐えていたが、流石に話を中断し、腕で顔を守っていた。


「骸骨兵は……クリスは『ルカ待って! それ以上言うと俺の正体が周りにバレてしまうから、落ち着いて』ッ!?」


「ッ……な、なんだ、その骸骨兵に名前まで付けてるのか。随分その骸骨兵にご執心みたいだなぁ、もしかして夜のオモチャにでもしてるのか? なら尚更俺の女になれよぉ、そんな骨野郎より気持ち良くしてやるぜ」


 あれだけの威圧を受けてまだルカを煽れるのか。流石四天王を名乗るだけの事はある……いや、よく見るとさっきまであんなにゆったり構えてた尻尾が若干足の間に入ってるな。

 どうやら四天王としてのプライドと虚勢で喋っているようだ。


「……フッ、冗談は顔だけにしておけ。クリスの方がお前よりもよっぽと気持ち良くしてくれるわ」


 あれ、ルカさん。それってマッサージの話だよね? 向こうさんの言ってるのはそっちの意味じゃないからね?


「あん!? そんな骨野郎に俺様が劣るとでも言うのか? 俺様が一体今までどれだけの女を自慢の息子で気持ち良くして来たと思ってんだ。そんな男の象徴も付いてないようなヤツに俺様が負ける訳ないだろが!」


 グハァ!? それは……俺が一番気にしている事、です……。


「? お前は女性を気持ち良くさせるのに息子がいないと出来ないのか? 情けないヤツだな。クリスはその技術だけで私を毎日快楽と絶頂にいざなってくれるぞ」


 ちょっ!? ヤメテェ! 違う意味なのに、それ以上は聞いてるコッチが恥ずかしくなってくるからぁ!


 ほら、ランド様なんか完全に勘違いして怒りで顔真っ赤だよぉ! そして怒りでプルプル震えてるから、追い討ちをかけるようにドヤ顔で煽らないでぇぇえ!


「それにクリスは戦闘だって強いぞ、お前のとこの部下よりよっぽどな」


 こらこらルカさん、特別な骸骨兵だってバレたらマズイのにそんな事言ったらダメだろ。それにそんな事言われたらランドも……。


「ほぉ……本当にウチの部下より強いのか戦わせてみようじゃねぇか。オイ! ポルカ!」


 ほらこうなったぁ……向こうの部下も吹っ飛ばされて体中痛そうにしてたのに、自分より強いって言われてやる気満々になっちゃったしぃ……もう帰って良いかな?


「良いだろう。クリス、そんな犬っころ殺ってしまえ」


 いや、殺らないからね! 同じ魔王軍の仲間で殺してたら問題だから! 少しは冷静になったかと思えばまだまだお怒りだよ。もう勘弁して下さい。


「まあまあ、お二人共。少し落ち着いて下さい」


 そこに救世主が現れた。リン様である。


 あぁ、リン様、さっきは胡散臭そうなんて思ってすいませんでした。良く見るととても素敵なローブとマスクです。


「ここで戦われては部屋への被害が出てしまいますし、どうせやるなら気兼ねなく戦えて皆さんが見やすい闘技場の方でやりましょう」


 クソがぁ! 救世主なんかじゃなかったぁぁあ! 一瞬でも素敵だなんて思った俺がバカだったよ!


「ふむ、それは良い考えだ。せっかくクリスが勝つ姿を見るなら特等席で見なくてはな!」


「ハッ! バカ言え、勝つのはウチのポルカに決まってるだろ! 何たって俺様の部下の中でもポルカのスピードは一番だからな!」


「何をバカな事を、ウチのクリスが早いだけの犬っころに負けるわけがないだろう」


 どんどんヒートアップしていくルカ、するとランド様はある提案をしてきた。


「ほぅ……なら賭けるか? まぁ、自信がなければやらなくてもいいが」


「望むところだ! それならクリスが勝ったら今後一切ウチの部下をバカにしないと誓え」


 ニヤリ……。


「あぁ、いくらでも誓ってやるし、何なら土下座でもしてやるよ。その代わり、ウチのポルカが勝ったら、お前は俺の女になれ」


「良いだろう、クリスが負けたら私はお前の女だろうと下僕だろうと何だってなってやる!」


『ちょっ!? 何言ってるんだ! そんな事に自分を賭けるなんて!』


『大丈夫大丈夫! だって、私のクリスは負けないもん!』


 自信満々に言い切るルカ。


 そんな信頼されてたらやらないなんて言えないし勝つしかないじゃないか……。


「決まりだな。それじゃ闘技場へ向かおうぜ」


 そう言って道を開けるランド様。

 その表情は上手くいったとでも言いたげな、とてもイヤな笑みだった。

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