表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーンライフ  作者: ユキ
118/196

家族

「……と言う事で、ダッチの願いを叶える為……そして魔王軍本来の目的である、豊作のクワと賢者の石を手に入れる為、俺は魔王として、ヤマト王国に……人族に戦争を仕掛ける!」


 ルカへの相談の後、戦後の片付けも終わりボーンシティに戻った魔王軍の主要メンバーの前で、魔王として今後の方針を発表した。



「「「……」」」


 ところが、今までの対話路線から突然の方針転換に衝撃を受けたのか、誰一人として俺の言葉に口を開く者はいなかった。


 この場には、これから戦う相手と同じ種族であるジンやコリアたちもいるので、気まずさもあるのだろう。


 元は仲間同士……普通なら戦いたいとは思わないよな。


 なので、重要な事は行っておかないとな。



「今回の侵攻決定にあたり、俺の個人的な想いが大きい事から、君たちの戦争への参加は無理強いしない。


 少しでも戦いに迷う気持ちがあるのなら、残ってもらって構わない。


 例えその結果、俺一人になったとしても……俺は一人で人族たちと戦うつもりだ。



 ただ……


 君たちが……みんなが、一緒に戦ってくれたら……


 非常に心強いし


 ……嬉しい」


 最後は魔王としてではなく、仲間としての素直な俺の想いだ。



 共に戦い、ここまで来たのだ。


 出来れば、最後になるかもしれないこの戦いでも、みんなと一緒に戦いたい……。


 その思いが伝わったのか、一人の人物が俺の言葉に答えるように、口を開いた。



「それなんですが……「じ、実際に戦争を起こすには何かと準備が必要なので、それまで猶予がある! なので、急いで答えを出さず、ゆっくり考えて欲しい!」……」


 代表して話し出したリン……。


 しかし、覚悟して話した筈なのに、いざリンの返事が思わしくない言葉から始まると、答えを聞きたくない思いで、思わず話の途中で割り込んでしまった。



 我ながら、なんとも情けないチキンハートだ。



「魔王様……」


「そうだ! 今日はみんな頑張ってくれたお陰で我々魔王軍は勝利する事が出来た! それを祝して、ボーンシティを上げて戦勝会を開かなくてはな!」


 尚も何かを話そうとするリンの言葉を遮る。



 俺ってこんなにも臆病だったのか……。



「ですから……」


「あ! もちろん俺のポケットマネーから費用は出させてもらうから! それだけみんなの働きには普段から感謝しているんだ!」


 最早魔王としての喋り方すら忘れ、素の話し方に戻っている事さえ気付かない俺は、尚も話続ける。


 側から見たら何とも滑稽な姿だろう。



「あの……」


「それから!」


「だあぁ!! しつこい!! もう俺らの中でその話の結論は出てるんだよ!!」




「……へ?」

 

 何度目かのリンの言葉を遮る俺に業を煮やしたジンが、思いもよらない言葉を発した。


 その内容を全く予想していなかった俺は、思わず間抜けな返事を返してしまった。



「実は先程……魔王様不在の場でその件について、私どもだけで話し合ったのです」


「……」


 リンの説明を理解出来ず、沢山のハテナマークが頭の中に浮かび上がる。



 ……どう言う事ですか?


 既に話し合ったって……俺の考えは今初めてみんなに話したのに、一体どうやって?



 そこでふと、何やら自慢げな表情の三人組が目に止まった。


 ルナーレ、ミルカ、アルスの三人だ。



「先程ダッチ様との戦闘を終えた魔王様を見たルナーレさんたち三人が『魔王様はきっと一人で人族軍と戦うつもりです』と言って来たのです」


 リンのその言葉に三人に視線を戻せば、いつもいがみ合っているのに、こんな時だけ俺の視線に気付いて、わかっていますよ、と言わんばかりに全く同じタイミングで深く頷く。


 なんだかんだで仲の良い三人である。



 今更何でわかったんだとは思わない。


 むしろこの三人だと言われて納得出来た。


 何故なら、どうやってるのかは知らないが、彼女たちに俺の思考と言うプライバシーは存在しないからだ。


 泣くべきかな? それとも喜ぶべき?


「うーん……嬉し泣き?」


 ミルカさん……普通に脳内の言葉に返事するのはやめて欲しい。



「魔王様が私どもに一緒に戦って欲しいと仰られたのは予想外でしたが……私どもの結論は変わりません。ルナーレさんたちの話を聞き、満場一致で決まった事……それは」


「もちろん! 俺たちもヤマト王国との戦争に参加させてもらうぜ!」


 リンの言葉を引き継ぎそう言ったのは、意外な事に、一番に不満を言うと思っていたジンだった。


 ジンの言葉を肯定するように、他の魔王軍の面々も深く頷く。



 でも……。


「本当に……良いのか?」


 特にジンやコリアは同じ人族。


 ルナーレに至ってはかつてはその王家の第二王女様だったのだ。


 やはり、同種族同士で争うなど、本当はしたくない筈。


 周りの仲間の意見に流されて、同意しているだけなんじゃないか?


 特にジンなんかは、アカリたんかヒカルたんが賛成すれば、簡単に意見を変えそうだし……隠しているようだが、明らかにジンに惚れているコリアもまた然りだ。


 ルナーレも最近は変態が目に余るせいで忘れがちだが、本当は聖女と呼ばれ、国民を大切にしていた王女様だったと聞く。



「ハッ! それは俺たちが同じ人族だから言っているのか? だとしたら……ふざけるなよ!」


 しかしそんな俺の思考を、ジンの重く……怒りの籠った言葉が否定した。



「ジンさんの言う通りです! 私たちはこのボーンシティで共に暮らし、一緒に苦楽を共にして来た仲間……いいえ、最早『家族』と呼べる存在じゃないですか!」



 家族……


 ジンの言葉に続き語られるコリアの言葉に、思わず胸が熱くなる。



 前世の記憶がない状態で突然こんな体で戦場にぶち込まれ、そこからは訳もわからないまま必死に生きて来た。


 そんな中出来たのが……最初の家族で最愛の妻、ルカレットだ。



「この街には、魔族や人族だけじゃなく魔物も共に暮らし、一緒に沢山の問題を乗り越えて来たことで生まれた……種族を超えた絆があります! 


 それは同じ種族なんかよりもずっと大切で、硬い絆で結ばれた繋がりなんです!!


 私たちは……この街に住む全ての住民は……皆さんを、『家族』だと、思っています!!」



 それがいつの間にか、家族と呼べる存在がこんなにも……増えていたのか……。



「ご主人様……私たちの事を思ってくれているのはわかりますが、これが私たちこの街に住む者たち……更には魔王様の庇護下にある魔族の、総意なのです」


 そう言って渡された前世の記憶でタブレットと呼ばれていた物に似た端末。


 そこにはヤマト王国への進軍に、賛成か反対の2つの得票数が表示されており、圧倒的得票数で賛成票が表示されていた。



「これは……」


「以前ワッフル王国のビューティフルキングを決める為に作ったシステムを利用して、魔族領内の全魔族たちの意見を収集出来るように改造した物じゃ」


 そう言いながら現れたのは、ワッフル公国の鍛治師国宝でトゥライトの祖父であるゴルズ・ワッフルだった。



「ウッス! 魔王さ……アイタッ!?」


「おバカっ! 魔王様になんて口の聞き方してるんですか! ……オホホ、ご無沙汰しておりますわ、魔王様」


 その後ろには髭国宝カロッソ・ワッフルと筋肉国宝ローソ・ワッフルの国宝夫婦も居る。



「お前たち……何故ここに……」


「そりゃ、トゥライトのライブ映像が流れてたらいてもらっても……イテッ!?」


「……私たちワッフル公国は魔王軍の庇護下にあるのです。魔王軍のピンチに駆け付けるのは当然ですわ」


「イテテ……もう戦いは終わったるけどな……グフッ!?」


「……オホホホホ」


 さっきからこの夫婦は何をやってるんだ……。



 要約すると……。


 今回の戦闘を魔族達に見せて魔王軍の強さを理解してもらう為に設置したモニターにトゥライトのライブ映像が流れたので、トゥライトファンのこの三人は、国のトップだと言うのに全てを投げ出してわざわざここまで駆け付けたと……。



 マジで何やってるんだコイツら……。


 こんなのが国のトップとか、ワッフル公国の今後が心配だ……。



 会議室に来るなりタブレットの説明だけしてとっととトゥライトの二人の所へ行き、鼻の下を伸ばして再会を喜ぶ孫ラブお爺ちゃんとドルオタ夫婦に、冷たい視線を送る。



 ……とりあえず、ゴルズの言葉が本当なら、今現在この魔族領の魔族たちは、俺の進軍の意思に賛成してくれている事になると言う訳か……。


 でも、何で?



「あら魔王様、不思議そうな顔ねぇ」


 いや、まぁアルスの言葉は当たってるんだが……骸骨に顔も表情もなくね?



「ふふ、何も不思議な事はないよお兄様。さっきの戦いを見て、ようやく魔族たちがお兄様の強さとカッコよさを理解したって事だもん!」


 カッコよさはともかく、強さか……なるほど、確かに魔族にとって強さは正義……その強さを認めたのなら強い者の意見に従うのは道理か。



「クリス……」


 そこへ今まで黙って俺の後ろで事の成り行きを見守っていたルカが、そっと俺の肩に手を乗せ呼びかけてきた。


「みんなの想いは伝わったよね? なら……今、魔王として……うんん、一家の長として、クリスがする事は一つじゃないかな」


 その言葉に、それまで俺の心を支配していた戸惑いや不安がスーッと消え去り、目の前が開けて見えた。


 そうして開けた俺の視界に映ったのは、皆が皆自信に満ちた表情と瞳でこちらを見つめる仲間たちの姿だった。



 そうか……みんな、俺を信じてくれているんだ……。



 人でもない



 肉体もない



 前世の記憶すらない、骸骨の魔物であるこの俺を……。



 それなら俺はその想いに答えよう。



「俺らはこれより、人族領に戦争を仕掛ける。



 今こそ俺と共に、魔族の悲願を達成しよう!!!」


「「「おおうッ!!!」」」



 こうして仲間達の熱い想いを受け、魔王軍による、人族との戦争が決まったのだった。



「戦争は良いですが、その前に魔王様は今回の膨大な戦後処理を済ませなくちゃいけませんけどね」


「ゔっ……」


 リンの手厳しい言葉で、早くも出鼻を挫かれながら。



「頑張れよ! 魔王様! あとさっきの言葉も忘れてないからな! 野郎ども!! 今夜は魔王様の奢りで、ボーンシティを上げて盛大な戦勝会を開くぞーぉ!!」


「「「おおぉぉおおおぉぉう!!!」」」


「おっ、おう……ほどほどにな」


 ジンの言葉でこれまで貯めた貯金が無くなることを覚悟して。



 まぁいい……俺は戦争をすると決めたのだ。



 その為には必ず勝利しなくてはいけない!



 仲間との……家族との、笑って暮らせる未来の為に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ