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ボーンライフ  作者: ユキ
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魂のライブ

 本体との交信が必要最低限に制限された。


 これから敵の総大将であるダッチとの戦闘が始まるので、不必要な情報を遮断して戦闘に集中する為だ。


 戦場に残された分体である俺たちに任されたのは、この場に残ってリンの指示の元、敵の反魔王派軍を無効化する事である。


 そしてリンからの指示は、敵を無力化しつつなるべく一箇所に纏めて時間稼ぎをしろとの事だった。


 だが、それもなかなか難しくなってきている。

 


 今も目の前に迫る敵と戦闘を始めた所だが、最初の油断していた時やその後の混乱した時と違って、今は鬼族の風神フウカと雷神コウキの参戦により敵も体制を立て直し万全の状態で戦闘を行っているからだ。


 その為、敵もかなり抵抗するようになり、一体を倒すのにもかなりの時間がかかるようになっている。


 しかも、数で負けているこっちは同時に複数体の敵と対峙しなくてはいけない為、この体のスペックでは無力化どころか、やり合うのもかなり厳しい状態だ。


 敵を殺しちゃいけないってのが一番のネックなんだよなぁ……。




「いける! 3人がかりならこの異様に強い骸骨兵どもでも倒せるぞ!!」


 敵の無力化に手こずっている間に加勢した別の魔族により、3人を相手にしなくちゃ行けなくなった俺は、敵の猛攻で押され始め、それによって調子付いた敵は更に攻撃に激しさを増す。



 クッ! ……このままでは時間稼ぎをするどころかやられる。


 別の分体に助けを求めようにも、どこも同じように劣勢で加勢するどころではない。



「アースバンプッ!!」


 その時、2人の魔族と交戦している間に後衛役の敵の1人が地面に手を付き発動した魔法により、俺の立っている地面が突然隆起し、一瞬体勢を崩された。



「そこだぁ!!」「死ね」


 体勢の崩れた俺の魔核目掛け、すかさず左右から敵の持つ武器が振り下ろされる。



 俺はここまでか……。


 必死に迫り来る攻撃を避けようと体を捻る自分とは別に、冷静に死を覚悟する自分がいる。


 まぁ、死ぬって言っても痛みもなく、ただ本体に意識が戻るだけだから特に怖くもないからだけどね。



 しかし、その死は訪れる事はなかった。



 バリバリバリっ!!


「ガハッ……」「ぐわぁ!!」


 俺を殺すべく振り上げられた敵の武器。


 そこへどこからともなく飛来した雷が落ち、2人の魔族を黒焦げにした。


 好機と見た俺は、味方が突然の雷で倒れ唖然とする後衛役の敵へと駆ける。


 俺に気付いて咄嗟に反撃しようとする敵の武器を拳でいなし、そのまま懐へ入って敵の腹部に強烈な一撃を入れる。


「ゔっ……」


 その一撃で敵が気絶した事を確認した俺は、周囲を警戒しながらも先程敵を倒した雷が来た方角を見る。



 幾百の戦闘により立ち込める土煙の間……それは一瞬見る事が出来た。


 進化した俺の動体視力なら一瞬でも十分全貌を理解出来る。



 そして……見なければ良かったと後悔した。



 何故ならそこには……。


 ギターを弾きながら雷を周りに撒き散らし、いつの間にか出したスタンドマイクで熱唱する雷神コウキと、バックダンサーのようにコウキの曲に合わせて気持ち良さそうに踊り、同じく旋風を周りに撒き散らす風神フウカの姿。


 そして、完全にライブステージへと変形したゴーレムの上で全力のステージを披露するトゥライトの二人と、ステージの周りで盛り上がるトゥライトファンたちの最前線で鎧を解除し本気のオタダンスを披露するジンの姿があったからだ。



 ……俺たちが命懸けで戦ってる時に、コイツら何してんの?


 一気に無くなるやる気とジワジワと溢れ出す脱力感。


 瞬時にこの情報は分体たちへと伝わり、そのせいで動きの鈍った数百の分体たちが隙をつかれ倒される。



 一気に形勢が悪くなる魔王軍。


 こんな事ならさっきやられた方がマシだった。



 マジでなんなんだよコイツら……。



  *****



 二組はまるで共演し、一つの素晴らしい作品を作るようにそのパフォーマンスをどんどん過熱させていく。


 パフォーマーも、それに合わせて踊る観客も、全員のテンションが最高潮になろうとする中、一人だけ巣に戻った人物……ヒカルがいた。


「どうして僕、こんな所で敵と一緒にライブしてるんだっけ……」



 きっかけは最初にアカリのスキルを100%の力で発揮させる為にジンさんの元へ辿り着くと同時に始めたライブだった。


 僕たちのライブでファンの人たちのテンションを上げてもらい、そして上がったテンションを僕たちへの応援に変え、アカリのスキルの力に変える。


 それによって僕のスキルも無限の力を発揮し、ジンさんの目の前でその力を使いカッコよく敵を倒す!



 ……その為のライブの筈……だった。



 だけど……。


 

「お前ら……最高にイカすなぁ!!」


 ライブの最中、スピーカーから響くような大きな声でかけられる言葉。


 出どころを探しみたらそれは簡単に見つかった。


 先程までジンさんと戦っていた筈の敵の主要メンバーである雷神コウキが、どこから出したのかスタンドマイクを手にこちらに良い笑顔でサムズアップしていたのだ。


 ジンさんはと言うと、戦闘そっちのけでファンのみんなに混ざり僕たちのライブを観戦している。



 僕たちが見たのを確認したコウキは、「イェーイ」と声を上げると、僕たちの音楽に合わせて手に持つギターをかき鳴らし出した。


 正直ライブ中も違和感はあった。


 なんだかいつもより流れる音楽に迫力と深みがあったのだ。


 それはこの人が僕たちのライブに即興で音を合わせ、演奏してくれていたからだ。



 でも、敵の筈のこの人がどうして……?


 僕たちが呆気に取られていると、それまで僕たちの曲に合わせるように演奏していたギターが、いつの間にか全く違う音楽へと変わっていた。


 それは未だ流れてる僕たちの曲を盛り立てる音から、自分が主役となり僕たちの曲がただの脇役へと化したからだ。



 そんな芸当が出来るなんて……この短時間で僕たちの曲を全て理解したって言うの?


 いまだ一曲目の途中……全てを聞いた訳じゃない。


 それなのにこの人は、まるで全て知っているかのように僕たちの曲に合わせ、更にその上を行く演奏をしている……。



 圧倒的な音楽の才能の差……。



 ただ、彼の本気はこんなものではなかった。



「だけど、俺たちにはまだまだ……遠く及ばないぜ!!」



 その瞬間……



 世界は彼のギターに支配された。



 正確にはコウキの演奏するギターの音色が僕たちの耳を通し、脳に直接響く程の音色で奏でた結果起きた錯覚だった。



 それは音だけではない。


 コウキの周りでは音楽に合わせて華麗に舞う風神フウカの姿があったのだが……。


 それまでは舞い踊る姿は風魔法を使っているのだろう……まるで僕たちのように重力を感じさせない妖精のダンスのような神秘的な動きだったのだが……。


 コウキが本気を出した瞬間からその動きは代わり、僕たちのようにただフワフワと踊るだけでなく、動きの中に鋭さが加わり、それがメリハリとなって見ている者の目を釘付けにさせたのだ。



「これが本当のパフォーマーさ!」


 演奏もダンスも僕たちの上を行くパフォーマンスに釘付けになる僕たちに、コウキはとても良い笑顔で言った。



 これは……パフォーマーとして完全に負けている……。


 アカリも僕と同じように感じたのだろう。その表情はとても険しい。


 ワッフル公国のアイドル国宝として……みんなが慕い、好きでいてくれるアイドル、トゥライトとして……自分たちが披露するこの曲には絶対の自信と思い出があった。


 アイドルをやる事になってから二人で考えた曲とダンス……それはトゥライトとして一緒に歩んできた歴史そのもの。



 それをこの二人は簡単に凌駕してみせた……。



 ふと見れば、スキルの影響でアカリの体から漏れ出るオレンジ色の魔力の光が弱まっていた。


 それはアカリのスキルで強化された僕も同じ。



 つまりは、僕たちトゥライトのファンの人たちも、彼らのパフォーマンスが僕たちより凄いと感じた、証だ……。



「お前らのパフォーマンスは素晴らしい……だが、所詮は胃の中のカエル!! 上には上がいるんだぜ!!」


 コウキの言葉が胸に刺さる。


 僕は……僕たちトゥライトは……この程度の存在だったんだ……。



 その時耳をつんざくほどの大声が会場に響き渡る。


「うっせぇぇ!! お前がどれだけスゲェパフォーマーだろうと、俺たちの一番はトゥライトの二人だ!!」


 それは僕が一番尊敬する人の言葉だった。


「トゥライトのライブは心を熱くし、その笑顔は全てを癒す……俺たちの最高のアイドルなんだ!! だからアカリたん! ヒカルたん! 俺たちの為に顔を上げて笑ってくれ!!」


「「ッ……」」


 その言葉に自分がいつの間にか俯き、地面を見つめていた事に気付く。


 漏れ出る声からアカリもそうだったのだと伝わってくる。



「そうだそうだ!! トゥライトは俺たちの最高のアイドル! どれだけ凄いパフォーマンスを見せようがそれは変わらねぇ!」


 彼に続くように沢山の僕たちを応援する声が響き渡った。


 恐る恐る顔を上げれば、そこには僕たちを力強い眼差しで見つめるファンの人たち。


 その瞳は僕たちを信じてくれている事が伝わってくる。



「私たち……こんなにもファンの人たちに愛されているんだね」


 その言葉に横を向けば、アカリの体は眩しい程にオレンジ色の光に包まれていた。


 それはファンの人たちがそれだけ僕たちを応援してくれていると言う……証。


 同じように水色に輝く僕の手を取ったアカリに僕は頷き歌い出す。


 応援してくれるファンの為……何よりも僕たちを一番に信じてくれるジンさんの為に!!



 それはこれまでで一番気持ちを込めたライブだった。


 自分たちの為じゃない……ファンの人たちを想い、歌い踊ったライブ。



 それは会場で踊るファンの人たちとも一体となり、これまでのライブでは感じた事のない程の高揚感と熱量を生む。



「こ……これは……」


「スゴイですぅ〜」


 その熱に、先程まではトゥライトの曲をアレンジし、支配するように演奏していたコウキとフウカもその手を止め、思わず見惚れる。


 トゥライトの二人と一体となったこのライブはまるでダイレクトに感情を訴えかけ、そして感情を揺れ動かす……言うなれば『魂のライブ』。



「いよっしゃぁ!! こりゃ乗るっきゃないだろう!!」


「うん!」


 そのライブに開化された二人は、トゥライトのライブを盛り上げるように演奏を始め、踊り舞った。


 こうして出来上がった即興のユニットは更に会場を沸かせ、熱狂の渦に包み込む。



 そうして出来上がった光景がクリスの分体が見た光景だった。



 そしてヒカルもまたふとシラフに戻る。



 あれ……僕たち戦争してるんじゃなかったっけ? っと。

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