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ボーンライフ  作者: ユキ
108/196

両軍対峙②

「……私の力不足ですみませんでした」


 魔王軍へと戻りながら隣を歩くリンは申し訳なさそうに謝った。


 だが、アレは初めから話し合いなどするつもりなどなく、ただの周りへのパフォーマンスだった事は明らかだ。


 それはリンもわかっているだろうが、その真面目で責任感の強い性格が自らを攻めてしまうのだろう。


 だが、その真面目な性格は過去を悔やむのではなく、魔王軍の未来の為に使って貰わなくちゃな。



「気にする事はない。それよりあの小柄な男は何者だ?」


「それが……あの男については調査してもその素顔どころか経歴もなく、いつの間にかランドの側に仕えていたとしかわからなかったのです」


 案の定、他の仕事の話をふればしっかり答えてくれる真面目な友。



「そうか……アイツは、何かある。きっとこの戦いで何か仕掛けてくるだろう。戦闘が始まれば俺は手が離せなくなるから、不測の事態が起きた時は全てリンに任せたぞ」


「ハッ! 承知いたしました魔王様」


 その言葉に先程までの落ち込んだ姿はなく、頭の中ではいくつもの対策か考えられているのであろう、いつもの知的で頼りになる我らが参謀の顔へと変わっていた。


 これでリンは大丈夫だろう。



 ドッゴーーーン!


「クソがァァアア!! あのクソアマどこ行ったぁ!! ぶっ殺してやる!!」


 その時背後から爆発音と共にそんな怒鳴り声が聞こえて来た。


「ハァー……」


 その声を聞いて明らかにめんどくさそうに溜め息を吐くルカ。


「アイツの事はこれ以上ルカが相手をしなくていい」


「でも……」


「大丈夫。アイツと遊びたいって言ってる奴らがいるから、任せよう」


 俺の言葉に心配そうにしていたルカだが、前から来る人物たちを見て途端に安心した表情になる。



「そこかァァァアア!! 待ちやがれぇ!!」


 スー……。



 ドンッ!


「ッ!? 何だテメェ!! 邪魔すんじゃねぇ!!」


「アラ、そんな事言わないで私たちと遊びましょうよ」


「そうそう! 私とは同じ元四天王のよしみなんだから、ちょっと遊ぼうよ」


「遊ぶと言っても、アナタは私たちにボコボコにされるオモチャになるだけですけどね」



 ランドが吠えると共に動き出したアルスとミルカ、ルナーレの3人は、魔王軍に戻る俺たちと入れ替わるように前へと進み出ると、突撃して繰り出すランドの拳を文字通りアルスのその身を持って受け止めた。


 相変わらずの頑丈さだなぁ……。


 と言うか、以前の四天王レベルの強さを持つ俺の一撃を受けた時は多少なりとも痛がっていた筈だが、曲がりなりにも元四天王ランドの怒りに任せた本気の一撃を受けて、涼しい顔してるってどうなの?


 むしろ殴ったランドの方が一瞬痛みで顔を歪めてたぞ?



「ふっ……ざけるなぁ! ゴミクズ共がぁぁ!!」


 ガッ!


「はいはい、私たちが魅力的だから遊びたくてはやる気持ちはわかるけど、ここじゃみんなの邪魔になるからあっちでやりましょう……ねッ!」


 ブンッ!!


 怒りに任せて再び拳を突き出すランドの攻撃をその身で受け、怯むどころか平然と腕を掴んだアルスは、そう言って誰もいない北の方角にランドをぶん投げた。


「それじゃ、私たちはあっちで犬っコロちゃんと遊んでくるわね」


「ちょっと遊んだらすぐお兄様とお姉様の所に戻ってくるね!」


 元気よく手を振りランドの飛んで行った方向へと歩き出すアルスとミルカ。


「……駄犬の一匹くらい、処分しちゃっても構いませんよね……」


 その後ろには完全にキレた目でブツブツ恐ろしい事を呟き二人に着いて行くルナーレ。


『せめて両足を落とす程度にしときなさい』


「はいッ! ご主人様!! 行ってきます!」


 先程のランドの発言で未だ怒りおさまらない俺もそんな物騒な言葉を念話で返すと、とても良い笑顔になったルナーレは元気よく二人に並び歩いて行った。



「さて、聞いての通り交渉は決裂した……そしてどうやら向こうはアルスたちの攻防で呆けているようだ……なら待ってやる義理はない! 彼らを出す!!」


 その瞬間は先程まで静かだった後ろの獄森がざわめいた。


 獄森を知っている者ならそれまでの異変に気付けただろう。


 獄森の近くにこれだけの人が集まっているのに、森が静かだった事を……。



 彼らは木々の間から現れた。


 ボーンシティの守護者……。


 ()()()5()()の俺の分体である骸骨兵たちが。



 本来ならこらだけ近くに獲物が固まっていれば獄森の凶悪な魔物たちが歓喜して群がった筈だ。


 それが一切顔を出さず、静かにしていたのは、森に潜む彼らに怯え、森の奥へと逃げて行ったからだ。



 だが、それは彼らの強さを知っている獄森の魔物たちだからこその動き……。


 今相対する反魔王派の軍は、彼らの強さを知らない……。


 だからこそ笑った。


 先程まで呆気に取られ固まっていたが、現れた骸骨兵たちをバカにし、戦場に笑いが満ちる。



 自分たちよりも多い兵士の登場でも……。



 その兵士が前進を続け自分たちの目と鼻の先まで来ていると言うのに……。



 魔族にこき使われるだけの、戦闘ではたいして役に立たない骸骨兵だからと舐めてかかる。



 ましてや今回は制圧が目的なので、武器を待たせていない。


 その為ただの骸骨が歩いて近づいてくるのだから余計だろう。



 その結果、前線の多くの魔族たちは骸骨兵たちの攻撃で一瞬で意識を失い地面に倒れる事となった。



「「「……へ?」」」


 その光景に呆ける反魔王派の魔族たち。


 しかし、その一瞬が命取りとなる、次々と魔族たちが倒れていく。



「ゆ、油断するなぁぁああ!! コイツらつよいぞぉぉおお!? ガハッ!? ……」


 今更遅い。


 最初の攻撃で一気に数百の魔族が意識を失い、残った魔族もその光景を見て混乱の渦となり次々と倒れていく。


 俺の分体が宿る骸骨兵をただの骸骨兵と侮った報いだ。



 進化した事で、スキルも進化した。


 スキルの名前は『魔王の命令』

 その能力はほとんど同じだが、操れる数が進化する前の1000体から一気に10倍の1万に増えている。


 ただ、それまでと違い1万の骸骨兵が全て俺と同じ強さになる訳ではない。


 1万全てを操る場合、一体の強さは普通の魔族程度になってしまう。


 だが、逆に今回のように半分の5000体なら強い魔族程度……。


 1000体なら四天王クラス……。


 100体なら俺と同じ強さで使徒する事が出来る。



 今回は5000体の分体を使徒しているので、強い魔族程度だ。


 強い魔族が集まったとは言え、その強さにバラツキがあり数でも劣る反魔王派では、まともにぶつかったら厳しい戦いになるだろう。


 ましてや今は油断して仲間を減らした挙句、混乱してまともに戦う事が出来ない状態。


 そんな状態で俺の分身たる骸骨兵に勝つのは不可能だ!



 このまま一気に残りの魔族たちも片付けて形勢を確かなものにしたかったが、そう上手くは行かなかった。


 ビューーン! 


 ドゴーーーン!


 突如攻める骸骨兵たちの中に現れた竜巻と降り注ぐ雷に、被爆地にいた骸骨兵たちが竜巻によって木っ端微塵にされ、雷によって黒焦げにされたのだ。



「これ以上ぉあなたたちの好きにはぁ、させませんよぉ〜」


「ハーハッハー! 骨の髄まで痺れさせてやるぜぇ!」



 竜巻と雷の消えた場所からそれぞれ現れたのは額に一本のツノを生やした男女だった。


 先程の攻撃からも十中八九鬼族の英傑、風神フウカと雷神コウキだろう。


 風神フウカと思われる人物は、間延びする喋りがが特徴の長い碧の髪に袖の長い白に黄緑の柄が入った振袖をきたスレンダーな女性で、その振袖を降るとそこから旋風が発生して巻き込まれた骸骨兵を粉々にして行く。


 対して雷神コウキと思われる人物は、黒髪のウルフヘアーに黄色いメッシュの入った髪、目にはサングラスに黒と黄色の着物、黒と黄色のギターといったスタイルの人物で、手に持つギターを掻き鳴らすとそこから雷が発生し、周囲の骸骨兵を黒焦げにして行く。


 そこらの強い魔族には劣らない筈の骸骨兵をいとも簡単に蹂躙するとは、流石鬼族の英傑と言った所だな。


 これ以上被害が増える前に……。



「ホレホレ、痺れるだろぅ〜……おっ? ちょっ、どこ行くんだよ」


「あれぇ〜、骸骨兵なのに逃げるんですかぁ〜?」


 圧倒的強さで次々と骸骨兵を倒していく鬼族の英傑二人から一斉に距離を開ける骸骨兵たち。



「ちっ、俺ら鬼相手に鬼ごっこでもしようってか? ……楽しそうじゃねぇか! やってやるぜぇ……うお!?」


 そんな骸骨兵たちを楽しそうに追いかけようとしたコウキだったが、突然現れた全身黒い格好をした騎士の神速の攻撃を受け止める事で止められる。



「危ねぇ〜なぁ、なんだお前」


「全然危なそうに見えなかったけどなぁ? あの攻撃を防ぐとかオジサン自信無くすわ……もう帰っていい?」


 せっかくのカッコいい全身甲冑姿も、着る人のやる気のなさで台無しにしてしまう相変わらずの我らが四天王、黒騎士ジンである。



「ははは、オッサンおもしれぇなぁ! さっきの斬撃もかなりのもんだったし、そんな事言わず俺と楽しくシャウトしようぜ!」


「ウゲェ……そんなテンション無理だわぁ」


「コウ君、遊んでないで倒しちゃってぇ〜……はぅ!?」


 ドゴーーーン!!


 その時フウカの真上から巨大な拳が振り下ろされ、その威力で爆音が響き渡る。



 巨大な拳の先にはその拳に相応しいどこかで見た事のあるような鮮麗された機械美伴う巨大なゴーレムがいつの間にか存在していた。


「ジンさん! お待たせしました!」


「さぁ、みんな! トゥライトライブの始まりだよ!! 応援よろしくぅ!!」


 巨大なゴーレムから、スピーカーで拡張された可愛らしい二つの声が戦場に響くと、今度は軽快な音楽がなり始めた。



「「「うおおぉぉおおぉぉおお!!!」」」


 アカリたんの掛け声に合わせてトゥライトロボの後ろにクロッソたちを先頭にドワーフの戦士改めて、トゥライトファンクラブの皆さんが現れると、手には武器ではなく何やら光る棒を持って野太い声援と共にあの独特なダンスを踊り出す。


 ここ戦場ですけど……。



 キュッ……。


「よっしゃぁぁあ!! 覚悟しろ黄鬼キキ君! シャウトだろうとダウトだろうと何でも相手してやるぜぇえ!!」


 兜の上から鉢巻を縛ったジンは、いつの間にか鎧の上から羽織ったはっぴをはためかせ、トゥライトファンクラブとお揃いの格好になると、先程までのやる気のなさなど嘘のように途端にハイテンションになって吠えだした。



「あは! 何だこのオッサン、マジおもしれぇ! テンション爆上げだわ!!」


 ドン!!


「全然面白くないですぅ〜! フウカのピンチなんですからぁ、助けて下さぃ〜!」


 巨大な衝撃音と共に20mもある巨大なトゥライトロボの拳が弾き返させると、それまで拳が刺さっていた地面の中からプンプンと怒りを露わに無傷のフウカが現れた。



「悪い悪い、フウ姉なら大丈夫だと思って」


「ブー! コウ君はぁ〜、女心をわかってません〜! そこは男としてぇ、何がなんでもぉ助けるものなんですぅ〜!」


「はいはい……そんな事より、今回の相手はなかなか楽しめそうだぜ」


「はぁ……もういいですぅ。でもぉ、そうみたいですねぇ〜。不意打ちとは言ぇ、フウカの風の防御を超えてぇ、服に汚れを付けるなんてぇ、久々ですぅ〜」


 普段のフウカの苦労が滲み出るような会話だなぁ……。


 それは置いといて、あの攻撃を喰らって服が汚れた程度とか、フウカの纏う風の防御はかなり厄介だな。



 そうこうしている内に、被害を避けるように戦場でそこだけポカリと大きな空間が出来、両者その空間の中央で対峙する。



「よっしゃぁ〜! 上げてくぜぇぇ!!」


 バリバリバリッ!!


 ジンの見事な変わり様にノリに乗ったコウキは、その手に持つギターを先程よりも激しく掻き鳴らすと、旋律と共に四方八方に先程より巨大な雷が飛び出した。


 これじゃフウカにも当たるだろうと思われたが、雷飛び散る中フウカは一切雷に当たる事なく、それどころかまるで踊るようにクルクルと回り、その度にたなびく長い袖から無数の旋風が発生し雷に混ざり辺り一体へ飛び出して行った。


 雷と旋風が縦横無尽に飛び交い、その中心でコウキが激しいギターを弾き慣らし、それに合わせてフウカが舞い踊る。


 そのど迫力の光景に圧倒はされるが……悲しいかな……コウキとフウカの発生させる雷と旋風の有効範囲内には誰も居ない為、ただ二人がど迫力な演出をしているだけになっていた。


 何がしたいのだろう……。



 そして対する我らが四天王ジンと、アカリたん、ヒカルたんはと言うと……。


 いつの間にかゴーレムが変形してステージになっており、その上でライブを始めたトゥライトの二人の曲に合わせて、ジンは一番最前列でいわゆる渾身のオタゲーを他のトゥライトファンクラブのドワーフたちと披露していた。


 ここ……戦場だよ……ね?


 こうして四天王ジン&四天王アカリ・ヒカル対、鬼族の英傑、風神フウカ&雷神コウキの戦い? が始まったのだった。

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