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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
96/103

ー96ー 飛空艇







 プロペラが回る音が耳を叩き、吹き抜ける風が頬を撫ぜる。眼下には遠く離れた位置に広大な大地がある。


 僕達は今、ヴァントゥールに向けて空の旅を楽しんでいた。


 飛空艇が動き出してからしばらく経つが、僕達はその間ずっと周囲の様子を眺めていた。



「さすがにちょっと飽きてきたね」


「景色もそんなに変わり映えしないしね」



 結構な速度で流れていく景色を眺めながらマキナちゃんに返す。なにかしらの防壁でも張っているのか速度の割には体に当たる風の勢いは強くない。



「どう? マキナちゃんは怪しいヤツ見かけた?」


「ううん、今のところなんにも」



 バンバッハにいたことがバレていた以上、パンネアからの飛空艇で狙われる可能性も高いと思って警戒していたけど今のところそんな気配はない。


 いくらなんでも初日に騒ぎを起こしはしないということだろうか。



「やっぱり気が抜けてくる数日後らへんが可能性としては高いかな?」


「そうだね。僕達の取り越し苦労ってのが一番なんだけど」



 こうやって話している間も警戒は続けている。部屋に近づく人間がいないか常に感知して確認している。



「問題はさ、フィル狙いじゃない怪しいヤツもいそうなことだよね」


「どういうこと?」



 特に心当たりがなかったのか不思議そうな顔でマキナちゃんが問いかけてくる。



「僕達は個室を選んだけどさ、お金に用意できなかったのか雑魚寝部屋に寝泊まりしている人もいるでしょ?」


「うん」


「作業員の人が言ってたみたいに盗みが目的で近づいて来るのもいそうだなって」


「ああ~、確かにそうかも」


「富裕層がいる階への階段は警備がいるけど、僕達のいる階と雑魚寝部屋はそのまま通れるしね」


「まあ普段からスリも警戒しているからそれと変わらないかもしれないけど、紛れて襲ってこられても嫌だよね」



 思い当たったのか面倒そうに顔をしかめて嫌そうに呟く。



「後は雑魚寝でストレスがたまって絡んでくるヤツも増えそうだよね」


「部屋から出る時はなるべく一人でいない方がいいかもね」



 一人でいるよりは複数人でいるほうが絡まれにくいだろうし。



「それでさ、飛空艇内でちゃんと戦えそう?」


「できないこと無いけど戦いにくそう」


「全力は出せ無さそうだね」



 魔法が主体の戦い方のマキナちゃんがその気になれば、少なからず周囲になにかしらの影響が出る。飛空艇の中でそんなことをすれば場合によっては墜落してしまう。



「もし敵が来たときは撃退はソラとフィルに任せるよ。私は索敵とサポートに集中しておく」


「お願い。ほんと何も起きないといいんだけど」






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「戻ってきたか」


「ただいま」


「結構スピード出るんだね」



 部屋に戻るとフィルが椅子に腰かけくつろいでいた。感知していた通り特になにも起きなかったようだ。



「ねえ、私お腹すいたんだけど。そろそろご飯にしようよ」


「ふむ、まあいい時間か。どうする? 二人は飛空艇は初めてのようだし値は張るが食堂に行ってみるか?」


「あ、行きたーい。折角乗ったんだから一度くらい飛空艇の料理食べてみたいよ」


「僕も行ってみたいかな」


「よし、なら行くとするか」



 フィルが椅子から立ち上がり扉を開く。先導するように進むフィルについて歩いていく。


 食堂内は割と人で賑わっていた。値段が高いと聞いていたからそれほど人がいないと思っていたがそうでもない。



「結構人がいるんだね」


「富裕層というほどではないがそれなりに金を持っている連中だろうな。私達と同じ階にいるだけで富裕層と呼べる人間も多少はいるはずだ」


「そうなんだ」



 適当な席に陣取って料理を注文する。しばらく待って届いた料理は、値段が高めなだけあってかなり美味しかった。


 念のため食事中も周囲を感知し続けていたが、時折スリを企んでいそうなのがいただけでトラブルもなく部屋に戻ることができた。


 こうして飛空艇での初日は無事に終えることができた。



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