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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
92/103

ー92ー パンネア






 戦闘した場所を離れて数日。


 フィルが言うには今日の内には港街に到着できるみたいだ。


 あの後もしばらく警戒しながら進んできたが、襲撃はあれ一回きりでその後の旅路は平穏そのものだった。


 とはいえ今後も襲撃が無いとは言い切れないので、常に周辺を感知するようにしている。


 この前の暗殺者との戦闘を思い返しため息をついた。



「ため息なんかしちゃってどうしたの?」


「この前の戦いを思い出してたんだ。最近ちょっと調子に乗ってたんだなって」


「どういうこと?」


「森を出てから戦った奴らってさ、苦戦はしても倒せないとは思わなかったんだ。ちょっと厳しいかなって思ったのはウィンドドラゴンくらい」



 チェイサーウルフの変異個体に蜂の魔物の変異個体、あとはウィズコングも。万全の状態であったり、急いでなければ苦戦はしても一人で倒せたはずだ。



「ドラゴンみたいな別格の魔物に勝てるかどうかわからないのは技量の介在する余地がないし、身体能力のぶつけ合いみたいなところもあるから仕方ないなって思う。

 でも同じ人間に明確に技量で負けるのはちょっとショックかな」


「しかし倒せたかはわからんが撃退できただろう。そこまで大きな差は無いと思うが」


「正直二人がいなかったら厳しかったと思う。最後の一撃だって二人の魔法で体勢を崩してなかったら避けられてたかもしれない」


「まあ確かに、森を出てからあんなに強い人は初めてみたよね」


「ゴラオンとかバンバッハの組合員を見る限り大して強い人っていないんだなって思ったけど、たまたま僕らが見た事ある人が弱かっただけで、フィルやアイツみたいに強い人もしっかりいるんだ」



 森を出てから強い人を見かけることがほとんどなかったから自分はかなり強いんじゃないかと慢心してしまっていた。


 異世界召喚という通常とは違う要素があるから普通の人より成長は早いようだが、僕より強い人だってたくさんいるはずだ。それこそ僕とは違って正しく召喚された他の三人はとんでもなく強いかもしれない。



「いっかい鍛え直さないとダメかな。異能の練習を少ししてるくらいで最近は気が抜けてたかも」


「森にいた時にくらべたらあんまり鍛えてないもんね」


「そうなのか? 現状でも十分強いし襲ってきたアイツもかなり上澄みの部類だと思うが」


「でも一対三でなんとか撃退だよ? なんか悔しいし次は一人でも勝てるくらいになりたいかな」






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 





 港町 パンネア


 なんとか日が落ちきる前に街に到着することができた。結局ここまでの道中に襲撃があったのはあれきりだった。


 パンネアは飛空艇の発着があるからか敷地がかなり広い。それにヴァントゥール繋がる経路の一つだからかおそらく商人であろう人をたくさん見かけるし、そういった人達を泊めるための宿も多い。



「ようやく着いたねー」



 マキナちゃんが腕を上げて大きく伸びをする。肉体的にはそれほど疲れていないようだけどずっと歩きっぱなしだったからな。



「明日の朝一番でヴァントゥール行きの予約をとる。今の時期ならそこまで混み合っていないはずだが念のためな」


「了解。僕達は飛空艇に乗るのは初めてだしそこらへんは任せるよ」


「まずは寝床だな。家を確保してある、こっちだ」



 言いながらもフィルの足は淀みなく動いている。バンバッハの街を往復するためには必ずこの街を通るからな。毎回宿をとるのではなく家を用意しているみたいだ。


 

「結局あれから襲ってこなかったね」


「怪我が酷くて動けないんじゃない?」


「王子の暗殺なんて一人でやるとは思えないんだけどな」


「着いたぞ。今回は極秘に出てきたからな、家の管理を任せる人員も連れてきていないんだ。悪いが掃除を手伝ってくれ」



 着いた家は周囲に比べて少し大きめなだけの普通の一軒家だった。フィルがバンバッハに来る前に使ったきりだから埃がたまっているみたいだ。


 この程度だったら念動力ですぐに終わるかな。窓を開けて埃を全て外に動かすだけで済みそうだ。



「僕がやるよ。ちょっとそこの窓から離れてて」


「はーい」


「何をする気だ?」


「まあ見てて」



 開けた窓から大量の埃が飛び出てくる。一か所にまとめて圧縮したそれを浮かべてマキナちゃんに焼却をお願いする。



「お願い、マキナちゃん」


「うん」



 家の中は全ての埃を取り除いたので普通に暮らす分には問題ないレベルまできれいになった。



「二人がいれば掃除の仕事がかなり楽になるな。今日はもう寝て疲れを癒すぞ」



 家の中には使用人用の部屋もあったのでそこを借りて僕達も明日に備えて休むことにする。なんだかんだ疲れがたまっていたのかすぐに眠りについた。


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