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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
89/103

ー89ー 襲撃






 太陽が顔を見せたかどうかの時間にバンバッハの街を発った三人が街道を歩いていた。行き先はヴァントゥールへの定期便がある港街だ。



「港街までは大体どれくらいで着くの?」


「このペースで進めば十日かかるかどうかといったところだ」


「結構遠いな。途中に街や村なんかはないの?」


「あるぞ。それほど大きくはないがバンバッハとの行き来する人間の為の集落がな」



 バンバッハでヴァントゥールへ行く為の道を調べる予定だったソラとマキナは、急遽フィルと一緒にヴァントゥールに向かう事にした為その辺の知識が全くなかった。



「途中に出てくる魔物で強い奴って何かいる?」


「いや、多少強い奴はいるが迷宮にいた奴らに比べれば大したことはない」


「ふーん」



 ソラとマキナが知りたい事を一通りフィルに確認し満足した為か三人の間に沈黙が落ちる。質問攻めが終わったと判断したフィルは今度は自身が気になっていたことを尋ねる。



「そういえば二人がヴァントゥールに行く目的は何なんだ?」


「基本は観光かな~、元々私は住んでた村の外を知りたくて旅してたから」


「ソラは?」


「僕も似たようなもんだよ。後は古代魔法を調べてるからってのも理由かな」


「古代魔法を?」


「うん、ちょっと理由があってね」


「ふむ……」


「?」



 ソラ達の目的を聞き出したフィルが何か考え込み話が途切れる。急に黙り込んだフィルを不思議に思い互いに顔を見合わせるソラとマキナ。



「フィル、どうかしたの?」


「なに、もしかしたら力になれるかもしれないと思ってな」


「本当!? 助かるよ」


「あくまで可能性だ。伝手を辿っては見るが古代魔法となると国の管轄だ。二人には世話になったしやれるだけやるがあまり期待しないでくれよ」


「うん、わかってるよ」



 思わぬところで古代魔法について知れる可能性が出てきて喜ぶソラ。可能性の話だというフィルにわかってると答えるソラだが期待を隠しきれていない。



「良かったじゃん、ソラ。あれから何も起きてないけど次はどうなるか分からないもんね」 


「なんだ? 何の話だ?」


「ああ、実は…… ?」



 ソラ達が進む街道の先に黒い人影が立っている。


 道の真ん中に立ちじっと自分達を見つめている人影を不審に思い言葉が途切れるソラ。



「どうしたソラ?」


「いや、なんかあそこの人がずっとこっちを見てくるから」


「? 誰も見当たらないが……」


「は? 正面にいるでしょ。ほら、こっちに来てる」



 自分達に向かってくると二人に伝えるソラだが、二人には見えていないのか一向に話が伝わらない。


 走ればすぐという距離まで両者が近づいた瞬間、人影が音も無く踏み込み彼我の距離を瞬時に詰めてきた。



「っ!?」



 未だに気付いていないフィルに向けていつの間に取り出したのか鋭い短剣の切っ先を振り下ろす。無防備なフィルの首筋に刀身が迫る。



「危ないっ!!」


「何っ!?」


 フィルの首筋が掻き切られる直前、咄嗟に反応したソラが短剣を握る手を弾き飛ばし防ぐ。防がれた事に動揺した声を上げた襲撃者は大きく飛び退り距離を取った。


 ほんの数瞬前に自身の命に危険が迫っていたとは思ってもみないフィルは突然大きく動いたソラに怪訝な顔をしていた。



「さっきからどうした? 変だぞソラ」


「怪しい奴がフィルを襲ってきた。まだこっちを狙ってる!!」


「なんだテメェ。なんでオレの事が分かる?」



 襲撃者が苛立たし気に疑惑の声を上げる。やや低めだが男性の声にしては高く、襲撃者が女性であることを示していた。



(こいつ…… 相当強い。今のは何とか防げたけど本気を出さなきゃタイマンなら勝てないかも)


「フィル、私達には見えないけど何かが襲ってきてるみたい。油断しないで」


「ああ、どうやら私を狙ってるらしいな」



 フィルが警戒して自身の周囲に風を巻き起こす。ウィンドドラゴンの物とは比べるべくもないが簡易的な風の鎧を形成した。



「チッ…… メンドくせぇな。 そっちの王子様を殺るにはまずテメェから始末しなくちゃなんねぇようだな」


(王子様?)


「どういう絡繰りかは知らねえがオレの一撃を防いだんだ。今度は本気でいくぞ!!」



 しっかり注視していたはずのソラの視界から襲撃者が消える。地面スレスレまで体勢を低くした襲撃者がソラの足元に瞬時に接近し喉に向けて短剣を勢いよく突き出した。





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