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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
87/103

ー87ー 脱出






 休憩を終えて出立の準備を整えたソラ達は扉の枠組みのようなものを眺めていた。不思議な材質の金属で出来ており、三人が横に並んでも余裕で入れるほどの大きさをしている。



「これが?」


「ああ、地上に移動するための扉だ」


「どうやって使うの?」


「特別な事をする必要はない。近づけば勝手に起動する」



 フィルが一歩踏み出す。それまで立っていた地面とは違い、そこには枠組みと同じ材質で出来た床が広がっている。足を踏み入れた途端空間がブレるような音を立てて、反対側を見渡せていた扉の奥が暗くなる。



「これってさ……」


「うん、ちょっと前にも見たよね」



 扉の奥には遭難した際やこの階層に来た時に通ってきた空間と同じ景色が広がっていた。



「本当にこれ通って大丈夫なの?」


「私も初めて見たが問題ないはずだ。階層主の部屋にある不思議な扉のオブジェは一方通行だが地上に繋がっていると組合で聞いた。まさかあの空間と同じようなものだとは思わなかったが」


「少し探ってみたけど大丈夫そう。さっきまでの無秩序な空間とは違って整然としてる感じがする」


「悩んでいても仕方がないか。じゃあまた皆で一緒に入ろう」



 三人同時に扉に入る。今までと違い謎の空間で漂うことは無く、瞬く間に地上に到着していた。



「ここは……」


「すごい、もう着いてる」



 扉を抜けたソラ達が立っていたのは迷宮の出入口付近だった。出入口とちょうど向かい合わせの壁から出てきた形になる。今まさに迷宮に入ろうとしている人達がソラ達の視界に入る。瞬時に戻ってきたことに意識が追いつかず周囲を観察しながら立ち尽くす。頻繁にというほどではないが深い階層から地上までショートカットしてくる人間もそこそこいる為、特別誰かから注目されることもない。



「とりあえず組合に行こうよ。そこまで長い間潜っていた訳ではないと思うけど時間の経過が分かりづらかったからどれくらい日数が経ったか確認しておきたい」


「感覚的にはおそらく十日は経っていないはずだがどうだろうな」



 戻れるかどうかも分からない状況から解放されたことによる安堵からか軽い足取りで上がっていくソラ達の全員の表情は明るい。建物を出た三人はその足でそのまま組合まで向かっていった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「どういうことだ!?」


「で、ですから今日は―――」



 フィルが組合の職員に食って掛かる。その剣幕に怯んだ様子でたどたどしく職員が答えている。



「まさか潜ってから半年も経ってたなんてね」


「多分あの空間が原因だよね、時間の流れも通常とは違ったのかな。それにしてもフィルってばどうしたんだろ?」


「わかんない、もしかしたら何か急ぎの用事があったのかもね。あの職員の人も可哀想だしちょっと止めてくるよ」



 ヒートアップしたままのフィルの肩に手を置き制止するソラ。



「フィル、職員さんに当たっても仕方がないよ。別にこの人だって意地悪で言ってるわけじゃないでしょ。嘘を吐く意味も無いんだし」


「―――っ。ああ、そうだな。申し訳ない、取り乱してしまった」


「い、いえ」



 職員に謝るフィルだがまだ怯えているのか返答が少しぎこちない。



「ほら一旦戻ろう? 宿は借りたままにしてきたの?」


「いや、数日潜るつもりだったからな。引き払ってきた」


「そっか。ならもう一度宿を取りにいかないと、僕達もそうだから一緒に探しに行こう?」



 多少は落ち着いたがまだショックを受けた様子のフィルを連れて組合を出たソラ達は街の雑踏に紛れていった。





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