ー85ー 迷宮探索に耽る日々 ー19ー
その巨体の重量を感じさせるかのような重い音を立て、墜落した衝撃で地面を大きく揺らすウィンドドラゴン。
傷だらけになりながらも陰ることのなかった生命力の輝きが嘘であったかのように無くなり、迷宮の奥深く、自身の住処であった大地でその骸を晒していた。
吹き飛ばされている状態でウィンドドラゴンに止めの一撃を放ったソラは、今尚その状態にあった。これ以上吹き飛ばされるのを避けるべく、体を捻り地面に背を向けていた体勢から垂直になり力を逃がす。そのまま緩やかな速度で落下していき息絶えたウィンドドラゴンの傍らに降り立つ。
しっかりとその目で死んでいる事を確認したソラは、息を吐きながらウィンドドラゴンに寄りかかり力なく地面に座り込んだ。
「あ~、疲れたぁ」
少しの間そうして顔を俯けながら休んでいると不意に頭を持ち上げ、何かを引き寄せるかのように右手の人差し指を動かした。
そうして間もなく、ソラの視線の先から力なく宙に浮かんで移動しているフィルと、リラックスした状態で同じように浮いて移動しているマキナの姿が現れた。
「お疲れ、ソラ。ごめんね、フィルのこと運んで貰っちゃって」
「ううん、マキナちゃんこそフィルを庇ってくれて助かったよ」
宙に浮かんでいたフィルが優しくその場に横たえられる。身じろぎ一つせず目を開かないがゆっくり胸が上下しているのでただ気絶しているだけのようだ。
「よっと」
マキナがソラの横に腰を落とす。
「フィル大丈夫かな? ちゃんとダメージ行かないように庇ったんだけど」
「調べてみたけど大丈夫そうだよ。疲労はありそうだけど大きな怪我も無いし」
「良かった」
心配の為か不安気な表情が見え隠れしていたマキナが胸をなでおろす。
「それにしてもソラ、よく無事だったね。正直あの体当たりでソラは戦闘不能だと思ってた」
「結構ギリギリだったよ。腕なんか両方とも折れちゃってたし」
「え? でもそんな風には見えないけど」
マキナが空の腕を注視するがそこには折れた様子など見当たらなかった。
「治したからね。レン君を助けた時の事が役に立ったよ」
「治療までできるようになったんだ」
「とはいってもかなり集中する必要があるしそれなりに時間もかかるんだ。回復魔法みたいにはいかないね」
「それでも十分凄いよ。私は回復魔法に適正が無かったから……」
そう言って落ち込むマキナの耳に呻き声が届いた。
「ううん」
「お、そろそろフィルが目覚めるかな?」
「ここは……?」
「起きた?」
「マキナ? そうだ、ウィンドドラゴンは!?」
目が覚めた当初は状況が掴めずにいたフィルが、意識が覚醒した瞬間戦闘中だった事を思い出し起き上がる。
警戒し周囲を見回した所で少し落ち着き、ソラとマキナが凭れ掛かっているのがウィンドドラゴンであることに気付く。
「ウィンドドラゴン!? 倒したのか!?」
「うん、どうにかなったよ。軽くは調べてみたけど体は大丈夫?」
「ああ、問題ない」
「良かった~、安心したよ」
無事を確認して喜んでいたソラとマキナの前で、フィルが唐突に頭を下げた。
「すまない、迷惑を掛けた!!」
「急にどうしたのさ、頭を上げてよ」
「ウィンドドラゴンを狙っていたのは私にも関わらずまるで役に立てなかった。それどころか足を引っ張り最後には意識を失う始末だ」
「もういいって、こうして皆生き残ってるんだから」
ソラが立ち上がりフィルの肩を掴んで頭を上げさせる。笑いかけながらウィンドドラゴンに指をさした。
「それよりほら、さっさと解体して魔核を取り出しちゃおう。残りの素材は持てる分だけ採って肉はここで食べちゃおうよ」
「―――ああ、地上に戻ったらできる限りの礼をする。ありがとう」




