ー84ー 迷宮探索に耽る日々 ー18ー
「ふうっ… ふうっ…」
ウィンドドラゴンの猛攻をマキナちゃんの援護があったとはいえ凌ぎ続けていたフィルは、息を荒げながらもウィンドドラゴンを睨み臨戦態勢を維持していた。
「ごめん、遅くなった」
「ソラ!! 無事だったか!!」
「なんとかね。フィルも無事で良かった」
「すまない、私の見立てが甘かった」
沈んだ声で謝罪をしてくるフィル。想定以上にウィンドドラゴンが強くて、僕達を危険にさらした事に落ち込んでいるみたいだ。
「落ち込んでいる暇はないよ!!」
「ぐっ」
僕に謝罪した際にウィンドドラゴンへの警戒を解いてしまったのか、ウィンドドラゴンが攻撃態勢に入っている事に気付いていないフィルに警戒を促す。
接近して喰らい付こうとしてきたウィンドドラゴンに反応が遅れたフィルを掴んで離脱する。無理やり動かしたからか苦しそうな声を出していたが我慢してもらおう。
続けざまに尻尾を振り回してきたが紙一重で避ける。フィルは先程の噛み付きを避けた際に遠くに飛ばしたから安全圏に逃げられている。
追撃に翼を叩きつけようとしているウィンドドラゴンに雷の魔法が飛んできた。今までと同じように暴風の障壁を一点に集中させて防ごうとしているのを、 ”天の川” の応用で束ねられていた暴風の向きをかき乱して障壁を薄くする。
厚くなった障壁を消すことはできなかったが、マキナちゃんの魔法は薄くなった障壁を貫きウィンドドラゴンに直撃した。
「グァアアアアアっ!!」
障壁の影響で威力が少し減衰してしまった為落下させることはできなかったが、防げるはずの魔法が直撃したことによる同様が大きく、ウィンドドラゴンに接触するチャンスが生まれた。
「フィル!! 今だ!!」
「っ!! おおおお!!」
魔法が直撃したことに驚いていたフィルだが僕の合図に気を取り直し、ウィンドドラゴンに向かって突撃する。僕も同じように突撃し、叫んでいるウィンドドラゴンの下顎を思いきり蹴り上げた。大きく開いていた口が勢いよく閉じ、首が衝撃で上に伸びあがる。その間にフィルが先程切り裂いた胴体に再度攻撃し傷口を広げる。
少しずつダメージは与えられているが倒すまでには至らない。早いところ弱点の鱗を見つけたいがおおよその位置は分かっても特定することができない。
このまま追撃を仕掛けたかったが、魔法の威力が減衰していた分復帰も早く深追いは禁物と距離を取った。
ウィンドドラゴンの口内に風が集まる。 ”竜の息吹” の前兆だ。
「フィル!! 僕が盾になって ”竜の息吹” を防ぐ。後ろからついてきて撃ち終わりの隙を狙ってくれ!!」
「頼む!!」
ウィンドドラゴンの口内から風が漏れ出る。視線はこちらをしっかり捉えていて解放の瞬間を見計らっている。一直線に飛行する僕の後ろにはフィルが少し遅れて飛んでいる。
大きく開かれたウィンドドラゴンの口から ”竜の息吹” が解き放たれた。最初の時よりさらに威力がありそうだ。
僕に向かって飛んできたそれに体当たりするかの如く飛び込み、 ”天の川” で四方八方に分散させて防ぎきる。
”竜の息吹” を放った硬直の隙を突いて、フィルが僕の陰から飛び出した。
「ハァッ!!」
脳天に一閃。気合の声と共に剣が振り下ろされ頭に刀身が食い込む。しかし脳にまで届かなかったようで、勢いよく首を振られてフィルが頭から振り払われる。
「うわっ!!」
仕返しとばかりに爪を光らせ引き裂こうとするウィンドドラゴンに再度マキナちゃんの魔法が直撃する。追いついた僕と戻ってきたフィルが攻撃を仕掛けるが、何度も喰らって慣れたのか怯みはするもののすぐに立ち直り反撃してきた。
ウィンドドラゴンを中心にとてつもない爆発が巻き起こる。瞬間的に発生したために ”天の川” が間に合わなかった。あまりの衝撃と爆風に僕もフィルも吹き飛ばされる。
不味い。フィルは今の爆発で気絶してしまったらしい。このままでは地面に墜落すると焦るがマキナちゃんが気づいてくれたのかカバーに入ってくれている。
フィルの事は心配いらないと安心するが僕が体勢を整える前にウィンドドラゴンが接近してきていた。今の一撃は殆ど自爆のようなものだったらしく全身から血を流している。このままだとすぐに追いつかれる。体勢を整えるのは諦めて反撃の為に ”流れ星” の準備をする。
先程の爆発の瞬間、遂に見つけた。首の根本のその中央、周囲の鱗が重なり隠すように守られている奥の鱗が弱点だ。
ただ ”流れ星” では周囲の鱗に守られている弱点に攻撃が届かないかもしれない。とはいえ体勢を整えて直接攻撃を仕掛けるのも難しい。準備しつつもどうやって弱点を攻撃するかと考えていたら閃いた。
今まで一発一発それぞれ放っていた ”流れ星” を重ね合わせる。初めての試みだが今まで使っていた ”流れ星” の応用だからそこまで時間はかからなかった。
吹き飛ばされている状態で目前に迫っているウィンドドラゴンに狙いを定める。
「行け!! ”輝く彗星” !!」
束ねた ”流れ星” がウィンドドラゴンに向かって突き進む。狙いを違わず直撃した ”輝く彗星” は周辺の肉ごと弱点の鱗を吹き飛ばした。
「ッ―――」
断末魔の悲鳴を上げることもなく徐々に速度を落とし地面に墜落する。ウィンドドラゴンは完全に事切れていた。




