ー79ー 迷宮探索に耽る日々 ー13ー
すべての肉片が消滅しても警戒を解かず周囲を念入りに調べる。見逃した肉片は無いか確認するがそれらしきものは感知できない。ウィズコングが復活する兆候も無いし、流石に再生する元が無くなってしまえばどうしようもないということだろう。
「あ゛~疲れた」
「なんだったのあいつ」
「まさか体がバラバラになってもまだ生きてるとは思わなかったぞ」
なんとか倒しきれたという安堵から緊張が解けて地面に座り込む。強さそのものは時間はかかるにしろ僕一人でどうとでもなる相手だったのに、あの再生力のせいで随分手古摺ってしまった。
「フィルはウィズコングの事を本で見たって言ってたけどさ、その本に倒し方は載ってなかったの?」
「特徴は書いてあったが倒し方は載っていなかったな。そもそもあの馬鹿げた再生力の事も載っていなかった」
「あんなの一番の特徴じゃん、載ってないなんてことあるの?」
「ダメージを与えられなかったから再生を確認できなかったんじゃない?」
「いや、討伐されたという話も幾つか見た。単純に今の個体が通常とは違ったんだろう」
「そっか、あの再生力は異能だったのかもね」
「なんにせよソラがいてくれて良かったよ。私じゃあいつを仕留めきれなかった」
「それを言うなら僕だって二人がバラバラにしてくれなかったら消滅させられなかったよ」
「休憩はそろそろ終わりにしてあの樹に向かうぞ。またあんな奴が出て来られても困るからな」
立ち上がり軽く叩いて服に着いた汚れを落とす。目の前にそびえ立つ大木に向かって足を動かす。
中に入るようなところがあるのか、それとも幹をよじ登っていかなければいけないのか。あの穴と似ているということは、空間になにか変化があるはずだから通常とは上がり方も違うかもしれない。
至近距離まで来たが間近で見ると本当に大きい。遠くから確認していなければこれが一本の樹だとはわからなかったろう。
「さて、近くに来てみたはいいが上に進む方法は……」
「ソラ、何か感知できないの?」
「この樹自体がかなりの魔力の塊だから上手くいかないな。直接確認するしかないや」
「とりあえずこの樹を一周してみるぞ」
最初に居た地点の丁度裏側辺りまで進んだところ内部に入れそうな大きな穴を見つけた。安全確認をしてから中に入ってみる。
樹の内部は発行しており明るかった。少し大きめの空洞になっており、上に進むための道のようなものも無い。ただ僕達が入ってきた穴とは反対側にもう一つ穴があった。
「ねえ、あれ」
「うん、あれが道かな?」
「他にそれらしきものも見当たらない。とりあえず近づいてみるぞ」
近づいて穴を見てみるとその先には形容しがたい色をした空間が広がっていた。
「これって……」
「私達が迷宮の壁を破壊した時に吸い込まれた……」
「私もここで遭難する前にこの空間を通ったぞ」
「ってことは戻れるかも!?」
「少なくとも何かしらの進展はありそうだな」
「他に何も見つからないし入ってみるしかないよね。入る時は逸れないように皆で一緒に入ろうか」
ここに来た時にこの空間を通ったのだから反対にこっちから入ったら元の階層まで繋がっているかも。
「覚悟はいい?」
「ああ、尻込みしていても始まらない」
「うん、僕もいいよ」
「よし、それじゃあ行くよ!!」
マキナちゃんが僕とフィルの手を掴んで穴に飛び込んだ。僕とフィルもマキナちゃんの勢いに引っ張られて穴に入った。
「相変わらず落ちているのか上がっているのかわからないな」
「二人共絶対手を離しちゃ駄目だよ」
「わかってる、こんなところで逸れたら二度と会えないよ」
「フィルは前回はここからどうやってあの階層に行ったの?」
「しばらくこの状態でいたあと空間に空いた穴に吸い込まれたと思ったらあの階層に吐き出されていたな」
「私達と同じか。また穴に吸い込まれるまではこのままかな?」
「そう待たなくてもいいみたいだね」
「え?」
「さっきから同じ方向に引き寄せられてる」
「わかるのか?」
「うん、さっきの階層で空間の異常を観測したからかも」
「ホントだ!! 穴が見えてきた!!」
マキナちゃんが示す先には前回と同じような穴が見えた。結構な勢いで引き寄せられている。この速度ならすぐに穴までたどり着くだろう。
「知ってる階層に出られるといいんだけど」
「さっきより悪くならないことを祈るしかない」
引き寄せられる勢いそのままに僕達は穴に吸い込まれた。




