ー71ー 迷宮探索に耽る日々 ー5ー
「ここは三階層じゃ……」
「ないよねぇ」
蜂の魔物の階層を抜け、上に上がった僕達だったが明らかに見覚えの無い階層の風景にげんなりとした気持ちを隠せずにいた。
吹き抜ける風、たなびく草に照りつける太陽。遮るものなど何も無い広大な大地が僕達を迎えてくれた。地下深くに潜っているはずなのに屋外に出るという不思議な現象にこんな状況でなければマキナちゃんと二人で興奮を隠せなかっただろう。絶賛遭難中の今は全くもってそれどころではないが。
「ここに来るのはもっと探索を楽しめる状況が良かったよ」
「僕も今同じこと考えてたよ」
「愚痴ってても仕方ないか。私の目には壁なんて全くなくて地平線しか見えないんだけどソラは何か感知できる?」
「ぜ~んぜん。少なくとも僕が感知できる範囲ではないね。上に上るための階段も感知できないな」
「上と繋がってるなら壁なりなんなりあってもおかしくないと思うんだけど」
「というか天井もないよね。普通に空があるし」
そう、天井もないからそもそも階段が繋がる先もない状態だ。いくら時空間がおかしいといってもこれにはちょっとびっくりだ。
「とりあえずじっとしてても状況は改善しないし進んでみようか」
「そうだね、なんか目印つけておこうよ。空間が繋がってても分かるように」
「何を目印にする? ちょうどいいものあったっけ?」
「こうするの!!」
言うが早いかマキナちゃんの魔力が急速に高まる。マキナちゃんの足元から土が盛り上がり、天に向かって凄い勢いで伸びていく。あっという間に僕の目の前には土の柱がそびえ立っていた。
「こうしておけば遠くから見てもわかりやすいでしょ」
「まあ確かに」
「よし、じゃあ出発しよ」
土の柱を背にして先に進むこと数十分。感知している中である程度この階層の事が分かってきた。まずここは殆ど地上の草原と変わらないということだ。虫やら小動物やらが普通に生息してる。違う事といえば出てくる魔物が迷宮産なので幾分強いということだろう。
「それにしてもラッシュカウもいて良かったね。食料には困らなそう」
「とは言っても肉だけじゃ生きていけないよ。野菜類も必要だし早めに脱出しないと」
途中で見つけたラッシュカウを仕留めて、火にかけながら休憩する。飢死は避けられそうだけどだからと言って肉のみでも体に異常をきたす。その前には地上に戻りたい。
火が弾ける音を聞きながら、脂が滴り落ちる肉に齧り付く。調味料も何もないので肉本来の味しかしないがそれで十分食べられる。
肉を食べ終えた後は二人で少しの間休憩をした後、再度行動を開始した。
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「うぇっ、この反応は……」
「どうかしたの?」
草原の中に所々木が増え始めた辺りを歩いていると、先程嫌に成程見た魔物を感知した。蜂の魔物だ。
「さっきの奴らがまた居た。ラッシュカウを捕まえてどこかに向かってる」
「どこかに巣があるのかな? それっぽいのは見当たらないけど」
「尾行てみようか。なにかしら発見があるかもしれない」
奴らはこちらには気づいていないようで、簡単に後を追うことができた。ラッシュカウ一頭を複数の蜂で運んでいる。ラッシュカウが結構重いせいか複数の蜂で運んでいてもあまり速度が出ていない為、気づかれないよう距離を離していても見失う心配が無い。ラッシュカウは毒か何かで昏倒しているのかぐったりしていて動く様子が無い。
「ん? なんだ?」
途中までは上空を飛行してラッシュカウを運んでいたが、ある地点で急に降下し始めた。そのまま地上に降りてラッシュカウをどうにかするのかと思ったら、その勢いのまま地面に消えてしまった。
「どういうことだ? 感知では普通の地面のはずなのに」
慌ててその場に向かってみると大きな穴が開いていた。遠方から感知するだけでは気づかなかったが、目視することで理解できた。空間が捻じれて下の階層と繋がっている。一度見たことで何故だか感知することができるようになった。この大穴は下の階層にあった奴らの巣と繋がっているようだ。
「なにこれ?」
「下の階層の奴らの巣に繋がってるみたい。さっきの階層はあの蜂しか見なかったから食料はどうしてるのか疑問だったけど、こうやって調達してたんだね。てっきり迷宮の魔力だけで生きていけるのかと思ってた」
「え? でも私達が上った階段この程度の距離じゃなかったと思うけど」
「なんか空間が捻じれて繋がってるみたい。この穴以外の地面の下はずっと土だし」
「は~、よくわかんないことばっかり起こるねここ」
「でも少しはヒントになったよ。穴に限らずともこんな感じで上の階層と繋がってる何かがあるかもしれない」
「そうかも、こんな外みたいな階層なんだし普通の階段じゃないのかも」
「ちょっと視点を変えて探索してみようか」
この大穴を見たことがきっかけで空間の捻じれも感知できるようになったし今度はそれを中心に探してみよう。




