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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
70/103

ー70ー 迷宮探索に耽る日々 ー4ー






「鬱陶しい!!」


「キリが無いよ!!」



 前方から僕達を嚙み殺すべく蜂の魔物がたくさん飛んでくる。どうやら僕達が侵入していることに気付かれたらしく、次から次へと新手がやってくる。数は少ないが後ろからも追手がやってきていて、そちらはマキナちゃんが対処してくれている。



「吹き飛べ!!」



 前方から迫りくる魔物達に ”流れ星” をお見舞いする。


 魔物達を迎撃するべく一発だけではなく多数放たれたそれは、こちらに向かってきていた魔物の大半を吹き飛ばした。辛うじて難を逃れた魔物達は仲間の残骸に目をくれることなく僕達に襲い掛かってくる。


 至近距離にまで接近してきた魔物は僕を捕まえ、その大顎で喰らいつこうとしてくるが捕まるまえに横をすり抜ける。すれ違いざまに魔物達の頭を掴んで捩じり切る。


 頭を捩じる動きを念動力を使って増幅し、千切り取ったそれを他の魔物達に振りかぶった。勢いよく投げつけられたそれが魔物の大きく膨らんだ腹部に直撃する。投げつけられた頭と一緒に腹部が爆散し地面に墜落してくる。


 そうやって襲撃の手を躱しながら、足を止めることなく巣の中を走り抜ける。いくら最短ルートを選んでいるといっても巣そのものが巨大な上に、こうやって魔物達がひっきりなしに襲ってくるので巣に侵入してからかなりの時間が経過していた。



「あれ? なんか襲ってこなくなった?」


「魔物の反応が引いていってる。そろそろ出口が近いから諦めたのかも」


「どっちにしても好都合だよ。早く脱出しよう」



 魔物達が襲ってこなくなったおかげで残りの道中はすぐに踏破できそうだ。



「あった!! 出口だ!!」


「巣を出ても上の階層への階段までは立ち止まらずに行こう」



 出口が見えてきた。外の光が差し込んでいる。魔物達も近くに寄ってきていない。僕達はこのままの勢いで巣を飛び出した。



「よし、外に出た!!」


「ソラ、階段は!?」


「見つけてる。こっちだ!!」



 既に感知で階段の位置は把握してある。いつまた魔物の追手が来るかもわからないので、そのまま階段まで走り続ける。


 巣までの距離と階段までの距離が丁度同じ位になった頃、後方の巣から何かが飛び出してきた。僕達の速度より少し速い。このままだと階段に着くまでに追いつかれる。



「マキナちゃん!!」


「わかってる!!」



 マキナちゃんが後方から迫ってくる何かに向かって風の魔法で迎撃した。巣の中でもやっていたような小型の乱気流による飛行妨害を気づいているかのように的確に避ける。僕も ”流れ星” による迎撃を行ったがこれも認識しているようで全て避けられた。


 僕達の度重なる妨害を全て避け、遂にそいつは僕達の目の前に姿を現した。



「なにこいつ?」


「こいつさっきの僕達が避けた魔物か!!」



 さっきまで襲ってきてた蜂の魔物をベースに所々が人間的になった魔物だ。胸部や腹部はそのままに複数の手足が人間の物に置き換わって生えている。頭も造形は人間のものだが顔のパーツが蜂の物になっている。人間の頭に複眼や触角がある。ウルフィンさん達みたいな獣人種とは違って、無理やり人間と蜂を合体させたみたいなアンバランスさがあって、正直かなり気持ち悪い。



「さっきの魔物の変異個体なのか?」


「めっちゃキモイんだけど」



 マキナちゃんも造形に気持ち悪がっている。何しに僕達を追ってきたかはわからないが友好的ではないのは確かだろう。見た目に少し人間の要素が混じっているが元は蜂の魔物だからだろうか、昆虫のような無機質な殺意が肌を突き刺す。



「どうする?」


「無視しようにもコイツのほうが僕達より速い。とっとと仕留めて他の奴らが来る前に上に逃げよう」



 僕達が相談していた間、上空で滞空しながらこちらを観察していた魔物だったが突如弧を描きながら突進してきた。姿が変わった影響でどのような攻撃手段があるのか想像がつかない。



「来るよ、注意して!!」



 僕に向かって突っ込んでくるが微妙に位置がずれている。このままだとただすれ違うだけだけど……。どんな攻撃でも避けられるよう身構える。



「ジジジジ」



 耳障りな鳴き声を上げながら迫りくる。あと少しという距離で特徴的な羽音を立てている薄い膜状の翅の周囲の空気がまるで切り裂かれたかのようになっていることに気付いた。



「不味い!!」



 慌てて身を反らし、翅を掻い潜る。そのまま地面に手を突き、身を反らした勢いを殺さないまま腕力で体を跳ね上げた。


 僕が体勢を整えている間にまた上空に舞い上がっている。あれだけのスピードで飛び回れるなら今の僕の習熟度じゃ空中戦は無理だな。


 

「ソラ、大丈夫!?」


「大丈夫!! あいつの翅に触れると不味そうだ。風の魔法かなにかで切れ味抜群になってる!!」



 先程掠った服の裾の辺りを見る。鋭い刃物で切り裂かれたみたいになっている。あの翅には真正面からぶつかるのは危険だな。



「行け!!」



 そうしている間にもマキナちゃんが氷の弾丸で弾幕を張っている。僕も一緒に ”流れ星” で狙うがその悉くを避けられる。



「マキナちゃん!! あいつ感知系の異能か何か持っていそうだ!!」


「うん、私の風も避けられた!! ソラの技も駄目だったんでしょ?」


「駄目だった。広範囲の魔法でなんとかできない!?」


「やってみる!! でも感知系だったら範囲外に逃げられるかも!!」



 マキナちゃんが魔法の準備に入った。魔力を溜め始めたのに気付いたのか今度はマキナちゃんに向かって飛んでくるのを牽制する。上手い具合に邪魔をできて、先に魔法の準備が完了した。



「まとめて凍れ!! アイシクル・コフィン!!」



 マキナちゃんの魔法により辺り一面氷漬けになるが、マキナちゃんの魔法の範囲も感知できるのか氷に囚われることなく逃げ延びている。



「駄目だっ!! 逃げられた!!」


「範囲攻撃も感知できるのか、厄介だな」



 再度突撃するべく大きく旋回してこちらに向き直ってくる。


 待てよ? 今の僕の出力なら念動力であいつを捕らえられるか? 以前はフォレストクロウを引っ張る程度しかできなかったが、あの時に比べてかなり出力が上がった。それに体表面で力を発動すれば流石にあいつも避けられないはず。


 耳障りな音を立てながら高速で羽ばたき飛行する奴の翅の付け根を念動力で抑える。ギリギリだがなんとか力負けしていない。これなら…… 



「ギィッ!?」


「「え?」」



 高速で飛行中に翅がその場に固定されたため体が耐えきれなかったらしい。抑えた翅の付け根の部分から千切れ、あいつは勢いのまま少し飛行した後そのまま地面に叩きつけられた。思わずマキナちゃんと二人で声を上げてしまう。


 

「何これ? ソラがなんかしたの?」


「あいつの翅を念動力で抑えたんだ。そしたら千切れちゃった」


「一点に急制動の力がかかったから耐え切れなかったんだね」



 地面に転がり藻掻いている魔物を仕留めるべく近づいていく。



「高い機動力に空中飛行、おまけに感知系の異能持ちか大分手古摺ったな」


「上手い具合に無力化できたけど普通にやってたらもっと時間かかってたね」



 最後の最後に余計な手傷を負わないようある程度近づいたところで ”流れ星” で止めを刺す。おそらく変異個体であろうコイツの魔核を抜き取りその場を後にした。



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