ー64ー バンバッハの街
あれから幾つかの街を過ぎ、僕たちは遂にバンバッハの街に到着した。
バンバッハの街はロジーアの街と同じくらいの規模がある。
ロジーアの街は古代遺跡を研究する人が集まってできた街だったが、このバンバッハの街は遺物を産出する迷宮を探索する人が集まってできた街だ。
迷宮は遺物が産出するだけでなく、多種多様な魔物も生息しているらしい。ロジーアの街は成り立ちの経緯から学者の類の人が多く暮らしていたが、バンバッハの街は迷宮に生息する魔物を狙う組合の人や、その人達を相手に商売する人が多く暮らしているみたいだ。
「やっと着いたねー」
マキナちゃんが大きく伸びをしている。道中で合間合間に休憩を挟んでこの街まで歩いて来たが、流石に少し疲れたらしい。
「まずは組合に行こうか。マキナちゃん、迷宮、行くよね?」
「もちろん!」
当然とばかりに元気よく返事が飛んできた。目を爛々と輝かせていて、好奇心が満ち溢れているのが見て取れる。
「なるべく迷宮か組合の近くに宿を借りたいんだけど、空いてるかな?」
期待に胸を躍らせているお転婆娘が飛び出さないよう手をつなぎながら、雑踏の隙間を縫って足を動かす。
道行く人々は多種多様な人種が混在している。僕と同じ普人種やマキナちゃんと同じ森人種、他にも獣人種など千差万別だ。ロジーアの街は大半が普人種で偶に森人種などを見かける程度だったので、こうして色とりどりの人種を見ると新しい土地へ来たという実感が湧いて来る。
この街の特色からかすれ違う人達は戦闘を生業にしているであろう人が大半で、皆が何かしらの装備を身に着けているのが目を引く。
予め聞いておいた組合の場所まで歩を進めている間に色々な物を見た。金属を叩くような音と共に怒鳴り声が聞こえてくる建物や路上で大声で客引きをしている人間。道の真ん中で喧嘩をしている組合員らしき人。(僕も他人の事を言える立場ではないが非常に邪魔だった)
街の規模はロジーアの街と同程度だが、組合の規模はバンバッハの街が圧倒的に上だった。迷宮に潜る人間が多く存在する以上当然なのだろうが、今までとは別格のその規模に圧倒される。
「ロジーアの街のよりかなりおっきいねー。倍近くあるんじゃない?」
マキナちゃんも組合の大きさに舌を巻いているようで、口を大きく開けたまま建物を眺めている。
いつまでもその場で立ち尽くすわけにもいかないので、組合の中を覗いてみる。外観に違わず内部もかなり広く、大量の組合員の手続きもしっかり捌かれている。
「ね、ね、早く手続きしに行こ? 私もう待ちきれないよ」
「わかった、わかった。行くから引っ張らないで」
腕を引くその力に逆らわないようにその場を離れる。広さの分だけ窓口や職員の数も多くそのまま手続きに入れた。
「本日はどのようなご用件で?」
「初めてこの街に来たので、迷宮に潜るために必要な申請をしに来たのと注意事項について聞かせてください」
「かしこまりました。迷宮の探索は通常の狩りにくらべて命の危険が高いので誓約書の記入をお願いします」
「誓約書?」
「迷宮内で何があっても自己責任。もし死んでしまったとしても組合は関知しないというものです」
「組合員同士での殺しがあった場合は?」
「あまりにあからさまで証拠が揃っているのであれば別ですが基本介入しません」
とにかく迷宮内では自分の身は自分で守れということらしい。手渡された書類の空欄に必要事項を埋めていく。
「それじゃあ組合って何してるの?」
「我々も人が死ぬのを良しとしているわけではないので、救難信号があった際に捜索、救出の人員を派遣するなどを行っています。ただその際に救出が間に合わなかったとしても一切責任を負わないということを明確にするための誓約書です」
「救難信号?」
「この後お渡しする組合員証とは別の迷宮探索者用のカードにその機能が含まれています」
「へー、そんなことできるんだ」
「迷宮から採れる鉱物を素材にしたカードで、一種の魔道具になっています。組合員にも申請料がかかるのはこの費用が含まれているからですね」
補足を聞きながら完成した書類を提出する。カードが完成するまで少し待っているよう言われたのでその場を離れて時間を潰す。
「依頼の大半が魔物の素材の採取になってる」
「魔物がたくさん出てくる迷宮がある以上そうなるだろうね」
依頼の内容を眺めながら待っているともう完成したようで呼び出された。
「お待たせしました。こちらがお二人のカードになります。迷宮に入るには必ず必要なので常に携帯しておくようお願いします」
「わかりました。あの、近くにおすすめの宿ありませんか?」
「でしたら……」
最後にいくつか宿の場所を教えて貰い、手続きを終えた。宿を見つけたら早速迷宮に行って見よう。




