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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
62/103

ー62ー 暗躍した男







 石造りの廊下を一人の男が歩いていた。


 目鼻立ちが整っており、柔らかい表情を浮かべている。赤みがかった金髪を揺らしながら歩いてる男とすれ違う侍女達は、皆その男に目を奪われて仕事の手を止めてしまう。



(なんたる失態だ!!)



 浮かべている表情とは裏腹に男の内心は荒れていた。表面上は取り繕っているがもし人の目が無ければ、怒りの表情を浮かべ苛立ち混じりに歩を進めていただろう。



(遺物を回収、破壊する事ができず、所在をおおよそ掴んだ程度で逃げ帰る羽目になるとは)



 男はロジーアの街で火災を企てた男だった。身を隠す必要が無いためかロジーアの街で着込んでいたローブは身に着けていない。


 現在はロジーアの街での出来事を報告するべく男の上司の元に向かっている最中だった。


 時折廊下を曲がりつつも歩みを止めない男の進む先は次第に人気が無くなっていった。周囲に人気が完全に無くなった廊下を進む男は、ある扉の前で足を止めた。


 ノックもせず扉を開け、滑り込むように部屋に入る男。


 部屋の中には、一目で質が高いと分かる重厚な執務机や壁一面の本棚に並べられた蔵書の数々、机の上には書類が山のように積まれている。机の近くにある椅子は後ろ向きになっており背もたれしか見えない。



「来たか、ルファス」



 椅子の向こうから声が聞こえた。椅子が回転し声を発した者の全貌が見える。座っている状態を見ただけでもわかる背の高さ。腕や脚もかなり太く全体的に筋肉質で、彫りが深く鋭い目つきの厳つい顔をしている。


 この男が今ルファスと呼ばれた、ロジーアの街で火災を引き起こした男の上司のようだ。



「では報告を聞こうか」


「はい。今回のロジーアの街に隠されているとされる遺物の回収任務ですが失敗しました」


「何? どういうことだ」



 任務失敗の報告を聞き、部屋の主は視線を鋭くしドスの効いた声でルファスに先を促す。



「ロジーアの街を調査した結果、遺物が古代図書館に隠されているというところまではすぐに掴めたのですが、その後が遅々として進まず時間が過ぎる一方でした。そのため古代図書館を破壊することで遺物を破壊もしくは場所を炙り出そうと考えました。チェイサーウルフの変異個体を街の近くに放ち、混乱を起こさせている間に下準備をし、街の目を外に向けている間に事を済ませようと考えました」


「成程。今のところ聞いてる分にはお前が失敗するとは思えないが」


「チェイサーウルフが想定よりもかなり早く討伐されてしまいました。その影響で十分な準備ができなかったのです」


「なに?ロジーアの街にはチェイサーウルフを短時間でどうにかできるような戦力は無かったはずだか」


「私もそう認識していました。ですが実際にチェイサーウルフは討伐されました。仕掛けておいた召喚陣の起動と繋がりが切れた時間を考えれば、召喚されてからおよそ数時間程度で討伐されました。組合からの増援が討伐したという話は確認しましたので、それを加味すると実際の戦闘時間はもっと短いはずです」


「誰が討伐したかは確認しなかったのか?」


「申し訳ありません。破壊活動を優先した結果もう一つの想定外がおきまして、討伐者の特定はできませんでした」


「もう一つの想定外だと?」


「はい、予定より準備ができていなかったとはいえある程度は進めていたので、チェイサーウルフが討伐された当日の深夜に古代図書館とカムフラージュの為に町全域に火を放ちました。万全ではなかったので火の回りは遅かったですが問題なく古代図書館も燃えて、後は遺物の場所を探るだけとなりました」


「そこまでは速度の差はあれど予定通りに進んでいたわけか。つまり想定外はこの後に起こったんだな」


「その通りです。ロジーアの戦力の調査報告書には載っていなかった人物が空に飛びだし街の火を全て消し止めてしまったのです」


「なんだと?」


「簡単には消し止められないように広く火を放ったのですが、街全てに雨を降らせて鎮火してしまったのです」


「遺物の場所を探る前に火を止められたわけか。だがお前が返ってきた理由にしては弱いな。お前ならそのまま潜伏して調査を続行することができたはずだ」


「ここでもう一つの想定外が起きたのですが、空に飛びだした人物は二人いたのですがそのうちの一人に私の存在が気づかれました」


「お前が気づかれただと!?」



 驚いて思わず大声を出し、立ち上がるルファスの上司。その驚愕に頷きながらルファスは続きを話す。



「その時はたまたまこちらを見ただけで気づかれたわけではないと思っていたのですが、さらにもう一人の方にその男が伝えたところそちらにも気づかれました。そこで確実に気づいていると判断し遮蔽物を利用して逃走したのですが、捉えられている感覚が拭えずひたすら走り続け、その男からかなり距離をとったところで感覚が消えたので、これ以上の潜伏はリスクがあると判断し撤退しました」



 ルファスが話し終え、一息ついているのを横目に考え込むルファスの上司。


 内容を把握し終えたのかルファスに目をやり口を開く。



「驕ったな、ルファス」



 叱責の言葉に黙り込むルファス。



「お前の能力であれば慎重に行動していれば今も気づかれず調査を進められていたはずだ。にも関わらずお前は時間がかかるのを嫌って荒っぽい手段をとった。気づかれないだろうと自分の能力を過信した結果がこのざまだ」


「返す言葉もございません」


「それにしてもお前の存在に気付けるというのはかなり脅威的だ。後で詳細な見た目を下の連中に伝えておけ。その二人は要警戒対象に入れておく。お前の次の仕事も追って伝える。報告が以上なら下がれ」



 頭を下げ部屋を出たルファスは歯を食いしばり苦々しい表情で歩き出したが、周囲に人の気配が増える頃には先程までの表情は幻だったかのように柔らかい表情に戻っていた。




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