ー54ー 鎮火の陰に
急に降り出した雨によって街全体の炎が消えたことにざわつく人々を見ながら、ソラがマキナを抱えてゆっくりと降りてくる。ソラがマキナを降ろしている間にレンとリンが二人に駆け寄る。
「ソラさん!! マキナ!!」
「ソラさん!! 大丈夫ですか!?」
「ん? 大丈夫って何が?」
「だって鼻血が…… チェイサーウルフと戦っていた時も鼻血が出てから急に動きが悪くなっていましたし、それって無理している影響なんですよね!?」
「はは、格好悪いところ見られちゃったね。確かにリンちゃんの言う通りだけど大丈夫、今回はそれほど長い間無理していたわけじゃないからそれほど体に負担はかかってないよ。心配してくれてありがとう」
「やっぱり。私はソラの顔を見れなかったからわからなかったけど無理してたんだね。それにまだ本調子に戻ってなかったんでしょ。いつもならこれ位の時間ならそこまで影響出てないもん」
「まあね。でもだからってあの状況をそのままにしておくわけにもいかないでしょ?」
「それはそうだけど」
「とにかく今日はもう休もうよ。動けなくなるほどじゃないとはいえ疲れちゃったよ。さっきの奴の事もあるしなるべく回復しておきたい」
「そうだね、私は問題ないけどソラは早いところ元気になってもらわないと」
「さっきの奴?」
「ちょっとね、それはまた明日話すよ」
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あれから皆で家に戻った。そのまま就寝するべくレン君達はそれぞれの部屋に、僕とマキナちゃんは借りている部屋に入る。
この部屋はレン君達のご両親が使っていた部屋だそうだ。必要な家具以外は殆ど処分していたようで、ベッドも無かったため初日はリビングで寝たが、ベッドを買ってからはこの部屋を借りて寝ている。
自分のベッドに倒れこむ。騒ぎのせいで変な時間に目を覚ましたが、無理をした影響かすぐに眠気が襲ってくる。変な出来事が続いているし、怪しい奴もいた。早いところ体調を万全にするべく、休んで回復することにしよう。
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何だあいつらは? ローブを着た男は焦燥に駆られていた。悪事を働いても不審がられないような適当なチンピラを放火をするよう操り、消火の邪魔をするべく対策組合にも細工をし、秘密裏に始末していた。ロジーアの街にはこのような災害をどうにかできるような有名な魔法使いもいないことを知っていたため、計画を実行に移した。
そんなほぼ確実に目論見が達成できるはずの計画が、見知らぬ二人の人間のせいで失敗に終わった。国からの情報でロジーアの街や近くの街にいる強者の事を把握していたが、この二人は情報になかった。そんなぽっと出の人間に計画を頓挫させられたことに歯噛みし睨みつけていると、二人組のうちの男がこちらを見てきた。偶然だとは思いつつも少し移動するが、視線が自分から離れないことにローブの男は驚愕した。
ローブの男の魔法で周囲の人間は男に気づくことができない。そのはずなのにかなり距離が離れているにも関わらず自身を認識している。それどころかもう一人の女も男に伝えられて目を向けてきた。教えられても通常は認識できないはずなのに女にも認識されたことで、ローブの男はさらに動揺した。
とにかく視線から逃れるべく陰に隠れながら距離をとるが、建物などを障害物にして視線を遮っているはずなのに自分が認識されている感覚が一向に消えない。ひたすらに距離を取り続けていると遂に感覚が消えた。
実際にはごく短時間だろうが男にはかなりの時間走っていたように感じた。目的の古代図書館にも大した影響が出ていないことを確認し、男は現状では目的の達成は難しいと判断し誰にも知られぬようロジーアの街から消えていった。




