ー43ー チェイサーウルフー3ー
チェイサーウルフと真正面から睨みあう。先程蹴り飛ばされたことで僕を警戒しているのか、臨戦態勢のまま動かない。
吹き飛ばした場所からここに来た速度を考えると、僕と速度はほぼ互角。力に関してはまだはっきりとはしないがおそらくワイルドベアのほうが強い。耐久力に関してもワイルドベアのほうがありそうだが、反応速度がワイルドベアより速いので受け流されることを考えるとそんなに差が無い。
僕がチェイサーウルフの戦力分析をしていると、向こうも腹を決めたのか攻撃の意思を感じる。さて、どう来る?
「ガァッ!!」
左右にステップを踏みながら側面から僕を嚙み殺そうとしてくる。攻撃を避けるため後ろに跳びつつ、狙いを絞らせないよう動くがぴったり僕をマークしてついて来る。
異能で怪我人の延命をしているため、異能の使用可能範囲でしか動けない。精細なコントロールを求められるので普段よりも範囲が狭まっている。
動きに制限がかけられている以上、速度が互角のこいつを引き離せない。僕の前に回り込んで爪を下から掬うようにして振るってきた。
振るってきた前足を爪を避けつつ足場にして、勢いを利用して空中に逃れる。
空中にいる僕に噛みつこうとしてくるが、異能で若干位置をずらしてチェイサーウルフの横っ面にけりを入れる。
「ハァッ」
「グァッ!?」
今のは異能で力を上乗せしていない素の力での攻撃だが、感覚的に多少なりともダメージが入っているみたいだ。反応されなければ耐久力そのものはワイルドベアよりもないみたいだ。
先に着地して態勢を整えられる前に追撃を仕掛けるが流されて距離を取られた。現状だと僕から攻撃を仕掛けに行くのは難しい。向こうが攻撃を仕掛けてくるのをカウンターして、ちまちまダメージを与えていくしかない。
相手もこちらの狙いに気づいているのか不用意に仕掛けてこなくなった。
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戦い始めてからしばらく経った。やはりこちらがカウンター狙いだということに気づいていたようで、後隙の少ない攻撃でカウンターを避けたり、カウンターを叩き潰すように連続攻撃をしてくるなど、対策をしてくるようになった。
今のところ無傷で凌げてはいるが、かなり厳しい。延命に異能を使いっぱなしで集中力が限界に近い。
バリアを解除した影響もかなり出てきている。全身の悪寒は酷くなる一方だし、つい先ほど鼻血もでてきた。ガイカンさん達に手伝ってもらいたいが、僕とチェイサーウルフの戦闘の余波を防いでもらっていた影響で全然回復できていない。この状態で手伝ってもらっても焼け石に水だ。まだマキナちゃんが来る気配もないし困っていると後ろから声を掛けられた。
「ソ、ソラさん。無理して俺達を助けようとしなくていい」
意識を取り戻したレン君だった。
「レン君!? 馬鹿な事言うんじゃない」
「いいんだ、お、俺も他の奴らもいつ死んだっておかしくない。そ、それをなんとか食い止めてるからソラさんに負担がかかってるんだろ?」
「そんなことはどうだっていい!! 喋るんじゃない!!」
「た、助かるかどうかも分からない奴を気にするより、無事な奴らを助けてやってくれ。ソラさんの強さを正確にわかってるわけじゃないけど、俺達を気にしなければソイツを倒せるってことくらいはわかる」
無理をしているからか途切れ途切れにレン君が話してくる。だがその内容は到底受け入れられない。
「冗談じゃない!! 僕は…… くっ!!」
レン君の話に意識を向けすぎていた隙を狙ってチェイサーウルフが襲い掛かってきた。警戒が疎かになっていた僕は反応が遅れた。
噛み付きはなんとか避けれたが無理に避けたせいで体勢が崩れた為、続く前足を避けられなかった。
「うぁっ!!」
「ソラさん!!」
運良く爪には当たらなかったが突進の勢いを乗せた前足が直撃した。勢いよく飛ばされて地面を転がる。
飛んできたチェイサーウルフの踏み付けを辛うじて避けるが、追撃に尻尾を振るってきた。
ま、不味い。体勢を整えられない。このままだと押し切られる。




