ー20ー 旅立ち
「いいなぁー、私も一緒に行きたい」
僕がガトランドまで行くという話を聞いたマキナちゃんが同行したいと言ってきた。この前レントの街まで行ってきたのはガトランドまで旅をする社会勉強のようなものだったのだがマキナちゃんはそのことを知らず、僕が街に行ったのは森の子供たちが一定の年齢になったら行うウルフィンさんの街案内の一環だと思っていたようだ。マキナちゃんは年齢的にまだ行ったことがなかったので便乗して僕にくっついてきたのが前回の同行の理由だった。
「駄目よマキナ。あなた本来は街に行ける年齢じゃないでしょう。この前だって無理行ってソラさんとウルフィンさんに迷惑かけて」
「いいじゃん、私のほうがソラより強いんだし。ガトランドまで行く途中ソラのこと守ってあげれるよ?」
「そういって油断してこの前もソラさんに迷惑かけたでしょう。それに森の外はただ強ければいいってものじゃないの、今のあなたならソラさんの邪魔になるだけよ」
「大丈夫だよ、この前レントの街に行ったとき街のこと色々聞いたし」
「嘘おっしゃい。好き勝手ソラさんとウルフィンさんを引っ張り回したって聞いてるわよ」
僕をそっちのけでユキナさんとマキナちゃんが言い争ってる。正直マキナちゃんが一緒に来てくれれば心強いけど、ユキナさんが反対する理由もわかる。マキナちゃんはいくら強いとはいえまだ子供だし心配にもなるだろう。村にいる人達は皆いい人ばかりだけど、外に出ればそういう人だけではないだろうし。
「もういい! お姉ちゃんの馬鹿!」
「ちょっとマキナ!」
マキナちゃんが怒って自分の部屋に閉じ籠ってしまった。
「ごめんなさい、ソラさん。お見苦しいところをお見せしてすみません」
「気にしないで下さい。ユキナさんが心配する気持ちもわかりますよ」
「本当はあの子の好きにさせてあげたいんですけど」
「レントの街でも色々なものに興味津々でしたからね。今回僕が森の外に出るのが羨ましかったんでしょうね」
「あの子がもう少し大きければこんなに反対もしなくて済んだんですが」
「ユキナさんから見ればまだマキナちゃんは危なっかしいですか?」
「そうですね、あの子は物心がついた時には既にこの村で暮らしていたのであまり警戒心が強くないんです」
「その言い方だとユキナさんは昔は森の外で暮らしていたんですか?」
「はい。普通なら世の中いい人ばかりではないとわかるんでしょうけど、あの子はいい人ばかりのこの村のことしか知らないので… もう少し成長すれば少しは落ち着きも出てくるでしょうし安心できたんですが」
「今はまだまだ好奇心旺盛な女の子ですもんね」
「マキナには悪いけど今回は諦めてもらいます」
マキナちゃんがいないのが少し寂しかったが、その後もユキナさんと話をした後家に帰った。
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出発当日の朝。
手の空いている村の皆が見送りに来てくれている。
「行ってらっしゃい、体に気をつけるんだよ」
「困ったことがあればすぐに戻ってくるんだぞ。無理をして急いだところで見つかる保証はないからな」
「最初に比べればかなり強くはなったが上には上がいるからな。ヤバい奴からはさっさと逃げろよ」
皆が僕のことを案じてくれている、本当にこの村は優しい人ばかりだ。僕が助けられたのがこの村でよかった。
「ごめんなさい、ソラさん。マキナにも声をかけたんですけど返事もないままでして」
「いいんですよ、ユキナさん。わざわざ見送りありがとうございます」
マキナちゃんに会えなかったのは少し寂しいが仕方ない。あれから部屋に籠りっぱなしで食事の時しか出てこないらしい。反抗期が来たとユキナさんが少し困っていた。
「それでは皆さん、行ってきます」
見送りに来てくれた皆に声をかけて村を出る。普段森を歩くときはいつまマキナちゃんが一緒だったから少し緊張する。とはいえこんな長距離の移動なんて前の世界ではしたことがなかったので少しワクワクする。そのまま森を歩き続けて、特別何かに出くわすこともなく無事に森の外まで来ることができた。この世界に来た時に最初に見た草原をこれから旅していくとなるとなんだか感慨深い。レントの街まで行く道とは別の道を進み、まずは最寄りの街を目指そう。
しばらく歩き続け日が暮れ始めた頃、やっと街に辿り着いた。完全に日が暮れて街に入れなくなる前に急いで手続きを済ませるとしよう。
「あー! やっと来た!」
手続きしようとする僕に横から誰かが声をかけてくる。というかマキナちゃんだ。何でここに? 混乱する僕に構わず話しかけてくる。
「もう、待ちくたびれちゃったよ。ソラが来るのずっと待ってたんだから」
「マ、マキナちゃん? どうしてここに?」
「どうしても何も私もガトランドまで行きたいって言ったじゃん」
「でもユキナさんに駄目って言われてたじゃないか」
「ふん、お姉ちゃんなんて知らないもん。いつも文句ばかり言うんだから」
「だからってそんな先回りしてるだなんて」
「初めての家出ってやつだよ。帰れって言われても帰らないからね」
完全に一緒に来る気満々だ。マキナちゃんのほうが僕より強い以上、力づくで家に帰すこともできない。こうなったら仕方ない、ユキナさんには悪いがせっかくだから旅の道連れになってもらおう。
「仕方ないな、ほら街に入れなくなる前に手続き終わらせちゃおう」
「うん!」
マキナちゃんが満面の笑みでついてくる。そこまで喜ばれてはこっちも悪い気はしない。そのまま手続きを済ませて二人で街に入った。




