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超能力者の魔法世界紀行  作者: 富悠
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ー1ー 強制召喚




 拝啓、お父様、お母様いかがお過ごしでしょうか?私は今、まったく見知らぬ土地にいます。

 見渡すかぎりの草原、背後には鬱蒼とした森林、そして眼前に緑色の肌をした背の低い人がいます。

 手には棍棒のようなものをもっており、どう見ても友好的な雰囲気ではありません。

 私は生きて帰れるかわかりませんが、お二人ともどうか健やかにお過ごしください。


 なんて現実逃避じみたことを考えながら、僕は全力で逃げ出した。

走っている最中、頭の中でこんなことになった原因を思い返していた。




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 会社からの帰り道。休日返上で仕事をしてなんとか夕方に仕事を終えられた。

社会人になって1年が過ぎたが、いまだに仕事には慣れない。明日も仕事だと、憂鬱になりながら家までの道を歩く。



「明日からまた学校か」

「あっという間に、夏休みもおわっちゃったね」



 後ろを歩いている若者の声が聞こえる。そういえば学生は、夏休みの季節だったか。


 大学を卒業してまだ1年程度なのにすっかり忘れていた。社会人になってから、長期休暇どころか連休もまともにない。今日なんて休日出勤だ。



「遅刻しないように今日は早めに寝るか」

「早めに休みボケ直さないとね」



 労働環境の酷さに内心で愚痴を言っていると、



「なにこれ!?」

「走るぞ!」

「急いで!」



 後ろが騒がしくなる。


 何事かと思うと、地面が光っていた。慌てて逃げようとするも、周囲が見えなくなるほど地面が光り、気づいた時には見知らぬ場所に立っていた。




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 先程の発光現象が今ここにいる原因だとは思うが、それがわかったところで現状は何も改善しない。幸い奴はそこまで足が速くないようだが、振り切れるほど僕と差があるわけでもない。とにかくあいつから逃げなければとは思うが、身を隠せそうな場所は森くらいしかない。見知らぬ森に入ること自体、危険性が高そうだが今この瞬間も命の危機が迫っている。悩んでいる暇はないと森に飛び込み、木で奴の視界を遮りながら逃げる。


 少しして後ろを振り返ると奴は追ってきていなかった。



「助かった」



 どうにか振り切れたようだ。木を支えにして座り込む。まだ安全と言えないが気が抜けて、体に力が入らない。


 呼吸を整えながら、周囲の様子を観察する。

背の高い木々が太陽の光を遮り、森の中は薄暗い。


 休憩を続けていると鼻血がでてきた。興奮しすぎたのだろうかと鼻を抑えていると今度は頭痛もしてきた。明らかに普通ではないがどうすることもできない。そもそも見知らぬところに一瞬で移動するような怪現象にあったのだ、なにか体に異常が起きてもおかしくない。鼻血も止まらないし、頭痛はひどくなる一方だ。必死で意識を保とうと気を張るが限界だ。



「大丈夫ですか!?」



 気を失うときに誰かの声を聴いた気がした。




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「うーん」



 目を覚ますと知らない部屋にいた。たしか森の中で体に異常が起きて意識を失ったはず。



「ここは一体?」



 壁際に僕が寝ているベッドがあって、少し離れた位置に木製の机とその上に水差しのようなものが見える。なんとなく病室のような印象を受ける。


 意識を失うときに声を聞いたことを思いだす。声をかけてくれた人が助けてくれたのか。この待遇を考えると少なくとも敵対的ではなさそうだ。安心してベッドに体を預けていると部屋のドアが開く音が聞こえた。体を起こしてそちらをみる。



「目が覚めたんですね。よかった」



 テレビでも見ないような美人がいた。金色に輝く長い髪にスタイル抜群の肉体。そしてなによりも目を引くのが長く伸びた耳だ。空想上のエルフのような耳をしている。驚いて凝視してしまう



「大丈夫ですか?まだ体の調子が良くないなら体を起こさないほうが」



 返事をしなかったので心配をかけたらしい。とにかく返事をしよう。



「ありがとうございます、大丈夫です。あなたが助けてくれたんですか?」


「はい。森で倒れているあなたを見つけてここに運んできたんです」


「命の恩人だ。本当にありがとうございます」


「どういたしまして。いま長老を連れて来ますね」


「長老?」


「あなたを治療した魔人のおばあちゃんです。目を覚ましたことを伝えてきますので

待っていてください」



 行ってしまった。それにしても魔人?あのエルフのような見た目もそうだし、僕を追いかけてきた緑色の人型の生き物も地球にいたら一度くらいは見たことがあるはずだ。やっぱりここは異世界なんだろうか。


 しばらくしてまた誰かがやってきた。一人は先程の女性だ。もう一人は額に独特な紋様が入った女性だ。こちらも負けず劣らずの美人だ。



「おお、よく目を覚ましたな。正直なところ助からないと思っていたが」


「そんなに危険な状態だったんですか!?」



 思わぬ発言に驚愕する。ただの体調不良かなにかだと思っていた。



「うむ、治療を施してはみたがどれも効果がなくてな。衰弱していく一方だったんだが

少し前に急に快復しはじめたのだ」


「そこまで酷かったなんて、えっと」



 そういえば自己紹介もしていないことに気づいた。



「まだ名前も伝えてなかったですね。僕の名前は星野空です。助けてくれてありがとうございます」


「私の名前はフィリアだ。大したこともできなかったんだ、あまり気にするな」


「私の名前はユキナです。元気になってよかったです」



 紋様の人がフィリアさんで、エルフのような人がユキナさんか



「目が覚めたばかりであまり話し込むのもよくないな。食事をもって来させる。食事のあとはまた少し休むといい、明日詳しい話を聞こう」



 そう言って二人は部屋を出て行った。言われた通りに体を休めるとしよう。ベッドに倒れこむとすぐに眠りに落ちていった。




 

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