表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JUN-AI ~身がわりラヴァーズ~  作者: よつば猫
夕陽
6/48

 そして。12月も下旬に差し掛かり。

今日は毎月の大切な行事、月命日のお参り。


 今年最後だからいつも以上に、一真のお墓を念入りに掃除して……

お線香と花を供えると、バックから一真の吸っていた煙草を取り出した。


 トトン、と。

逆さにしたその箱を親柱に打ち付けて、一緒に供えると。

途端、涙が溢れ出す。


 ひたすら涙を流しては……

一真を求めて、一真を悼んで、一真に愛をぶつける。

そして後悔の思いで張り裂けそうな胸を抱えながら、ただ茫然と墓碑を眺めた。




 どれくらい経っただろうか……


「憧子ちゃん、いつもありがとうね」

毎回その声で呼び戻される。


「……お義母さん」


 いつからかそう呼ばせてもらってる、一真のお母さんに場所を譲ると。

その人は新しいお線香を供えて、お墓に手を合わせた。



「寒かったでしょう?

さぁ、うちで一緒にお寿司を食べましょう」


 お参りの後は、お仏壇に供えられた一真の大好物のお寿司を、竹宮家で頂く。

お義父さんは仕事でいない時が多く、いつもお義母さんと2人で食べる事が多い。


 当たり前のように、そんな毎月を繰り返してたけど……

それは突然に。


「……ねぇ、憧子ちゃん?

あれから3年が経って、今年も終わる事だし……」


 嫌な予感がした。


「月命日のお参りは、今回で最後にしましょう?」


 瞬間、勢い余って立ち上がる。


「なんでですかっ!なんで急にっ……

っ、母に何か言われたんですねっ!?」

すぐにそう閃いた。


「っ、落ち着いて憧子ちゃん。

違うのよっ?

私がね?お母さんの心配する気持ちがわかるからっ」


「その心配が私を追い詰めてるんですっ!」


「わかってるわっ、わかってるから落ち着きましょう?」

そう肩をさすられて。


 我に返った私は、深呼吸をして気持ちを抑えた。



「本当はね?

今日憧子ちゃんがここに来たら連絡をするよう、お母さんに頼まれてたの。

でもね?

憧子ちゃんが先月よりいい雰囲気だったから、そっとしておいた方がいい気がして、連絡しなかったの」


 いい雰囲気……

私が?


「お墓参りには来てたみたいだけど、すれ違いだったって伝えておくわね?」


「……ありがとう、ございます」


「でもね、憧子ちゃん。

お母さんはちゃんとあなたの気持ちを考えてるのよ?

本当は先月の月命日に、ここに来るつもりだったみたいなの。

だけど手紙をもらったから、とりあえず見守る事にしたそうよ?」


 手紙、ちゃんと伝わってたんだ……


「ただ、悪いと思ってるなら話くらいしてくれてもって、電話をかけ続けてたらしいんだけど。

出てくれないし、家出があまりにも長いからって、今回頼まれる事になったのよ」


 そうだったんだ……

でも私はそっとしといて欲しかった。

しかも1か月半であまりにも長いなんて、まだ当分帰る気すらないのに。


「誰もね?あなたを追い詰めたい訳じゃないの。

ただ、前を向かせてあげたいだけなのよ」


「前って……

私は前なんて向けませんっ……

向くつもりなんてありませんっ!」


「でも。

どこかで前を向かないと、一生立ち止まってる訳にはいかないでしょう?

私だって。

あなたがいつまでも、息子のせいで苦しんでる姿を見るのは……辛いわ」


「でも私はっ、一生一真の所にいます……

いたいんです!

お願いしますっ、これからもここに来させて下さいっ!」

必死の思いに、涙が零れる。


「……っ、とにかく。

まずはお正月にでも、お母さんと話してみてね?」

その拒絶は柔らかで……


 なのにこの上なく、心を抉った。




 ねぇどうしてダメなのっ?

どうしてわかってくれないの!?

どうしよう、どうしようっ……


 どうやってその場を後にしたのか。

車の中で泣き崩れて、いつからかまた途方に暮れた。



 ハッと我に返ると、時刻はとっくに23時を回ってて。

慌てて帰路についたものの……


 帰宅した部屋に、今月忙しい響の姿はまだなくて。

ほっとしたのも束の間。

すぐに、ただいまの声が聞こえた。


「あ、おかえり……

ごめん、まだ夕食、作ってなくて……」

未だ収まりつかない心情と、申し訳ない状況に、戸惑いながら応えると。


 泣き腫らした目のせいか、そっと温もりに包まれる。


「全然いいよ?

じゃあなんか買って来るから、何がいい?」

私の髪を優しく撫でて、囁く響。


 心がほろっと弛んで、寄りかかる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ