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JUN-AI ~身がわりラヴァーズ~  作者: よつば猫
巡愛
46/48

「ちょうど起きたとこだから気にしないでっ」

そう快く迎え入れてくれた成美に、感謝を告げると。


 さっそく本題を切り出した。


「あの、ね?

秀人が煙草をやめたのって、私がそれで取り乱したから?」


ー「煙草は憧子の為にやめたんだよね~」ー

成美はきっと、秀人の気持ちも知っている。


「まーねぇ……

あの頃は憧子につきっきりだったしね」


 やっぱりそうか。

そしてその人の気持ちは……


ー「俺は2人が幸せなら、それでいいと思ってた」

「でも今幸せなら、それでいい」ー


 愛する人が生きていて、幸せならそれでいいと言った私に。

その気持ちがすごくよくわかると言っていた、その気持ちは……


「ねぇ秀人って、私の事……」

そこまで口にしたところで、自惚れてる気がしてためらうと。


「ずっと好きだったよ」

見透かした成美に、答えを突き付けられて。

胸がものすごい力で締め付けられる。


 ずっと、って……

"2人が幸せなら"

それはきっと、私と一真の事で。


「まさか、一真が生きてた頃からっ?」


「うん……

トリップしてる一真くんを、幸せそうに見守ってる姿に、惹かれたって」


「うそ……

どーして今まで教えてくれなかったのっ?」


「あたしが知ったのは一真くんが亡くなってからで……

憧子、それどころじゃなかったから。

だから秀人くんも、打ち明けられなかったんじゃないかな。

苦しんでる憧子に、余計な負担をかけたくないって」


「っ、そっか……

っっ、そっか……」

胸と言葉が詰まって、涙が滲む。


 しんどい思いをさせたくなくて、想いを口に出来ない辛さはよくわかる。

そして、他の人に向けられた愛を傍で見守り続ける辛さも。


 だけど秀人はこんなにも長い間、その辛さと想いを募らせながら……

ー「俺があいつの代わりに守ってやる」ー

そっと身代わりになって、支えてくれてたんだ。


 それは、どれほど辛かっただろうっ……


ー「好きなら傷付いたっていんだよ」ー

ふいに浮かんだその人の言葉に、涙がぐっと押し出される。


 しかもその人は……

ー「愛してんなら頑張れよっ」

「憧子の事、頼むな」ー

どんな思いで応援してくれたのだろうっ。


 私はこんなにも愛されて、大事に思われていて。

なのにその気持ち答えられないのが苦しいっ……


「……ごめんね。

憧子を苦しめたくはなかったんだけど……

でも秀人くんは、一生打ち明けるつもりはないだろーからさっ。

永遠に知られる事もなく、存在しない想いとして扱われたら、あまりにも可哀想じゃない?

だけど憧子がそんなふうに受け止めてくれただけでも、その想いに涙してくれただけでも。

秀人くんはともかく、その想い自体は報われると思うよっ?」


 そう言って成美は、私の頭をよしよしと撫でてくれた。


「んっ……

教えてくれて、ありがとうっ」


 ごめんね、秀人……

今まで気付かなくてごめん。

その想いに応えられなくてごめんっ。

だけどありがとう。

そんなに想ってくれて、ありがとうっ……


「……なんだか自分だけ申し訳ないっ。

秀人にそんな思いをさせて……

一真にも寂しい思いをさせてるしっ」


「っ、一真くんっ?

なんでそう思うの?」


「なんでって……」


 そこで私は……

響への想いに比例して、一真との中途覚醒時間が増えた事や。

それに伴って記憶の覚醒が起きた事。

さらに響と本当の恋人になった直後に、2度目の覚醒が起きてた事を説明した。


「偶然とは思えなくて……

一真が寂しがって、忘れないでくれって訴えてるような気がするの」


「なるほどねぇ……

まぁ関連付けちゃうのも分からなくはないけどさ、あたしはそうは思わないかなっ。

それに、なんかの番組で心理カウンセラーが言ってたんだけど。

ショックが大きすぎると、脳で処理できる限度を越えるらしくてさ。

その場で処理されなかったりするんだって。

だから時間が経って、それを受け入れられるくらい回復した頃に。

フラッシュバックしたり、夢の形で脳処理が行われるケースがあるんだって」


 目の前にあった透明な、私を塞いでたカーテンが……

シャララと開けられたような気がした。


「……そう、なの?

もしかして記憶が覚醒したのは、私が回復したから?」


「そーだよきっと!

だから一真くんの気持ちまで考えれるようになったんじゃないっ?

だって前は、一真くんが悲しむって言われるのを嫌がってたくらいだしっ」


 確かに私は、それにうんざりしてた。

ここにいないのにどう悲しむのかと。

なのにその人が寂しがってるなんて、おかしな話で……


「だからさっ?

そんなの自分の捉え方次第じゃないかなっ。

結局は響くんのおかげで回復したから、一真くんの気持ちを考えれるようになって、秀人くんの気持ちも受け止めてあげれたんだよっ」


 響のおかげ……

そうか、響が私の安定剤だから。

脳が安心して、記憶を覚醒出来たんだ。


 そしてここまでの回復がなければ……

秀人の気持ちを知っても、プレッシャーにしかならなかっただろう。


 だから成美の言う通り。

想いを受け止める事が出来ただけでも、良かったのかもしれないし……

ちゃんとしっかり受け止めたい。


「けど憧子って意外と鈍感だよねっ。

響くんの気持ちにも気づかなかったワケだし。

秀人くんだって、なにげにアピールしてたと思うけど」


「秀人はっ、あのキャラだから冗談だと思ってたし。

2人とも……

一真を永遠に愛してる私を、好きになるなんて思わないじゃない」


 特に響に至っては、ちひろさんの存在があったし。

ツイッターのユーザー名にも、まだその名前が入ってるし……


「まぁ確かにねぇ……

でもあたしは、憧子がうちの店に連れて来た時から、響くんの気持ちに気づいてたけどね~」


「そんな前からっ?」

とっさにその時の事を巡らせて……

インパクトの強い、響と秀人の衝突を思い出す。


 そんな2人が、さっきは……

ー「見守るだけで、後悔しないんですか?」

「あいつと同じ事、聞くんだな」ー


 後悔しないのかと訊いた響は、秀人の気持ちに気付いていたのだろう。

そして"あいつ"というのは、一真に違いなくて……


「……ねぇ、成美。

一真も秀人の気持ち、知ってたのかな」


「みたいだね。

だからプロポーズ前に、ほらっ」




「なぁ憧子……

このまま俺と付き合ってても、いいのか?」


「え……

何言ってるの?

当たり前じゃない!

なんでそんな事訊くのっ?」


「いや俺、仕事が忙しいし。

一緒にいてもトリップばっかで、いつも寂しい思いをさせてるだろ?

もっとお前の事を第一優先してくれて、俺と同じくらい。

いやもしかしたら、それ以上に愛してくれるヤツがいたら……

そいつと一緒にいた方が、幸せなんじゃないかって」


「勝手に決めないでっ!

私は一真といるのが幸せなのっ。

どんなに寂しくったって、一真といたいのっ……

ねぇお願い、そんな事言わないでよ」


「っっ、ごめんなっ?変な事言って。

俺も、憧子の幸せが1番だからさ……

じゃあこれからも離さないから、覚悟しとけよっ?」




「憧子、そんな話ししてたよね?」


 そういえば……

そうか、その話に出て来た"そいつ"は、秀人の事だったんだ。


「あたし、思うんだけどさっ。

そーやって1番に憧子の幸せを考えてくれた一真くんだから。

寂しいどころか、憧子が泣いてるより幸せな方が安心すると思うよっ?」


「っ……

っっ……

そうだねっ……」


ー「俺も、憧子の幸せが1番だからさ」ー

そう一真は、そんな素敵な人だった。


 なのにごめんねっ……


ー「考えてるのは、どーやったらそっちの都合を受け入れてもらえるかだけでしょっ!?」ー

いくらマリッジブルーだったからって、ほんとにごめんっ。


 だけど、せっかく響がその後悔を和らげてくれたから……

同じ苦しみは繰り返さない。


 でも代わりに……




 その夜。

携帯を開いて、さっそく文字を呟いた。


〈ねぇ一真、ありがとう。

私は本当に幸せだった。

これからもずっと愛してる。

たとえ変化しても、愛してるから〉


 愛は今でも、どうしようもなく募ってく。

どうかこの想いが、愛するその人に届きますように……



 そしてその日を境に、中途覚醒がピタリと治まった。


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