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JUN-AI ~身がわりラヴァーズ~  作者: よつば猫
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 そんな事より、やり切れないのはそれだけじゃなく。


ー「大好きな人に拒絶されて、嫌われたからさ」ー

確か、酷い事したって言ってたけど……

きっとそれが原因で。


ー「会えなくたって、生きてるだけで救われるっ」

「それが生き地獄でもっ?」ー

結果、大好きな人を生き地獄に陥れたのだとしたら……


 どれだけ辛かっただろう。

どれだけ自分を責めただろう。

その辛さは計り知れないけど、似た気持ちはよくわかる。


 なのに私は、逃げてるだけだなんて酷い事言った。

自分だって色んなものから逃げてるくせに……


ー「憧子さんには、わかんないよ」ー

改めて、勝手な事を言ったと申し訳なく思った。

せめて響も、吐き出す事で少しは楽になれないだろうか……


「ねぇ……

何があったのか、聞いてもいい?」

響がそうしてくれたように、私もその心を訪れた。


 少しためらったその人は……


「いいよ。だだ……

憧子さん、引いちゃうと思うけど」

そう前置きして、語り始めた。


「俺と親友が、高校を卒業する時に。

千景が告白して、その2人が付き合うようになったんだ。


それでも俺は、千景が好きで……

だけどそんな状態がずっと続いて、もう苦しくなって。

県外に就職して離れる事も考えてたから。

その決断をする前に、ダメ元でぶつかろうって。

なのに、断られたらなんかっ、気持ちが抑えられなくなって……


無理やり押し倒したっ」

辛そうに眉を顰めて。


「愛されないならいっそ、嫌われた方がマシだと思ったのかもしれない」と言い添えられる。


「けどいざ嫌われると、やり切れなくて。

罪悪感でおかしくなりそうでっ……

そんな俺と千景の様子が、変な事に気付いた親友は、何があったのか聞いてきて。

取り繕えないと思ったのか、千景がそれを打ち明けて。

当然激怒した親友からは、殴られたし縁を切られたし。

俺と千景は家族ぐるみで仲良かったから、そいつは千景を守るために、俺たちの家族にもその事を暴露したんだ。


もちろん親父にも殴られたし、母親には泣かれたし、家族付き合いも気まずくなって……

俺はそこからひとり逃げて、こっちに就職したんだ」

そう告げた響の瞳は、自分を蔑むように翳って見えた。


「色々と、思い詰めた時期もあったけど……

後になって、千景に対してはこっちに来たのが正解だったかなって。

俺の顔なんて偶然でも見たくないだろうし、俺が近くにいたら余計苦しむだろうから。

まぁ千景に限らず、みんな俺の顔なんて見たくないだろうけど……


せめて俺は、みんなへの謝罪の代わりに。

そして、ただ逃げただけで終わらないように。

今じゃすっかりのめり込んでるこの仕事で、認められるように頑張ろうって。

千景は俺がカリスマ美容師になるのを夢見てくれてたから、それを目標に……

って、引いたよね」

ハッとしたように、話がそこで締めくくられる。


「引いた、ってゆーか……

嫌な事、訊いていい?」


「……いいよ」


「……それ、最後までやったの?」


 すると首が横に振られて。


「あんなふうに拒まれたら……

千景の涙を見たらっ……

出来るわけないっ」

そう顔が歪められた。


「……そっか。

そんな状況で最後までやってたら、最低だったけど、」


「っ、最後までやってなくても最低だよ!

重要なのはどこまでじゃなく、どれだけ傷付けたかだからっ。

もしかしたらトラウマになって、今でも苦しんでるかもしれないっ……」


 だから生き地獄って……


「まぁ確かに、無理やりなのは最低だけど……

でも。

それでも私は、響の味方だから」

そう受け入れると。


 その人は驚きの表情でゆっくりと私を映した。


「響だって私の味方なんでしょ?

それに、感情がつい暴走しちゃう事なんて、人間なら誰でもある。

私もそう……

でも響は途中でそれを止めたし、ちゃんと後悔して反省して、苦しんでる」

きっと誰よりも。


 笑顔に映る翳りは、その心を表してるようで……

傷つけて酷く苦しんだ響だから、人の心に寄り添えるんだと思った。


「だから私は、そんな響の味方だから」


「っっ……

俺っ、その事でずっと……

周りから、自分から、責められて来たからさっ。

味方だって言われる事がっ、こんなに心強いとは思わなかった……」


 言葉の合間に唇を噛んで、涙をこらえてるような響が痛々しい。


「響も……

ちゃんと泣いて、ちゃんと吐き出そう?」

思わずそっと抱きしめると。


「っっ、ありがとうっ……」

ぎゅっと抱き返された。


「……全部自業自得だってわかってるっ。

だけど俺っ、千景に嫌われて、世界が終わった気がしてた。

千景をっ、親友を、家族を裏切って、傷付けてっ……

そんな最低な自分なんかっ、存在する価値すらないって……

ほんとはずっと消えてしまいたかった!」

泣いているのか、そう身体を震わす響。


 逃げるが勝ち、ふとそう慰めてくれた言葉を思い出して……

きっと響は、そう言い聞かせなければ心が保てなかったんだろうと思った。


「……でも私は、響の存在に救われてる」


 悲しみの淵にいる自分が、誰かを慰めてるなんて。

なんだか不思議に感じながらも。


ー「彼女の気持ち考えたら、今はやっぱり会えないけど……

それでも、いつかはって」ー

そのいつかが訪れるよう祈りながら、夕陽色の髪を優しく撫でた。





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