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JUN-AI ~身がわりラヴァーズ~  作者: よつば猫
観覧車
11/48

 響の前では思い切り泣ける。

ただ、中途覚醒の時はひとり泣く。

夜中まで付き合わせるわけにはいかないし、この時間は一真と過ごすから。


 でも、甘えられる相手がいるのに甘えられないのは、余計寂しい気がする。


 その夜は長期休暇の影響か、いつになく早い覚醒で。

明日に仕事始めを控え、このまま眠れなかったらどうしようかと不安になる。


 しかもそんな長い時間寂しさに晒されるなんて……

そう思って、また眠剤を追加したくなる。


 だけど、辛いねって心に寄り添ってくれた響を思い出して……

なんだか今寄り添ってくれてるような気持ちになって、それを我慢した。


 そしてふとその時の、眠剤だと知っていた様子の響が浮かんで。

その理由が気になった。



「ねぇ、私の薬……

眠剤だって、知ってるんだよね?」

さっそく翌朝、訊いてみる。


「……ん。

俺のお客さんが常用してて、いつもその薬の事話してるから」


「そんな話もするの?」


「うん、なんか、誰かに打ち明けたかったみたいで」


 確かに、プライベートに関係ない人の方が打ち明けやすいかもしれないけど……

でもそうやって相談されるのはきっと、響が受け止めてくれるからで。

信用されてるからで。


 どんなふうに仕事してるんだろう?

お客さんの心まで掴む、その仕事熱心な姿を見たいと思った。




 そんな、とある日曜。

相変わらず鳴り響く着信音に……

秀人ともちゃんと話さなきゃねと、その電話に出ると。


「ぉわ!出たっ」


「なにその、人を化け物みたいに」


「いやっ、化けモンどころかっ……

可愛いよっ!憧子はすごくっ」

私の機嫌を損ねないようにか、おだてられる。


「それはどーも」


 秀人は本当に。

私を心配するあまり、変に気を回して空回って……

無理をする。

徹夜で探し回ってくれた事を頭に浮かべた。


「それよりさ……

心配かけて、ごめん」


「俺は別にっ……

おまえが無事なら、それでいーけど」


「じゃあ何でそっとしといてくれなかったの?

毎週、毎週……」


「遊びに誘うぐらいいーだろ!」


 とか言って、それは私を元気付けるためだってわかってる。

だから感謝はしてるし、これ以上心配かけたくなかったから、断りながらも応じて来た。

でももう……


「……ごめん、この際はっきり言っとく。

私は当分、遊ぶ気になんかなれない。

だからもう誘わないで」


 すると沈黙が返されて……

申し訳ない思いで心苦しくなる。

だけど、私はもう必要以上に頑張らない。


「……ただ。

ドライブくらいなら、たまにはいいわよ?」

そう、出来る範囲でその優しさに応えようと思った。

それにこの前のデートの影響で、ドライブなら悪くないと思えてた。


「ほんとかっ!?

じゃあ早速っ、今度の日曜はどうだっ?」

沈黙が嘘のような興奮の反応。


「速攻ね……」


 でもその日は確か第3日曜日。

響が休みかもしれない、そう思ってハッとする。

別に響に合わせなくていいのに……


「いいわよ?じゃあ来週ね」


「っっしゃ!最高のドライブにしてやるっ」


「普通でいいから」


 いつにも増してハイテンションな秀人に、そのドライブが思いやられる気がした。





「ねぇ、次の日曜ってセミナー?」

夕食後、なんとなく気になって尋ねると。


「の、つもりだったけど。

どうしようかなって」


「どうしよう、か?」


「うん、前に受けたのと被ってるし。

憧子さんに行きたいとこがあれば、どっか連れてくよ?」


「え……

ううん、行きたいとこがあるわけじゃないの。

ただ聞いただけ」


「そっか……

じゃあセミナー行こっかな」

と、その話は意味なく終了。


 だけど、つくづく仕事熱心な響に興味をそそられる。


「響は、なんで美容師になったの?」


「……きっかけは、くだらないんだけどさっ。

例の、好きなコを振り向かせたくて」


「ちひろ、さん?」


「そう。

千景とは幼なじみでさっ。

気付けば好きになってて……

だから少しでも良く見られたくて、髪とかいじってたら興味が湧いて。

そしたらセットとか前髪切るのとか頼まれるようになって、それが嬉しくてさっ。

その道を極めたくなったし、千景に勧められたのもあって……」


 そしてバツが悪そうな笑顔で、不純な動機でしょ?と締めくくる。


「ううん。好きな何かが原動力になるのは当然だし、素敵だと思う」


「っ、ありがとうっ……

まぁ今じゃ、思いっきりこの仕事を愛してるんだけどねっ」


「ん……見ててわかる」

そう言うと響は、少し驚いた顔をして、嬉しそうに笑った。


「ねぇ、どんな人なの?

ちひろさん」

響の原動力となったその人が、少し気になる。


「んん……

1コ下なんだけど、しっかりしてて。

そのくせ変なとこ天然で、可愛くて。

……俺の元親友と付き合ってて、そいつを一途に愛してるコ」


 もう他の人のものなんだ……

それも自分の親友の。


「……やり、切れないね。

しかも幼馴染みだから、余計忘れられないね……」


「うん、ずっと好きだと思う。

たぶんこの先も、千景以外愛せないんじゃないかなって」


 その応えに、なぜだか少し寂しい気がした。

私だって、一真に対してそうなのに。


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