稲荷編その9
次の週の日曜日、宏一郎は家内と朋子の3人で登山関係の装備を揃えに行った。
こういうときも眷属である、はやとゆきはついていくことになっている。
突然に魔の扉が開いて落ちはしないか、変なものを連れてきはしないか、色々と考えることがあった。
アウトドアでも登山の専門店というのもあって、朋子はまずはリュックサックを購入した。40Lくらいの標準的なものにした、
次に登山靴、これもかなりいいものを選んだ、リュックと靴だけでもかなりの金額だったが、まだまだ必要な装備があった。次はウェアだ、薄手のジャンバーとパンツ、そしてネックウォーマー、そして毛糸の帽子だった。
ジャンバーは紫色は譲れなかったし、ストライプのネックウォーマーとブルーの毛糸の帽子も決めていた。
小心な宏一郎はバカバカ買っていく娘と家内を見ていて内心ハラハラしていた。
結構な金額にいっているはずだ、だが、家内は割りと平然にしている、私はそれでも遠慮してリュックと朋子とお揃いのストックだけにした。これで終わりかと思いきや、彼女らはキャンプ用品の方にいってバーナーと調理用品を買っていた…そうだよな、山でお腹もすくしな、そんなことを考えながら、それでもこの買い物を楽しんでいた。こんなことなかったよな、
朋子が元気になればいいんだよ、結局。
そんな家族の楽しそうな姿を見てはやとゆきも幸せそうだった。
いい感じね、それに、と言って朋子の揃えた服を着てみた、何しろ宏一郎たちの持ち物ははやたちにも与えられることになっていたから。
それに、なかなかセンスいいじゃない、紫色のジャンバーもいいわ、ゆきもストライプのネックウォーマーもかわいいと言って、ふたりとも同じ服を着ていた。
しかし、断っておくが、彼女らには精霊が頭についている。はやは真っ白の毛のふさふさした狼のようなキラを、ゆきは紫色の毛の短い狐のようなナジャを。
彼女らはあろうことか翌週も服を買いに行ったらしい、まあいいか。
そして、宏一郎たちは登山日の4月29日の前の日の夜を迎えた。
英彦山には銅の鳥居という参道の始まりのような場所があってそこを起点と考えていた。
銅の鳥居を朝7時半ごろには登る計画だった、山は朝涼しい時間帯に登って午前中の早い時間に頂上に着く計画だったそうすれば暑さでバテることもないし、何より頂上の景色もまだ雲というか水蒸気も湧く前で美しい眺めも見られそうだった。
逆算すれば、夜7時くらいに家を出れば夜中には銅の鳥居の駐車場につくはずだった。そうすれば、朝まで仮眠も取れる。
宏一郎が朋子にそろそろ出ようという声が聞こえた、
ゆきは焦っていた、はやのほうは、色々と服を着る機会があったが、ゆきもほうは、警備のための戦闘服とみこさんの着るような服しか着たことが無いようだった、何を着て行くのかわからなかった、はやは朋子と同じ服を着ているようだった。ここでゆきも同じものを着れば、3人でとも同じになってしまう。どうしよう…そんなことをぐずぐず考えていてなかなか決まらなかった。
結局、姉にも急かされて、いつもの緋袴と白の小袖にした、
やっぱりこれが一番いいわ。
宏一郎と朋子とはやとゆきは高速道に滑り出した。
次回、霊山登山~英彦山に登ること、に続きます。
(©️2022 keizo kawahara眷属物語)