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稲荷編

この世界は見えるものと見えないものとで構成されています。実際に見えない世界で何が行われているのか?それはおそらく誰にもわからないことです。しかし、我々人間には想像力があります。この物語には私が遭遇した異世界のこともちりばめられています。フィクションではありますが、見えるものと見えないものとの関わりを想像力を駆使して書いていきます。神々の意外な姿に驚いてください。では

総社市の宏一郎殿参りましたー


宏一郎殿参りましたー


宏一郎殿参りましたー






磨きあげた廊下を眷属たちが走り回り伝言ゲームのように声が響き渡った。




三の眷属、ゆきは姉のはやに久しぶりに会えることで気分も高揚していた。



どんな顔をして会おう?なんて言葉をかけよう~



外は花盛り、桜は満開。



年に一度の華やぐとき。






ゆきは神殿の渡り廊下から降りて履き物を変えると花のトンネルのようになった細い小道を通り抜けて扉がずらりと並ぶ建物の前に立った。ここでゆきたち眷属たちが暮らしている。およそ50を越える眷属たちが日夜修行に励んでいる。


眷属という聞き慣れない言葉について少し説明しておくと、ごく簡単に言ってしまえば、神社にいらっしゃる神々の親衛隊だ。ゆきのように人の形の者もいれば蛇や鳩といった存在であったり、高貴な神々となれば、龍であったり天狗であったりしている。いずれにしても、神々を守りお世話をしながら修行しているのだ。修行が進むと神々と同等の力を持ち、人間の家に派遣されることもあるという。

ゆきもまたもと人間だったものが神について修行していたのだ、しかも神様が目をかけている人間に派遣されるだけの力を得ていたようだった。ゆきが人間としての役目を終えてどうして神様の修行をするようになったかについては、実は神々からのスカウトがあったわけだが、それについてもこの物語で話すこともあるかもしれない。


建物はアパートのような体裁をとっていて、扉の横には様々なものが掛かっていた。農機具であったり筆であったりしゃもじであったり、槍やライフルのような物騒なものもあった…どうも修行内容に関係しているものらしい。



ゆきの扉の横にはなんと槍が2、3本掛かっていた。



槍か~



まあおてんばなゆきにはちょうど良いが。



扉を開けると六畳ほどの畳の間と四畳半ほどのフローリングに水屋とシャワーブースとトイレがあるようだった。1LDKといったところだった。



ゆきは皮のつなぎのようなスーツを脱ぐとTシャツにスパッツ姿になって本棚の前に立った。本棚にはノートのような冊子がずらりと並んでいた。



ゆきはその中の一冊を取り出した。そのノートには4月7日と書かれていた。




冷蔵庫からレモングラスティーを取り出すとコップに注ぎ、ひとくち口に含んだ。



そしてちゃぶ台のようなテーブルに座るとノートを開いて、ペンで何事か書き始めた。





今日は一年ぶりに宏一郎様が津和野に参られる日。ということはそのサポートについている姉のはやも一年ぶりに帰ってくる。ああ、気がはやる…元気だろうか?どうもゆきとはやは姉妹で神に仕えているようであった。


ゆきはペンを置くと開け放たれた窓の外を見やった。桜の木が数本、ハラハラと散り始めるのもあって、その花びらいく枚かが風にのって窓から入ってくるようであった。


毎年のように宏一郎様は津和野を訪れてくれるが、今年のように桜の満開の時期、まして今日、訪れることはついぞなかったことだ。


今日、4月7日は私の誕生日。


ゆきはそう書くとノートを閉じペンを置いた。




そうしてタンスにきちんと畳まれた白の小袖と緋袴を取り出して注意深く羽織った。みこさんの衣装のようなものだが、それは神様のお札と同じように扱われ神聖なものだった。ゆきの修行内容は神殿の警備だったがそうでないときはこの衣装を着る決まりがあった。




津和野は中国地方の山あいに開けた盆地にあった。冬は雪に覆われる山間に突然出現した砂漠のオアシスのように美しくそして、きれいな水に溢れ、またバザールのような活気にもあふれていた。


花盛りの津和野は人で溢れていた。


私はこの善良な人たちを守る~ゆきの瞳には静かな決意のようなものがたたずんでいた。






遡ること5時間ほど前、渡辺宏一郎の自宅。




次回に続きます。(©️2022 keizo kawahara眷属物語)



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