魔族
「見てください!!四つ葉のクローバーですよ!!」
夢の中で男の人が叫ぶ。
でも、顔は見えない。いや、思い出せない。
あれ?また、あの頃の記憶か?今日は色々合ったしなぁ。
でも、お母さんが俺を拾ったのは、俺が一歳にもなっていなかった時、って言ってたような…
「俺も欲しい〜!!」
誰か…男の子が叫んでいる。この子も顔を思い出せない。
「差し上げますよ、――――」
あれ?ここだけなんて言ってるのか聞き取れない?
まるで記憶にボヤがかかったみたいに―――
「あっ俺も見つけた!!やったああ!!」
さっきの男の子が言う。見ているこっちが嬉しくなるほどの笑顔で。
「おーい!!見ろ!!これが四つ葉のクローバーだぞ!!」
俺に見せているのか?やっぱり、これは本当に合った記憶ってことなのか?
「この子が、私の弟になる子なのね!!」
じゃあ、この子が姉なのか。
雰囲気的にさっきの男の人はお父さんだと思っていいだろう。
幸せの家族だなぁ。なんて思って見ていると、どんどん頭にボヤがかかっていくように、意識は落ちていった。
朝起きると、枕が濡れていた。
なんだろうなぁ?
「ふぅううう、清々しい朝だなぁ!!空気がきれいだ!!」
昨日の夜、俺は佐藤家の子ではなかったのだと明かされた。
でも関係ない、今更、前いたうちの記憶なんて何も残っていないのだから。
今日は中学二日目!!楽しみだなー
「じゃあ、授業始めるぞ〜」
「やっほーい!!」
「あ゛?」
「あ、いや何でも無いです」
つ、つい、心の声が。
「今日は丸一日魔族の日だ。お前ら、魔族のことは知ってるな?」
「はい!!」
「もちろん」
境木と、竹杉が答える。
「わかりーませーん」
「ふっ我の頭でさえも理解しがたいものがあるようだな」
「ジャスティスー!!」
「魔族?え?なにそれ美味しいの?」
あ、このクラスやべー。マジやべー。
ナニソレオイシイノって山田まじやべー。
「じゃあ、説明するな。魔族ってのは、みんなも知っての通り、魔雑林に住んでいる。
なんなら、この近くの魔雑林には、魔王国の王都まであるらしいぞ」
「おお!!すげええ!!」
そんな歓声が上がる。
「それでー魔族って強いの?」
三森が言う。
「もちろんだ。魔族は人間のスキルじゃ、対抗しても勝てるかどうかわからないぞ。
具体例を出すと、魔族の王族なんかは、攻撃が当たらないと聞いたことがあるな」
「マジか〜〜〜」
そんな空気が流れてるんだが。でも、俺がいればなんとかなるだろ。
「もっというと、とても頭がいいと聞いたことがあるな。確か、記憶力がとても発達してるんだとか」
「ていうか、魔族って人間と仲いいよな?」
俺が聞いてみた。
「え??仲悪いんじゃないの?」
山田が言う。クラス中が「??」みたいな雰囲気だ。
マジか。てか、常識なんだ!!
「いや、言い切ってそうとは言えないな。最近では、誤って魔雑林に入った子供が、魔族によって助けられた、っていうニュースもあるからな」
「へえええ!!」
先生ためになるな〜
「まあ、こんな感じで予備知識はオッケーだな。じゃあ出発するか」
楽しみ〜
そんなこんなで、学校からわずか1キロの魔雑林にやってきました!!
ここからは班別行動らしく、俺達二班には、酒田とか言う先生が着くんだとか。
「こんにちはー俺は今回、二班を指導することになった酒田です。好きなものは酒、名前は酒田、特殊スキルは『酒』でーす」
ガッシリとした、小柄な体型に、茶色い顎ひげをはやした、その酒田先生は言った。
いや〜お酒大好きなんだろうな。
そんな感じで、魔雑林の周りを少し回った、ときだった。
酒田先生の動きが急に止まり、小声で先生は言う。
「さっき、足音が聞こえた。人間なら問題ないが、嫌な殺気を感じる気がする。気をつけろ」
そういった後、森の中の茂みから、青い髪の女の子が出てきた。
目を奪われるようなあまりの美しさに、つい目を奪われる。
すると、少しずつ目がとろりと――
俺は身の危険を感じて、そんな考えを振り払った。
改まって、女の人を見ると、その人の頭には、小さな角が二本生えている。
その自然な感じで、確信した。この人は魔族だ。
「しゅーみ、せん にゅんえんぢぇしゅきゃ? わゃちゃちゅは、みゃじょきゅ きょちょびゃひゃ、ちゅうじゅりゅにょ?」
何言ってるんだ?と、山田がつぶやく。
え?聞き取れなかったのか?まあよくわからないが返したほうがいいよな。
「ちゅうにゅちゃりゅにょ ごちゃえにゃえに、あいしゃちゅしゅちぇ、にゃんにょようですきゃ?」
「は?」
山田が言う。
「拍真、魔族語分かんのか?」
え?
「え?この人達、日本語喋ってるよ あ、ちょっとなまってるのかな?」
「佐藤、さっきの人がなんて言ってたのか、教えてくれるか?」
竹杉が言う。みんなしてどうしたんだ?
「えっと、はじめに女の人が言ったのが、
すみません 人間ですか? 私は、魔族 言葉、通じてる?
ていって、俺が返したのが、
通じてるよ ご丁寧に、挨拶して、何のようですか?
って言ったんだ」
「マジか… え?みんなも分かったのか?」
そんな山田の問いに、竹杉が答える。
「そういうことね。たしかになまっているのをなくして考えれば、そう言ってる。でも、一発で分かったのかーやっぱり、人によるところはありそうだね」
「そうだね。本当にこちらの言葉がわかるってことは、やっぱ、交渉のしがいがありそうだ」
森の暗闇から、声が聞こえ、男が出てきた。
その男の名は―――ゼエン。
次回予告
森から現れた男は、まさかのゼエン!!果たして、主人公拍真たちはこれからどんな目に会い、果たして、生き残れるのか!!
次回《交渉》