1/12
生贄
一話
生贄
真っ赤な椿の花言葉はね、
「控えめな素晴らしさ」
「気取らない優美さ」
「謙虚な美徳」
……そして「罪をおかした女」というのよ__
黒栞が来た。
一昨日届いた。初めて見る物で、一瞬何の事なのか分からなかったが、母がそれを見て青ざめた顔をしていたのだ。
黒栞が届くと言う事はこの国では、
生贄に選ばれた___と言う事だ。
この国では毎年、生贄が5人選ばれる。
その5人は性別はバラバラの若い人間を選ぶ。
誰が選ぶのかは、分からない。私はなぜ選ばれたのか、分からない。
ただ、一つ言えるのは、神様に献上されると言う事だけ。
つまりは、死だ。
「加奈子さんのお宅ですね」
二日後すぐに軍服に身を包んだ兵隊さんがやってきた。
母と父と、満足にお別れの挨拶をする暇もなく、私は一瞬にして車に乗せられた。
大丈夫ですよ、神様に献上されると言う事は悪い事ではないですから。
悪いようにはされませんから。
なんて目の前の神服を身に纏った男が言っている。
私はそんな話より、家族ともっと一緒にいたかった、ちゃんと話したかったのに。