秋
夏休みが明けて、木々が紅葉を始めた秋。私の心は更に荒んで、日々をなんとなく過ごしている。私の心が荒んだのに比べてくるみは更に幸せになっていて、日々を有意義に過ごしている。この日々の何を間違えたのだろうか。風が涼しくなって、冷たさが私の心にも直撃する。あの二人はもう既に、という考えていても仕方ないことを考える。くるみはとても高校生らしい。青春そのものだったのだ。
とうとう私はくるみと挨拶もしなくなった。更にいうと、くるみも挨拶をかけてくれなくなった。前を歩くくるみと坂本くんの表情は幸せそのものだ。そういえば、私はくるみの満面の笑みをここ数年間見ていなかった。もしかして、私は彼女を幸せにできていなかったから捨てられてしまったのだろうか。私は急にどうしようもない衝動に駆られて、秋のある日、遂にくるみに想いをぶつける。
「私と居てくるみは楽しかった? 」
「何よ急に」
切迫した表情で私は迫る。くるみは訳がわからなそうにしていた。彼女は少し考えて、
「楽しかったよ」
と返してくれた。私はそれ以上何も言えず、その場で固まった。すると、くるみは小声で、
「変なの」
と言っているような気がした。その瞬間遂に気がついた。そうか、私が知っているくるみはもういない。くるみは全く新しいくるみに生まれ変わったのだ。それを理解した時、私は体勢を崩して、その場で寝っ転がって大笑いした。何故かわからないけど笑えてしまったのだ。心そのものが壊れた。壊れてしまって、笑うことしかできなかった。気付いたら視界が水滴だらけにもなっている。泣いて、泣いて、笑って、笑って、いつのまにか気を失っていた。