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 気がつけば季節は夏になっていて、外は蒸し暑い。くるみと坂本くんは交際三ヶ月を迎えようとしていて、私の何かは崩れたままだった。あの日、二人には気づかれなかったが、二人が抱き合うのを見た私は気絶した。目を覚ますと保健室に運ばれていたが、私は気絶した本当の原因を隠した。いや、正確には言葉にできなかったのだ。


「あかね、おはよう」


「…… おはよう」


 朝の通学路、セミが泣きはじめた道でくるみと会う。私は戸惑いながら彼女に挨拶を返す。今まで、二人きりの通学路だったがあの日から変わったことがある。


「浩くん、おはよう! 」


 くるみは私を追い越して、前を歩いている坂本くんの横へと並んだ。あれから、くるみは私よりも、偶然通学路が同じだった坂本くんと一緒に登下校することが多くなった。二人が仲睦まじげに歩いている。私は一人寂しく、カップルの後ろを歩く。二人は側から見たらとてもお似合いな二人だった。クラスのみんなも祝福している。みんな、みんな二人のことを祝福しているのだ、私を除いて、全員。


 お昼休みになると私は一人だった。くるみは席替えで遠くの席に移ってしまったし、私にはくるみ以外仲のいい子がいなかった。一人で弁当を食べる私に対してくるみは坂本くん含め大勢と仲良く食べていた。彼女は本当にあんな子だっただろうか。いつ、変わってしまったのだろうか。そんなことを考えている彼女が捨てた世界の住人の私は、一人で生きていくのだろうかと決め込んでいる。本当はもっと上手に生きたいのに。


 夏休みになった。私の夏は誰とも遊ぶ予定など無くて、塾で忙しい日々を過ごしている。むしろ、そうしていた方が楽だった。何も考えずに済むから。

 

 塾の帰り、夜も八時を過ぎた頃。帰り道の公園を通り過ぎようとした時、ベンチに一組の男女が座って、向かい合って、キスをしようとしていたことに気がついた。この時間帯にこの一帯を歩いていればよくある光景だった。でも、恐ろしい予感が頭を巡ったので、あの男女を凝視した。すると、予感は正しかった。私にとってはただの男女ではなかった。くるみと坂本くんだった。気がつくと私は頭が真っ白になってその場を走り去っている。またしても、私は傷ついていた。

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