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準備

あけまして、おめでとうございます。更新が遅くなり、申し訳ございません。

更新が不安定になりますが、今年もよろしくお願いします。


「これは何の真似ですか?」


 扉をくぐり倉庫の中に入るなり、会長の他に五人ほどの男に囲まれてしまった。

 会長のさっきの様子からしてこの場所で間違い無いと思っていたけど、見誤ったか?


「すいませんが、少しの間我々の遊びに付き合っていただきたい」


 目つきを鋭くした会長が、よくわからないことを言いながら手を挙げて囲んんだ男達に支持を下す。

 遊びと言う言葉に一瞬首を傾げるが、その答えは男たちの行動によってすぐに判明した。まぁ大の男が女の子一人に囲うなんて状況は早々あるものじゃないし、あったとしても碌なものじゃない。

 会長の指示によって俺を囲んだ男達は、拳を構えて一斉に襲いかかってきた。取り敢えず、向かってくるものに対しては対処しなきゃいけないとして、俺も行動を開始する。


「わかりました」


 自分の小柄な体格を利用して囲いの脇を抜けて一人の男の背後を取ると、そのまま真横に蹴り飛ばして隣の一人を巻き込んで吹き飛ばす。それを見て急ブレーキをかけた男の一人にも脇腹に肘鉄を食らわせて行動不能に追い込む。

 これで残りは会長を含めてあと三人。いきなり半数が消えたけどどうするつもりなんだ?


「まだやりますか?」


 吹き飛ばした男たちを傍目に見ながら会長に問いただす。この状況を見て勝ち目は到底ないと言うことがわかってもらえたと思うから、素直に引いて貰えるとありがたいんだけどな。

 そもそもこの人たちも動きは本気だけど、武器を持っていなかったり殺意が感じられないところを見ると、何かしらの事情があると見て間違いない。


「そうですね。もう少し粘れると思っていたのですが……」


 そう言うと、初めと同じように手を上げる。すると、男達が会長の後ろに並ぶと同時に一斉に頭を下げてきた。


「どうも私達の無礼をお許しください。私達は、エンガイア王国の冒険者ギルドの暗部です。諜報活動を主軸にし、王国から依頼されたり、ギルドが独自に動いていたりして情報を売っていたりします」


「なるほど、途中で試されていると言うのは何となくですが、わかっていました」


 会長が言うには、先触れで既に帝都脱出の話は届いていたんだけど、どうも女の子二人と言うのが納得がいかなかったらしい。


「そのうちの一人がここへやって来て、しかもそれがハルトナ襲撃事件の立役者と言うじゃないですか。ならば是非その実力の欠片でも感じてみたいと思いましてね」


「それで如何でしたか?」


「もう少しやって見たかったのですが、お互いに派手なことは避けなければいけない身ですしね。これ以上はやめていた方が無難でしょう」


 脳筋な発想だけれど、ある程度は理性的な所もあるってとこか。これで納得してもらえれば運の字か。

 そして、ここからは脱出するに当たっての段取りに入るわけだけど、初めに聞きたい事がある。


「先に聞きたい事があるのですが、私以外の女の子と言うのは誰なんでしょうか?」


「あぁ『ナオ』と言う子ですね。ある程度なら動けると聞いているから、こちらの行動の障害になるとは考えていないですが。それも実際に会ってみるまではわかりませんが」


 そう言うことか、すっかり失念していた。

 ナオの場合、実際にトバスに顔を見られている訳だし、下手をすれば手配に掛けられている恐れもある。だから店長はナオに表の接客じゃなくて、倉庫の片付けをさせたのか。

 しかも、こう言うところに繋がりを持っている辺り、あの人も堅気じゃなさそうだ。

 これは借りを作っちゃったかな。


「私も実際見ましたが、大体ランク『C』か『D』の冒険者辺りですね。その中でも動きはかなり良い方です」


「そうですか、情報ありがとうございます。ではそれを踏まえてでの計画をお話ししましょう。初めに、帝都からの脱出と言いましたが、実際には帝国からの脱出となります」






 脱出計画の打ち合わせが終わり、店への帰路の途中、俺の脳裏に色々な疑問が浮かぶ。

 マルニカもこの帝都もだけど、薬の噂はある。けれど、逆に言えばそれだけだ。薬の出所が帝城からと言う事が確定したのは大きな成果だ。けど、元々メルの邸宅の地下でトバスに殺された奴が帝国軍人と名乗っていたから薄々感じていた事だ。

 何が言いたいのかと言えば、帝国直接関与している割にはこの薬を使って戦争だとかそう言う話を微塵も聞かないって事だ。

 人体実験までして開発しているのに、それを使って王国へ攻め入ろうと言う噂も聞かないんだよな。

 いや、俺が聞かないだけで実は流れているかも知れないし、王国じゃなくて、別に狙っている国があるのかも知れない。

 俺はまだ、周辺諸国の経済や軍事事情とかは詳しくない。ひょっとしたらそっち方面への足掛かりで、試験の為だけにハルトナにちょっかいを出したのかもしれない。

 そもそもこの指名依頼も色々と不確定要素が多すぎる。何を考えても俺の推測の域を出ない。

 それでも明日はナオと一緒にマニルカへ向かって、その後ベルム達と合流してダームまで戻ろう。


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