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ここで会ったが……

更新が遅くなって申し訳ありません!

ちょっと本業の方が忙しく、手が止まったままになりました。

それでもと言う方は気長に待ってもらえると嬉しいです。

 ナオと名乗ったその人物は被っていたフード外し顔をあらわにすると、その姿は正に帝都内を案内してくれた本人だった。


「ほら飲んで、じゃないと良くならないよ。がんばって治してこんな所から逃げよう」


 そう言って鞄からポーションを何本も取り出し、ナオの父親だと言う魔物の口に注ぎ込んでは早く治れと励ましている。

 魔物になった人間にポーションが効くのか、そもそも負傷でもない状態で飲ませて意味があるのか。そんな疑問を他所に飲ませるだけで無く体にも浴びせ始め、何かに取り憑かれたように独り言を繰り返しながら父親を治療している。


「ナ……オ………ゴ……ロ……ジ……デ」


「そんなこと言わないで。絶対に私が治してあげるから」


 この必死さは間違いなく親子なんだろうと俺の中で確信させる。一目見た時に俺の中では助からないと安易に諦め、ナオの父親の願い通りに殺そうとした。諦めるなと一言も言わなかった。

 けれど、これは本当に親子だからなのか。いや、目の前の光景は間違いなくそれなんだろうけど、もしこれがハルトナの皆だったら俺は治そうと必死になれたのか。それとも簡単に諦めたのか。

 俺は安易に楽しさだけを求めて、自分の都合の良い方にばかり向いているだけじゃないのか。

 そんな嫌な感情と疑問が自分の中に沸き始めた頃、不意にコツコツと足音を隠しもせずに誰かが降りてきた。


「おやおや……最近誰かが出入りしていると思いましたが、こんな可愛らしいお嬢さんでしたか」


 ナオも不意を突かれたのか驚いた顔をしているけど、声の主の顔を見た瞬間に険しい表情に変わった。

 いや、俺もこの声には聞き覚えがある。


「トバス、アンタは……」


 そうだ、トバスだ。

 アレンドリア家の執事として仕えていたが、裏でメルの父親を操りそして二年前メルを刺した本人だ。

 帝国の人間とまではわかっていたけど、実際どんなポジションにいる奴かまではわからなかったが、ここにいると言う事はそれなりの地位なんだろう。


「おや、私の事をご存知ですか、それは光栄です。しかし申し訳ありませんが、その実験体はまだ利用価値がありましてね。見なかった事にいたしますので、このままお帰り願いますか?」


「ふざけた事を言わないで! アンタを殺してこの事を国中に広めてやるんだから!」


 父親を実験体呼ばわりされて激昂するナオが鞄に隠し持っていたナイフを取り出して斬りかかる。

 腕に覚えがあるのか、素早い動きとフェイントを混ぜながらトバスの死角を突いていくが、それでも簡単に避けられてしまい反撃を貰ってしまった。


「ぐっ……」


「反抗の意思ありですか。しょうがありませんね、ならばそのお父さんの隣に一緒に並んで貰いましょうか。貴女はイキが良さそうですし、さぞかし良い実験体になってくれましょう」


 さて色々とまずい事になった。

 まずいのは目の前の状況で明らかなんだけど、これを助けず見捨てて逃げたら実力差からしてナオが捕まるのは間違いない。と言うか、帝都を案内してもらい仲良くなった人を見捨てるのはさすがにどうだろう。

 かと言って、このまま助けに出ればいくらフードを被っていようとトバスに俺だとバレてしまう。

 そして何より、出入り口がトバスの背後にある一箇所だけだと言う事だ。

 要するにここから逃げるにはあの扉から出なければいけないと言うことで、どの道二人の前に出なければいけないと言うことだ。

 そして最後に一番まずいのは見つかった以上、俺が王国の差金で動いていると思われてしまう事だ。帝国からしてみたら王国だろうがそれを受けた冒険者ギルドだろうが関係のない事だろう。

 けれど、運はまだ俺を見放してなかった。


「冗談じゃないね、そう簡単に捕まるわけないでしょ!」


 そう叫ぶと、ナオは鞄から紙の束を取り出してトバスに投げつける。

 その瞬間、紙の束は光って二人の間で煙が充満し始めた。

 チャンスだ、本当ならこの見えない状況を利用してトバスを殺してしまいたい所だけど、相手の行動の予測をできない以上、先ずは自分の身の安全とナオを保護してこの場から脱出することだ。


「む、やりますね。ですが、出入り口は私の背後だけです」


 そして煙が充満し始める瞬間、ナオの取った行動はトバスに向かって刃を向ける事だった。

 煙で視界を遮って自分とトバスの実力差を埋めて一撃を与えようと考えたんだろうけど、それは悪手だ。

 そう思った瞬間、俺も煙に紛れて飛び出し、トバスに向けてスローイングナイフを投げた。

 当てようとは思っていない。トバスに反撃をさせず、避けさせる為だ。


「むむ、他にもどなたか紛れていたようですね。気配を感づかさせないとは見事です」


 俺の飛ばしたナイフに気づき大きく避けて感心を見せるが、そんなのは無視だ。俺もこの状況を利用して行動を起こす。

 突然の事に驚き、状況の把握が出来ず止まっているナオのもとへ走る。そして、その手を強引に引っ張って扉を出て施設から脱出した。

 トバスの他に敵がいれば強引にでも倒していこうと考えていたけど、運がいい事にそのまま外に出れたようだ。

 けど、ここはまだ城壁の内側で敵のテリトリー内だ。


「痛いからそろそろ離してくれないか?」


 施設から離れて来た方向を警戒していると、後ろから声がかかる。どうやらここまで手を引いているうちに強く握りすぎていたようだ。


「あ、ごめんなさい」


「いや、いいよ。私を助けてくれたんでしょ。で、瑞樹はこんな所で何してるの?」


「……ナンノコトデショウ? ミズキナンテヒトシリマセンヨ?」


 ここはしらを切るしか……ってコラ!


「昼間ずっと喋ってた人の声を忘れるわけないでしょ」


 俺のフードを降ろしながら話しかけるナオの顔は暗がりでもわかるくらい笑顔だった。

 その笑顔が意外な所で知り合い出会った安心感か、それとも自分の危機を助けてくれた感謝から来るものなのかはわからない。

 けれど、この状況でその笑顔は、一人でこんなところまで来る行動力が示す通り、ものすごいメンタルが強いんだろう。

 ひとまず目の前の危機は去ったけど、問題はまだまだだな。

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