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vs雀の涙

短いですがよろしくお願いします。

「ガリュウ!」


「おう!」


 ベリットの呼びかけだけでガリュウが盾を構えて前に出る。そしてそのガリュウの影からユミルが矢を放ってきた。

 牽制のために放った矢なんだろうけれど、俺に向かって射るのを戸惑っているのか、全く覇気を感じられない。

 故に避けるのも簡単だ。そしてその回避をきっかけに俺も行動を開始する。

 ユミルに照準を固定させない様にフェイントを混ぜてガリュウに迫る。そしてそのままガリュウの盾の影に隠れて脇をするりと抜けると、ベリットが目の前に現れ上段から剣を振り下ろす。

 さすがはパーティーのリーダーであり実力者。絶妙なタイミングでの攻撃に思わず感心する。

 けど、それは他の敵に対してであって、俺じゃないって事だ。ガリュウの脇をすり抜ける際の十分な腰溜めのおかげでベリットの振り下ろしに対して斬り上げの一閃を放つ。


「ぐぁぁぁっぁぁぁ!!!」


「ベリットぉぉぉぉ!!」


 ベリットとガリュウの叫びが交差する。

 右腕が斬り飛ばされて剣を落としたベリットに素早くガリュウがカバーに入り、ユミルが近づけさせまいと矢を乱射させる。

 それをバックステップで後退する。まずは一人無力化。

 自画自賛するわけじゃないけど、この戦力差でも俺なら十分対応できるとわかっている。

 けどそこは常套手段で主戦力を削っておきたい。

 そしてその次は……


「ベリット! 大丈夫、これなら回復ですぐにくっつける事ができるよ」


「そう来ると思ったよ、マルトさん」


 ベリットが後ろに引いてガリュウが前に出る。その隙にマルトが回復に来るのは当然だ。

 後退した俺を追いかける様に迫るガリュウだけど、この状況だと前に出過ぎだ。ベリットの回復を待つべきだ。

 その前に出た迂闊さの隙を突く様に、後退した勢いの反動で目の前を追いかけようとするベリットの盾を足場にして飛び越えた。

 そして上空と言う相手の位置関係が丸わかりの構図から、太腿に装備しているスローイングダガーを、まずガリュウに一本、その次にマルトに一本放つ。


「うわぁぁっぁ……」


 フルプレートのガリュウに対しては牽制にしか使えないけど、回復魔法を使おうとしているマルトに至っては無防備な為にそのまま左腕に刺さり、杖を落としてしまって魔法が中断される。

 これで二人目も無力化成功


「さて、大事な攻撃と回復要員が倒れたよ? どうするの?」


「ぐっ……」


「み、瑞樹……何で……? どうして……?」


 その間、アレン達三人は完全に俺たちの戦いに呆然としてしまっていた。

 ユミルとガリュウが歯噛みしながら俺を睨む。『雀の涙』の四人も戦意こそあるが、俺と初めて剣を交えて実力差を実感した様だ。


「さっきも言ったけど、ミューゼルさんを殺しに来たんだって……依頼だよ。で、これ以上の戦闘は無意味だと思うけど? じゃないと次は死者が出ることになるけど……」


 わざとぶっきら棒に言い放つと遂に意を決したのか、アレンが剣を抜き俺の方に剣を向けて来た。


「モールさんとカナンさんは荷馬車の中でミューと一緒に避難していてください。マリン、ケニー構えろ、こいつは敵だ……俺たちの敵だ。ベリットさん達を切り、ミューゼルまで殺そうとする敵だ。俺はハルトナまで連れて行くと決めたんだ。だからここは……意地でも押し通す!」


 いい気合いだ。そして、護衛対象の避難も忘れないリーダーシップも見せてくれる。

 エンジンのかかりが遅過ぎる気もするけど、身内が敵だったと言う事を加味してもその決断は悪くない。


「そうだな、今の瑞樹は敵だ。マリン、マルトさんとベリットさんの回復を頼む」


「うん……わかった。瑞樹、事情はしっかり聞かせてもらうからね……」


 ケニーとマリンもようやく動き出した。

 俺もこの二人が相手に加わると言う楽しみで距離を取り、動きを観察する。

 まだ健在なガリュウとユミルを主軸としてアレンとケニーが前に出てベリットの穴を埋める手堅い戦法だ。


「二人がベリットさんの代わりを果たせると思うの?」


「む、難しいことくらいわかってるさ!」


「だが、これしかない……」


 そう、それしかない。思いつかないなら、止まらずに出来る事をするだけだ。

 さぁ第二ラウンドと行こうか。

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