表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/237

取り巻きのお願い

「本当にハルトナと似たような雰囲気なんだな……」


「こっちの方がまだ雰囲気がマシだね」


「まぁあ向こうには二度と近寄らないけどな」


 次の日、俺達ハルトナ組四人とミューゼルを除く取り巻き二人は冒険者ギルドの『王都東部支部』に来ていた。

 これと言って何をするわけでも無いが、ソレイユの言ってたのを確認するためだ。別に疑っていたわけじゃ無い、実際に自分の肌で感じてみたいと思って向かったまでの事だ。

 因みにミューゼルは昨日のうちにギルドから屋敷に通達されて、自宅謹慎と言う名の軟禁状態らしい。これは、取り巻き二人が門前払いされた事で知った話だ。


「で、アレン達はこれからどうするの?」


 恐らく反対側の『王都西部支部』も同じ感じだろうと言う事で、こっちの食堂で軽食を取りながら今後の予定を相談する。


「そうだな……次の出発まであと二日って所だから……」


「あの……アレン様、お願いがあります!」


 そう言って来たのは取り巻き二人のうちの一人、茶髪のベスティだ。

 もう一人の方、コリンもアレンの方を一心に見つめて何かを思い詰めているような感じだ。恐らくアレンに対するお願いと言うのは、二人で決めたのだろう。


「アレン様の言う出発と言うのは、ハルトナ行きの乗合馬車の事で間違い無いですか?」


「あ、あぁそうだな」


「どうか、その馬車でミュー様も一緒に連れて行って下さいませんでしょうか……」


 うわぁ、随分と思い切った発言だ。この二人にとってはミューゼルはそれ程大事な人なんだろう。


「二人に聞くけど、連れ出す理由は何?」


 貴族を連れて行くにも理由は必要だ。じゃ無いとただの人攫いだし、俺たちだけじゃ無く頼んだ二人にも嫌疑がかかる。


「それは……ミュー様の願望と、あのお屋敷の環境にあります」


 …………まーた面倒なことになって来たな。

 しかもこれって俺たちがどうのって話より、ミューゼル自身の問題じゃ無いかな?

 二人の話だと、ミューゼルは昨日の模擬戦で、アレンに一目惚れしたそうだ。この二年で一気にランク『C』まで登り詰めた新進気鋭で売り出し中のミューゼルがたまたま寄っただけの、しかも自分たちが田舎者と揶揄するハルトナのランク『D』冒険者に負けた。

 これを聞きつけて、目の当たりにしたギルドマスターのダンは自尊心にを傷つけられたと言うわけだ。

 あぁそれでミューゼルにあの言葉を向けたのか……

 ここからは俺たちも知らなかったことだけど、王都の水面下ではギルマスが双子だと言うことは有名らしく、ハルトナのデンの方が優秀ってもっぱらの噂らしい。

 まぁ確かに気の回し方とかも上手いところはあると思う。エロジジィだけどな!

 で、そんな目の上のタンコブの弟の所の冒険者にやられる様なミューゼルは要らないと言うことになったわけか。

 それならば、ミューゼルの実家のオルネイト家が抗議すれば良いと思うけど、ダン自身がもっと上の貴族と繋がっていて、両者とも貴族派だから逆らえないと言うことで詰んだわけだ。


「それなら尚更私らじゃ無くて、まずミューゼルの問題じゃ無いかな?」


 まずはミューゼルがどうしたいか、と言う事だ。仮にこの二人の望みを聞き入れようとも、本人がどうしたいかをはっきりしない限り行動のしようがない。


「それはそうですが、このままではあまりにも不便です……」


 取り巻きの二人が意気消沈していると、アレンやマリン、ケニーが顔を見合わせて頷いた。


「なら、これからミューゼルの所へ行って聞けばいいってことだろ?」


 俺が突き放すような事を言う反面、アレンが建設的な事を言う。確かにそうだ、一度聞けばわかる事だ。けど、幾つか問題がある。


「それで? 聞いてミューゼルが一緒に行きたいと言ったら?」


「勿論、連れて行くよ!」


「どうやって?」


「屋敷からこっそり連れ出すしかないな……」


「こっそりってどうやって? そして、王都からどうやって連れ出すの?」


「俺らと一緒に乗合馬車で……」


「受付はまだやってるの?」


「わからん……」


 何もかもが無計画だ。

 そりゃ今頼まれた事だからしょうがないとしても、連れ出すまでに余りにも時間が短い。


「それと、昨日言われた事だからアレンはわかっているけど、私は指名依頼中だから表立った行動は無理だからね?」


 ギルド本部からの指名依頼だから、寧ろダンの側に付いていると言っても良いくらいだ。

 そして昨日、ソレイユからも言われた事が、ここからは俺はあまり派手に動かない方が言って事だ。

 ダンの側に付いているけど、ダン自身も俺はハルトナのデンの側にいると言う認識だ。

 だから派手に動くと、周りに余計な情報が漏れかねないと言う事だ。


「どうしましょう……」


 俺以外の五人が一斉に俯いてしまった。少し虐めすぎたかな……?


「草案で賭けになるし、私は裏方しか出来ないけど乗る?」


『乗る(ります)!』


 全員がそう答えると、場所を移して計画をより詰めた話をした。

 実行は明日、一発勝負だ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ