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……様?

「ミューゼル・フォン・オルネイトですわ…………」


 俺達四人は、ギルドから少し離れたカフェテリアでミュー達とテーブルを挟んでそれぞれ自己紹介をしている。

 ミュー達と言うのは、本人の他にギルマスの面会の前に見た両脇にいた二人だ。

 因みにベスティとコリンという名前らしい。

 あの一件でギルマスが出て行った後、何とそれに続く様に周りで騒いでいた連中も出て行ってしまった。

 しかし、みんな一律に憐むような眼差しだったのは印象に強かった。


「改めて、アレンだ」


「ケニーだ」


「マリンだよ、宜しくね」


「瑞樹よ、三人ともちょっと前に会ったわね」


「あ、あのアレン様のメンバーとは知らずにご無礼を働き……申し訳ございませんでした……」


「「申し訳ございませんでした……」」


 メンバー……いや、一応俺がリーダーなんだけど、話をややこしくするつもりは無いからここは流しておく。

 本人も相当凹んでいるし、一応の謝罪は貰った。それ以上にもっと気になることがあるからそっちを優先する。


「オルネイト様、いくつか聞きたいことがあります。わかる範囲で宜しいので答えてくれませんでしょうか?」


「ミューゼルで結構ですわ。あと敬語も結構ですわ」


「わかったミューゼル、瑞樹の質問に答えてくれると嬉しい」


「アレン様は是非ともミューと愛称で呼んでくださいまし」


「お、おう……」


 ……アレンとの会話になると途端に元気になるなこいつ…………何なんだ?


「で、では、ミューゼル。まず前提として確認したい事だけど、冒険者ギルドは基本的に独立組織よね?」


「そうですわね」


「そして国と言えど顧客の一人なのよね?」


「間違い無いですわね」


 ここまではハルトナでの認識が王都でも同じ事だと確認できた。問題はこの先だ。


「ここからが本題なんだけど、さっきのギルマスの発言に違和感が、いや組織的に矛盾があるんだけど」


「矛盾ですか? 具体的に言って下さいませ」


「何でギルドマスターである彼が、王国貴族である貴方の家に意見をして、ギルドから追い出そうとする事ができるの?」


 しかも、たかだか模擬戦をやっただけでだ。

 あれはどう見ても国と癒着しているとしか見えないし、それを隠そうともしない。

 それどころか、冒険者達もその事に全く違和感を感じていないのが怖い。


「えっと……そう言うものとしか……」


「「……?」」


 そうか、他の冒険者同様この三人も俺の違和感を違和感だと感じていないから、質問の意図が伝わらないのか。

 これはもっと噛み砕いて説明しなきゃいけないのか……?


「途中からだが、話は聞かせてもらった。しかし、その先を説明するのにこの場所は不適切だな」


 俺がどうしたものかと悩んでいると、不意に背中から声がかかる。しかも割と最近聞いた声だ。


「あ、えっと……ソレイユ様でしたね。午前中はお世話になりました」


 振り返ると、午前中に門でお世話になったソレイユだ。しかし、その時に見た煌びやかな鎧ではなく、どちらかと言えば庶民に溶け込むようなラフな格好になっている。ただし、剣は携えているが。


「いや、気にしなくて良い。そしてミューゼル達も緊張せずとも良いぞ」


 そう言われ、ミューゼルの方に注目すると、ミューゼルと取り巻きの二人は、さっきの背中を丸めたような落ち込んだ姿とは真逆の背筋を伸ばし手は膝の上に乗せ、微動だにしなくなっていた。


「は、はい!」


『?』


「ミューゼルは何で緊張しているの?」


「瑞樹さん達ハルトナの方々はわからないでしょうけど、この方はソレイユ・ホールゲン・マイバッハと言いまして、公爵家であらせられながら、第一皇女の近衛騎士隊長なのです」


 近衛騎士隊長とはモールから聞いていたけど、まさか公爵家だったとは。と言うかそんな身分の人がなぜ近衛を……?


「瑞樹はそんな凄い人と知り合いなのか?」


 そうか、アレン達は乗合馬車の中だったから一連の出来事は知らないのか。アレン達に事の経緯を簡単に話すと、三人はお礼を言った。


「いや、寧ろ王都の嫌な部分を見せてしまって申し訳ない気分だったんだ。どうだろう、日も傾いてきた事だし皆でどこか夕食に行かないかい? もちろん私の奢りだ。それに、さっきの話の続きもしたいだろう?」


 そっちが本命かな。

 どうやらミューゼルよりも深いところを知っていそうな感じだ。

 この格好いいお姉さんも何か言いたそうって感じだし、乗ってやろうじゃ無いか。


「あ、アレン、私とケニーはこのまま宿屋に戻るね!」


「あぁ、リーダー代行としてちゃんと話を聞いておいてくれよ」


 マリンとケニーがアレンに丸投げしてそそくさと席を立ってしまった。

 色気より食い気のマリンが奢りと言う言葉に反応もせずに行ってしまうとは。


「ミュー様、私達もこの後用事があるので先に失礼しますわね」


「また明日お伺いしますわね」


「あんた達…………」


 そして、取り巻きの二人も同様に退散してしまった。

 どうやら退散した四人は、面倒ごとの匂いを嗅ぎ分ける能力は敏感なようだった……

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