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どこだ?

 正直に言って、王都の広さを舐めていた。

 精々ハルトナの数倍程度だと思っていたけど、全くもって桁違いだ。

 最後の宿場町を出て、そこから続く穀倉地帯から遠くに見える王都ガイアスに馬車を向かわせる事半日……そう半日だ。半日経ってようやく城壁の門に辿り着いた。

 王都デカすぎだろ! 左右に伸びる城壁を見渡せば、遥か向こうまで続いている。そして見上げれば、ハルトナの倍はあろうかと言う城壁の高さに、何から城を守ろうとしているのか、疑問に思う。

 昔の戦争の名残なのか、はたまた俺の知らない外敵でもいるのか。出発前のユミル達の情報や数日前のパーティーリーダーの忠告、そしてこれだけの城壁。入る前から王都の内情が見え隠れしている。


「さて、後は入門の順番待ちだが、これはそんなに待たずに入れるだろう。今回は指名依頼を受けた瑞樹が連れ立っているからな。ギルマスからの書状があれば、そこの行列に並ばずにすんなり入れる筈だ」


 そう言って指を刺す方は……なる程、これはもう少しかかりそうな位の列だ。

 それに対して俺達の向かっている方は並びが少数で、多少の審査ですぐに入れそうだ。


「お疲れ様です、モール商会の会長のモールです。今回はハルトナのギルドマスターからこちらで審査する様に言われましたので」


 モールは門に立つ衛兵に慣れた手つきで自分の身分証と今回の依頼書、そしてギルマスからの書状を見せた。

 衛兵もこう言うことは度々あるのか、一つずつ確認しギルマスの書状に目を通すと、キョロキョロと辺りを見回してから俺に視線を止める。


「この書状にある瑞樹とは貴様のことか?」


「はい、私が瑞樹です」


「こんな小さな少女が……? 十七歳だと聞いているが、詐称していないか? カードを見せてみろ」


 上から目線のぞんざいな言い方に多少ムッとしたけど、ここは大人(百数十歳)の対応に徹する事にする。


「えぇ、構いませんよ。どうぞご覧になって下さい」


 そう言ってギルドカードを渡して確認している間にモールに近づいて話しかける。


「モールさん、王都の衛兵って皆こんな風なんですか? 何だか感じ悪いですね……」


「いえ、そう言うわけでは無いのですけど、一部の貴族が自分達を特権階級だと思い上がっている証拠ですね。そしてその派閥の長が結構幅を利かせていまして、その末端までもがあんな状態です」


 なる程……栄えているけど、王都の玄関口がこれじゃあ良い印象を持たれないんじゃ無いかな?

 あまり失礼な奴を見ると仕返しをしてやりたくなるけど、今は目を付けられるわけにはいかないから我慢だ。


「おい、確認がお終わったぞ。ハルトナのジジィのお気に入りか? 体で取り入ったのかは知らんが、こっちでも通用すると思うなよ?」


「ホルター、派閥の威光を傘に切るのは構わない。だがしかし、外から来た人や女性に対してその様な態度を取るのは、国王陛下の名にも傷が付くと思え。城門を守り、外の人達を迎える衛兵とは王都の顔だ。その態度で王都の第一印象が決まると何度も言ったはずだが? それに……女性に対していつもその様な態度と言う事は、私の事もそう言う風に見ていると思ってもいいな?」


 本当、失礼な奴だな……嫌味の一つは言ってもいいかな。と思った矢先に、ホルターと呼ばれた衛兵の背後から声が掛かる。

 緑の髪を靡かせながら切れ長の目で睨むと、ホルターはしどろもどろになりながらも言い訳をする。


「そ、ソレイユ様!! こ、これはその……この者が詐称をしていないか疑った為に少々強気に出てしまいまして!」


 おいおい……俺は詐称などしていないし、疑われる行動もしていないぞ…………?


「私は一部始終を初めから見ていたが、この者達は怪しい行動など何もしていなかったぞ? 貴様はまさか、自分の行動を他人のせいにして正当化しようなどと思ってはいないだろうな?」


「そ、その様な事は一切考えておりません!」


「ならば、やる事は一つだろう? 貴方はモール商会の会長さんですね? それとハルトナの冒険者の皆さん。最後にそちらの可愛らしいお嬢さん…………王都ガイアスを守る者を代表してお詫び申し上げます」


「さ、先程の無礼な発言をお許し下さい……」


 そう言ってソレイユと呼ばれた女は今度は俺達の方を見ると、先程の表情とは全く別の優しくも、真面目な顔で謝罪する。その隣でホルターも同じ様に謝罪をしているが、申し訳程度に頭を下げたその表情は申し訳ないといった感じではなく、寧ろ屈辱で憤怒に満ちていた。

 身長差がある俺でようやく確認できる事だ。モール達だけじゃなく、頭を下げさせたソレイユさえ気付いていないかもしれない。


「いえ、ソレイユ様、謝らないでください。悪人や危険な物を持ち込まない為の検査です。発言の問題はあったとは言え、この方は真面目な勤務態度でした。瑞樹さんも許してあげてくれますか?」


 モールが俺に話しを振ると、思いっきり目で訴えてくる。

 わかったよ、今は拗らせるつもりはないよ。


「わかりました、モールさんがそう言うのであれば」


「そう言ってくれると助かる、次からは気をつける様に言っておくよ」


 ソレイユも俺らの返事に理解を示すと、そのまま王都の中に通してくれた。

 

「モールさん、あの方は?」


 俺は素直に思った疑問を口にする。衛兵とは明らかに違う鎧を見に纏い、ホルターと言う男を一蹴するだけの力もを持っている。

 そして俺より頭一つ分も高い身長。生まれて来たのが地球だったら間違いなく宝塚でトップスターに登れたんじゃないだろうか。


「あの方はソレイユ様と言って、この国の第一皇女様を警護する女性のみの近衛騎士隊の隊長様です。暇を見つけてはあの様に王都の中を自身で見て回っているそうです」


「そんなに凄い人だったのですか。と言いますか、あのホルターと言う衛兵がたまたま問題な人であって、皆がそうではないと言う事ですか……」


 全員が全員そんな人ばかりだったら王国が腐っていきそうだと思うけど、俺の考えもあながち間違いではなさそうだと、モールが付け加える。


「いえ、残念ながら王国の派閥にそう言う考えの人がいて、そう言う人達は自分達が特別な人間だと勘違いして、自分より下の人を見下しています。それが先程の事ですね……」


 ハルトナとは大きく違うな。

 ハルトナの領主のメルは民主派で民に愛されてこそと考えているから、たったの二年で安定した運営を行えている。

 まぁ大きくなればなるほどいろんな考えの人が増えるって事だな。王様も大変そうだ。


 そうやって話しているうちに分厚い城門を抜けると、眼前一杯に石畳に敷かれた城下町が広がる。圧倒的に広い大通りの先に霞んで見えるのは恐らく王城だろう。

 ぶっちゃけ用が無ければ行く事はないだろうけど、呼ばれても行きたくはないかな……。


「さて瑞樹さん、王都までの護衛はここまでです。ここまで無事に来られたのは依頼を受けて下さった冒険者の皆さんと、瑞樹さんのお陰です。ありがとうございました」


「いえ、私の方こそ、今回は色々と学ばせて貰いました。またご縁がありましたらよろしくお願いします」


 そして、互いに声を掛け合い、それぞれ分かれていくが、冒険者の皆と俺、そして乗合馬車の客としてついて来たアレンとマリン、ケニーもいる。


「私はこのまま冒険者ギルドに行くけど、アレン達は?」


「いや、俺たちは先に帰りの乗合馬車の日程を確認してから行くよ。だから乗合の発着所まで行ってくるよ」


「その後にギルド本部に向かうよ!」


「俺たちは別の戻りの依頼を受けてから宿屋でゆっくりするさ」


「わかりました。では皆さんまた……」


 アレン達は帰りの馬車の確保、冒険者の皆は出発までのんびりとするらしく、それぞれの目的のためにここで解散となった。

 ふむ、さすがは冒険者と言う自由業を愛する人達。

 王都に着いたらあっさり解散とはほんの少し呆気にとられたぞ。

 まぁいい、それなら俺も冒険者ギルドに行って書状を渡しに行こうかな。


 ………………ギルド本部ってどこだ?


 


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